第33話 その楽しさをラブは選ばせる
衣装部屋。
ラブ「白雪姫の物語以来だね!アリスちゃん」
ベッドに座るアリスのすぐ隣に、
どさっと腰掛ける。
アリスは少し驚いて、
それから微笑む。
「うん、あの時は本当にありがとう」
ラブは手をひらひら振る。
「いいっていいって」
すぐに顔を上げる。
「ねー早くお茶持ってきて」
白うさぎが跳ねる。
「は、はいっ!ただいま!」
慌てて紅茶を用意する。
カップを持って戻ってくる。
アリスが首を傾げる。
「うさぎ?」
ラブが笑う。
「あ、そっか。初めましてだよね」
そのとき。
「おやぁ?おやおやおやぁ?」
声。
ベッドの下。
にぃ、と笑う猫が現れる。
白うさぎ「ひぃ!猫!」
ラブの後ろに隠れる。
チェシャ猫は楽しそうに目を細める。
「なるほどだ」
「うさぎが選びそうな子だよ、ラブは」
にぃ、と笑う。
少しだけ間。
「選ばせるのが上手い」
アリスは立ち上がる。
「扉」
ラブが振り向く。
「あ、ほんとだ」
少しだけ考える。
「……そうだ」
アリスを見る。
「一緒に行かない?」
「えっ?」
ラブは当然のように言う。
「2人の方が楽しくない?」
アリスは少し迷う。
「それは……」
ラブは無理に引かない。
ただ、笑う。
「行きたくなったらでいいよ」
一拍。
手を差し出す。
「どうする?」
アリスは視線を落とす。
少しだけ考える。
「……」
その隙に、
ラブが軽く手を引く。
「レッツゴー!」
「ちょっ、ちょっと」
扉が開く。
光。
夜。
子供部屋。
静か。
月明かり。
カーテンが揺れる。
窓が、
ゆっくりと開く。
風。
影が差す。
少年。
ピーターパン。
軽やかに部屋へ降りる。
そのとき。
ベッドの上。
ラブとアリス。
パジャマ姿。
体が、
小さい。
幼くなっている。
ラブが起き上がる。
「……あれ?」
自分の手を見る。
「ちっちゃ!」
アリスも目を覚ます。
「……なにこれ」
髪に触れる。
違和感。
ピーターパンが笑う。
「やあ!」
無邪気な声。
「君たちも来る?」
窓の外を指さす。
夜空。
星。
「ネバーランド!」
楽しそうに言う。
ラブの目が輝く。
「なにそれ楽しそう!」
すぐに立ち上がる。
窓へ近づく。
アリスが言う。
「待って」
少しだけ低い声。
「行く理由がない」
「危ないかもしれないし」
言い切る前に、
ラブは振り返る。
「いいじゃん」
軽く。
押さない。
「楽しいかもよ?」
ピーターパンが笑う。
「そうそう!」
「楽しいよ!」
「飛べるし!」
ラブが言う。
「飛べるって」
アリスを見る。
「やる?」
アリスは少し黙る。
夜空を見る。
風。
星。
静か。
ラブは何も言わない。
ただ待つ。
手だけ、差し出したまま。
「ほら」
小さく。
「選んでいいよ」
一拍。
アリスは、
小さく息を吐く。
「……一回だけ」
少しだけ間。
「危なくなったら戻る」
ラブが笑う。
「うん、それでいい!」
ピーターパンが言う。
「じゃあ行こう!」
窓へ向かう。
飛ぶ。
ラブが続く。
軽やかに。
アリスは一瞬だけ止まる。
それから、
踏み出す。
夜空へ。
星が広がる。
落ちるように、
浮かぶように。
どこまでも続く空。
ラブが笑う。
「すごーい!」
白うさぎの悲鳴が後ろから聞こえる。
「ひぃぃぃぃ!!」
チェシャ猫の笑い声。
「いいねぇ」
少しだけ間。
「ちゃんと、自分で選んだ顔だ」
アリスは黙っている。
ただ、
前を見る。
ネバーランドへ。




