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第24話 その幸福をアリスは疑う

扉を開く。


光。


城。


見覚えのある場所。


アリスは一歩、踏み出す。


「……ここ」


空気が違う。


静かじゃない。


人の気配。


声。


動き。


兵士が歩いている。


話している。


笑っている。


普通に。


何事もなかったみたいに。


「……え」


アリスは立ち止まる。


肩の上で、


チェシャ猫が小さく呟く。


「……おかしいね」


いつもより、笑っていない。


「眠ってるはずじゃなかったの?」


アリスが言う。


猫はゆっくり頷く。


「そのはずだね」


軽くはない声。


アリスは歩く。


速くなる。


廊下を抜ける。


扉を開ける。


広い部屋。


人がいる。


王。


オーロラ姫。


そして。


もう一人。


魔女。


アリスの足が止まる。


王が笑っている。


涙を拭きながら。


「よかった……本当に……」


オーロラは困ったように笑う。


「お父様、大げさです」


その隣。


魔女が立っている。


何も言わず、


ただ、そこにいる。


誰も怯えていない。


誰も距離を取らない。


アリスの眉が寄る。


少し離れた場所。


王子がいる。


立っているだけ。


誰とも目を合わせない。


誰にも呼ばれない。


そこにいるのに、


いないみたいに。


アリスは一瞬だけ視線を止める。


すぐに外す。


そして。


魔女へ向かう。


近づく。


止まる。


「……これでいいの?」


唐突に言う。


魔女が視線を向ける。


「いきなりなんだい」


低い声。


でも。


棘が弱い。


アリスは動かない。


「あなたの恨みは晴れてない」


はっきり言う。


少しの沈黙。


魔女は目を細める。


「……そうさね」


認める。


「晴れていない」


一拍。


それから。


小さく息を吐く。


「でも、思ったんだよ」


静かに続ける。


「腹を立てるほどのことじゃなかったんだと」


アリスの目が揺れる。


わずかに。


魔女は肩をすくめる。


「それに」


視線を横へ。


王と、姫。


人々。


笑っている。


「城は賑やかな方がいいだろう?」


沈黙。


アリスの顔から、


感情が消える。


「……気持ち悪い」


はっきり言う。


魔女は何も返さない。


ただ見ている。


アリスはそのまま背を向ける。


歩く。


速い。


廊下。


足音が響く。


「……何なの」


小さく呟く。


チェシャ猫が言う。


「……綺麗すぎるね」


アリスは止まる。


「誰も間違ってない」


猫が続ける。


「でも」


少しだけ間。


「何も残ってない」


アリスは黙る。


窓の外を見る。


人がいる。


笑っている。


普通に。


「……これでいいの?」


もう一度。


誰にも届かない声。


猫が言う。


「じゃあ、否定する?」


にたりと笑う。


沈黙。


アリスは目を閉じる。


そして。


開く。


「……そうだね」


小さく言う。


一歩、踏み出す。


「これは」


少しだけ間。


「綺麗すぎる」


視線が真っ直ぐになる。


「だから」


はっきりと。


「この世界を、否定する」


その声には、


もう迷いがなかった。


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