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第26話 その感想をアリスは述べる

衣装部屋。


静か。


さっきまであったはずの喧騒が、


最初からなかったみたいに消えている。


アリスは椅子に座っている。


紅茶を一口、啜る。


「……」


少しだけ息を吐く。


肩の上で、


チェシャ猫が揺れる。


「そういえば」


軽く言う。


「アリスは何も聞かないんだね」


アリスはカップを傾けたまま、


目線だけ向ける。


「そう?」


「僕が何者か」


「ここがどこなのか」


少しだけ間。


「気にならない?」


アリスは小さく笑う。


苦笑い。


「最初に聞いたよ」


「猫ってこと」


「夢かどうかわからないこと」


カップを戻す。


「それで十分」


チェシャ猫がくすりと笑う。


「普通はさ」


「もっと問い詰めるでしょ」


アリスは肩をすくめる。


「答える気、なさそうだったから」


一拍。


チェシャ猫が目を細める。


「ご明察」


「でもそれじゃ、ちょっとつまんないよ」


アリスが目を細める。


「それって否定?」


チェシャ猫は首を傾げる。


「感想だよ」


沈黙。


アリスは少しだけ視線を落とす。


「……そっか」


小さく呟く。


それ以上は続けない。


そのとき。


部屋の奥に、


扉が現れる。


アリスはカップを置く。


立ち上がる。


軽く伸びをする。


「行こうか」


「うん」


扉に手をかける。


開く。


光。


森。


湿った空気。


木々のざわめき。


足音が二つ。


「どうしたらいいの……?」


小さな声。


少女。


グレーテル。


「帰る道がわからない」


その隣。


少年。


ヘンゼル。


「大丈夫さ」


しゃがむ。


地面に手を伸ばす。


白い石。


「きっと迎えに来る」


拾う。


一つ。


また一つ。


迷いなく。


「この石を辿れば」


月明かりを見上げる。


「ここまで戻ってこれるはずさ」


グレーテルが顔を上げる。


「まあ……」


小さく笑う。


「綺麗な石」


ヘンゼルも少しだけ笑う。


安心させるように。


「大丈夫」


短く言い切る。


兄妹は歩き出す。


森の奥へ。


一つずつ、


石を落としながら。


少し離れた場所。


アリスが立っている。


足元の石を、


一つ拾う。


「……兄妹愛、ね」


小さく呟く。


指の上で、


石を転がす。


「子供を捨てるなんて最低」


チェシャ猫が言う。


「飢饉のせいらしいよ」


アリスは即答する。


「子供優先でしょ普通」


間。


猫が笑う。


「難しい話?」


アリスは視線を外す。


「感想」


石を落とす。


ころり、と音がする。


アリスは歩き出す。


兄妹の後を追う。


森の奥へ。


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