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第34話 その永遠をラブは肯定する

夜空を裂くように、風が流れていく。


星が近い。


手を伸ばせば掴めそうなほどに、近い。


ラブが声を上げる。


「すごーい!!」


くるりと空中で回る。


髪が広がる。


笑い声が夜に溶ける。


「ねえ見て!アリスちゃん!あれ島じゃない!?」


指差す先。


黒い海の中に浮かぶ影。


ネバーランド。


ピーターパンが前を飛ぶ。


振り返りながら笑う。


「もうすぐだよ!」


風が強くなる。


身体が引っ張られる。


そのまま、


落ちるように降りていく。


砂浜。


足が触れる。


柔らかい。


ラブはそのまま走り出す。


「やったー!!」


砂を蹴る。


笑う。


止まらない。


白うさぎが後ろで転がる。


「ひぃぃぃ!止まってぇぇ!」


チェシャ猫が空中で笑う。


「いいねぇ、いいねぇ」


その先。


森の中から、


声が響く。


笑い声。


叫び声。


足音。


ロストボーイズ。


木の間を駆け回る。


枝から飛び降りる。


剣を振る。


ぶつかる。


転ぶ。


「うわーやられたー!」


「今のずるい!」


「もう一回!」


誰も止まらない。


ラブがその輪に飛び込む。


「まぜてー!」


すぐに剣を渡される。


振る。


ぶつかる。


音が鳴る。


軽い。


それでも楽しい。


「なにこれ、めっちゃ楽しいんだけど!!」


笑いながら踏み込む。


押す。


押される。


そのまま転ぶ。


でも、


すぐに起き上がる。


誰も怒らない。


誰も痛がらない。


ただ、


笑っている。


ピーターパンが飛び込んでくる。


「こっちだ!」


そのまま飛び上がる。


追う。


また飛ぶ。


ラブも続く。


「待って待って!」


空を蹴る。


浮く。


笑う。


海の方から音がする。


砲声。


煙。


フック船長の声。


「捕まえろぉ!」


ロストボーイズが笑う。


「きたきた!」


「逃げろー!」


でも逃げない。


向かっていく。


剣がぶつかる。


銃声が鳴る。


でも誰も倒れない。


転んでも、


また立つ。


それが当たり前みたいに。


ラブは息を切らしながら笑う。


「最高じゃんここ!!」


そのまま両手を広げる。


「ずっと遊べるじゃん!」


アリスは少し離れた場所で立っている。


見ている。


静かに。


(……軽い)


(痛くない)


(終わらない)


(変わらない)


そのとき。


「いいじゃん」


隣。


ラブ。


いつの間にか戻ってきている。


「楽しいよ?」


笑っている。


アリスは少しだけ目を細める。


「……でも」


「でも、なに?」


すぐに被せる。


「楽しいならそれでいいでしょ」


軽い声。


一歩も踏み込まない。


「それ以上、必要?」


アリスは口を閉じる。


言葉が出ない。


視線を戻す。


子供たち。


まだ笑っている。


止まらない。


(……終わらない)


ピーターパンが近づく。


「ね!いいでしょ!」


「ここはさ、ずっと遊べるんだ!」


ラブがすぐに答える。


「最高!」


「帰る理由なくない?」


ピーターが笑う。


「でしょ?」


そのとき。


少し離れた場所。


ウェンディ。


立っている。


皆を見ている。


笑っている。


でも、


その足が動かない。


ラブが気づく。


「どうしたの?」


ウェンディが振り向く。


少しだけ迷って。


「……楽しいわ」


「とても」


ラブは嬉しそうに頷く。


「でしょー?」


ウェンディはまた周りを見る。


走る子供たち。


笑うピーター。


空。


星。


変わらない景色。


「でも……」


声が小さくなる。


「帰らなきゃ」


「お母様が……」


言葉が止まる。


ラブはすぐに言う。


「いいじゃん」


軽く。


変わらない調子で。


「今、楽しいんでしょ?」


ウェンディは黙る。


ラブは少しだけ首を傾げる。


「帰るのってさ」


「いつでもできるよ」


少しだけ間。


「今じゃなくてもいいし」


笑う。


「やりたくなったときでいいじゃん」


優しい。


でも、


決めさせない言い方。


ウェンディの目が揺れる。


また見る。


笑っている子供たち。


終わらない遊び。


終わらない夜。


変わらない時間。


「……」


何も言えない。


楽しい。


でも。


動けない。


選べない。


夜は続く。


終わらないまま。


ウェンディだけが、


その場に立ち尽くしていた。


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