表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/66

第35話 その迷いをアリスは断ち切る

夜。


終わらない遊び。


笑い声。


風。


同じ夜が、


続いている。


ウェンディは、


まだそこにいた。


動けないまま。


帰らなきゃ。


でも。


楽しい。


その瞬間。


空気が歪む。


影が、


足元から滲む。


裂ける。


二つに。


「……あ、れ」


声が重なる。


「遊びたい」


「帰らなきゃ」


身体が分かれる。


片側は笑う子供。


片側は沈む大人。


互いに引っ張る。


腕が、裂けそうに軋む。


「やだ」


「やだよ」


「決めたくない」


空間が揺れる。


子供たちが後ずさる。


ピーターパンの笑みが消える。


ラブがふわりと浮く。


「あれ?」


「選べなかったのかな?」


アリスが踏み出す。


「来る……チェシャ」


指が鳴る。


レイピアが落ちる。


細い刃。


静かに光る。


ラブが剣を出す。


「どっちでもいいんだよー?」


優しい声。


「帰る?」


「遊ぶ?」


少しだけ間。


「決めなくてもいいよ?」


その言葉に反応するように、


歪みが膨らむ。


「そう」


「決めなくていい」


「どっちもでいい」


歪みが増幅する。


両側が同時に動く。


地面が割れる。


影が伸びる。


触れた木が歪む。


空間が不安定になる。


アリスが踏み込む。


その瞬間。


歪みが動く。


子供の側が笑う。


「遊ぼうよ」


無数の手が伸びる。


引きずり込もうとする。


同時に、


大人の側が低く呟く。


「帰らなきゃ」


足元が重くなる。


地面が沈む。


動けない。


二つの力。


引く。


沈める。


矛盾した圧。


アリスが剣を振る。


一閃。


触れた腕が裂ける。


だが、


すぐに再生する。


「やだ」


「やだやだやだ」


声が増える。


重なる。


歪みが膨らむ。


ラブが言う。


「ほら、大丈夫だよ」


「どっちも間違ってないから」


さらに不安定になる。


空間が歪む。


崩れかける。


アリスが止まる。


一歩。


踏み込む。


「どっちも正しいから、選べない」


歪みが揺れる。


「だから壊れてる」


子供側が強くなる。


「遊びたい!」


だが。


「でも!」


大人側が叫ぶ。


「帰らなきゃ!」


ぶつかる。


軋む。


崩れない。


アリスが言い切る。


「どっちかを捨てなきゃ進めない」


空気が止まる。


歪みが震える。


アリスはさらに踏み込む。


「両方取ろうとしてるから歪んでる」


静かに。


はっきりと。


「それは間違い」


沈黙。


ラブが少しだけ目を細める。


アリスは続ける。


「ピーターの言うことを聞く必要はない」


一拍。


「楽しいから残る必要もない」


歪みが揺れる。


「帰りたいなら」


剣先を向ける。


「帰ればいい」


沈黙。


歪みの中で、


二つの声が重なる。


「……帰る」


その瞬間。


歪みが暴れる。


最後の抵抗。


両側が同時に引く。


裂ける。


崩れる。


それでも。


止まらない。


「帰る」


もう一度。


強く。


言い切る。


光。


歪みが砕ける。


崩壊。


静寂。


夜が戻る。


ウェンディが立っている。


一人で。


息をしている。


ちゃんと。


ラブがぽつりと呟く。


「そっかぁ」


「決めちゃったかぁ」


少しだけ笑う。


「もったいないのに」


アリスは剣を下ろす。


何も言わない。


ただ、


その場所を見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ