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第28話 その意思をアリスは塗り潰す

森。


歪み。


一つになった影。


兄妹の形を保ったまま、


崩れている。


宝石を抱えている。


強く。


離さない。


「……僕らは」


声が重なる。


歪んだまま。


「間違ってない」


アリスは立っている。


少し離れた場所。


「チェシャ」


猫が笑う。


「はいはい」


ぽん、と。


アリスの手に、


何かが宿る。


「……?」


握る。


開く。


炎。


揺れている。


静かに。


アリスはそれを見る。


「なるほどね」


「大体分かった」


顔を上げる。


歪みを見る。


少しだけ間。


「……分かるよ」


歪みが揺れる。


「え」


ほんの一瞬、


動きが止まる。


アリスは続ける。


「欲しいよね」


「やっと手に入ったんだし」


「失いたくないよね」


声は静か。


否定していない。


歪みがわずかに揺らぐ。


「だったら──」


「いいでしょ」


掠れた声。


縋るように。


アリスは首を振る。


「でも」


一歩、踏み込む。


「それでも」


炎が強くなる。


「それは嫌い」


空気が止まる。


「正しいとかじゃない」


「納得できるかどうかでもない」


一歩。


「ただ」


炎を向ける。


「気持ち悪いから」


歪みが軋む。


「……そんな理由で」


「うん」


即答。


「そんな理由で」


炎が触れる。


焼く。


「生きるため?」


一歩。


「もう終わってる」


炎が包む。


「助かったあとで」


「それを持つ理由は?」


歪みの形が崩れる。


「……」


声が弱くなる。


「ないよね」


淡々と。


炎が食い込む。


「でも……」


「黙って」


遮る。


「分かってるから」


一拍。


「それでも否定する」


炎が強くなる。


宝石が溶ける。


光が濁る。


歪みが叫ぶ。


「違う……!」


「違う……!」


声が重なる。


アリスは動かない。


「違わない」


静かに。


でもさっきより低い。


炎を向ける。


「それは欲」


「それは奪うこと」


「それは」


少しだけ間。


「私が認めないもの」


歪みが止まる。


揺れる。


「……」


声が、消える。


炎が包む。


静かに。


崩れていく。


形がほどける。


二つに戻る。


ヘンゼル。


グレーテル。


膝をつく。


宝石は、ない。


手は空。


「……僕らは」


「間違ってたのか」


小さく。


グレーテルが俯く。


「……わからない」


アリスは言う。


少しだけ間を置いて。


「……間違ってるよ」


でも。


さっきより弱い。


沈黙。


ヘンゼルが目を閉じる。


「……そうか」


それ以上、言わない。


グレーテルも、


何も言わない。


ただ、


受け入れる。


静かに。


アリスはそれを見る。


「……終わり」


チェシャ猫が笑う。


「満足?」


アリスは答える。


「別に」


少しだけ間。


「これで気持ち悪くないだけ」


森が静まる。


光が差す。


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