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第30話 その愛をアリスは突き放す

城。


食堂。


長いテーブル。


豪華な料理。


誰も手をつけていない。


冷めている。


アリスは立っている。


白と黒のメイド服。


静かに周囲を見る。


「……メイド服」


小さく呟く。


肩の上。


チェシャ猫が笑う。


「似合うね」


「お世辞でしょ」


「本当なのに」


「照れてるの?」


アリスはため息を吐く。


「いいから、行くよ」


一歩、踏み出す。


そのとき。


食器が割れる音。


「なぜ来ない!!」


怒号。


「なぜ晩餐に来ない!!」


野獣。


テーブルの端。


皿を叩き落とす。


「用意はしている!」


「毎晩だ!!」


「それなのに、なぜだ!!」


周囲。


使用人たち。


ティーカップが震える。


「旦那様、どうかお怒りをお鎮めください……!」


時計が続ける。


「ベル様も戸惑っておられるのです」


「無理にお呼びするのは……」


「無理だと!?」


野獣が吠える。


「私は命じている!!」


「ここに来いと!!」


テーブルを叩く。


料理が揺れる。


「何が気に入らない!!」


「何が足りない!!」


沈黙。


「……なぜだ」


低く。


「なぜ来ない」


その声は、


怒りだけじゃない。


わずかに、


滲んでいる。


そのとき。


「そんな態度だからでしょ」


声。


空気が止まる。


野獣が振り向く。


「なんだと……?」


アリスが立っている。


一歩、踏み込む。


「命令して」


「怒鳴って」


「来ない理由を考えもしない」


視線を逸らさない。


「そんなあなたの晩餐に」


「誰が来るの」


沈黙。


野獣の目が歪む。


「貴様……」


低く唸る。


アリスは続ける。


「あなたさ」


少しだけ間。


「“来てほしい”んでしょ」


野獣の動きが止まる。


ほんの一瞬。


「だったら」


「やり方、間違ってるよ」


空気が軋む。


「うるさい!!」


襲いかかる。


「チェシャ!」


「はいはい」


盾。


剣。


ガキンッ!!


衝撃。


競り合う。


「もう一度言ってみろ!!」


「何度でも言ってあげる!」


押し返す。


「理不尽に怒って」


「相手の気持ちも考えずに」


一歩。


「怖がらせて」


「従わせて」


「それで来てほしいって」


顔を上げる。


真っ直ぐに。


「それ、愛じゃないでしょ」


空気が止まる。


「許さん!!」


さらに力が込められる。


アリスは押し返す。


「それは」


一拍。


「ただの支配」


野獣の目が揺れる。


「違う……!」


初めて。


否定の形が変わる。


アリスは言う。


「違わない」


静かに。


でも強く。


「相手の気持ちを無視して」


「自分の望みだけ押し付けるのは」


少しだけ間。


「ただの暴力」


沈黙。


野獣の力が、


わずかに緩む。


アリスが言う。


「その怒り」


「誰に向けてるの?」


「私?」


「使用人?」


首を振る。


「違う」


一歩、近づく。


「拒まれたこと」


「受け入れられなかったこと」


「それが怖いだけでしょ」


野獣の呼吸が乱れる。


揺れる。


「……ベル」


小さく。


呟く。


その瞬間。


咆哮。


「うおおおおおお!!」


テーブルを薙ぎ倒す。


扉を破壊する。


そのまま飛び出す。


去っていく。


静寂。


料理が床に散らばっている。


剣と盾が消える。


アリスは立っている。


少しだけ、息を吐く。


チェシャ猫が笑う。


「追う?」


アリスはすぐに答える。


「うん」


一歩、踏み出す。


「まだ終わってないから」


歩き出す。


迷いはない。


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