第23話 その幸福をラブは疑わない
衣装部屋。
静か。
ラブが戻ってくる。
そのまま、
ベッドに倒れ込むように腰掛ける。
「いやー」
伸びをする。
「みんな笑っててよかったね!」
満足そうに笑う。
白うさぎが少し遅れて入ってくる。
扉の前で止まる。
「……あの」
小さく声を出す。
ラブは天井を見たまま。
「んー?」
気の抜けた返事。
「良かったんでしょうか……?」
ラブは少しだけ首を傾げる。
「何が?」
白うさぎは言葉を選ぶ。
「その……」
「王子と姫の……」
少しだけ間。
「恋は、実らなかったです」
ラブは瞬きを一つ。
それから、ゆっくり起き上がる。
「……実る必要あったの?」
あっさり言う。
白うさぎが詰まる。
「え、いや……その……」
言葉が出てこない。
ラブは足をぶらぶらさせる。
「魔女を倒して」
指を一本立てる。
「呪いが解けて」
もう一本。
「はい、めでたしめでたし〜って?」
軽く笑う。
少しだけ間。
「それじゃ、かわいそーじゃん」
白うさぎが小さく頷く。
「ま、まあ……そうですけど……」
ラブは続ける。
「魔女もさ」
少しだけ間。
「呼ばれなかっただけで、悪者にされて」
「そのまま終わりって」
視線を落とす。
「それ、嫌じゃない?」
白うさぎが黙る。
「王様も」
「ずっと間違えたままで」
「謝る機会もなくて」
「終わり」
ラブは肩をすくめる。
「それも、もやっとするし」
「姫は」
少しだけ笑う。
「いきなりキスされて起きて」
「知らない人と結婚して」
「はい幸せ〜って」
首を傾げる。
「それ、本当に幸せ?」
白うさぎが言葉を失う。
ラブはふっと笑う。
「だったらさ」
少しだけ身を乗り出す。
「みんな納得して終わった方がよくない?」
白うさぎが小さく言う。
「でも……」
ラブが見る。
促すように。
「物語としては……」
白うさぎの声が弱い。
「少し、物足りないというか……」
ラブはきょとんとする。
「物足りない?」
白うさぎは続ける。
「運命とか……」
「奇跡とか……」
「そういうものが、なくて……」
ラブは少しだけ考える。
それから。
小さく、笑う。
「……いらなくない?」
静かに言う。
でも、迷いはない。
「だってさ」
「本気なら」
指で軽く円を描く。
「運命なんてなくても」
「好きになるでしょ?」
白うさぎが俯く。
「……うーん」
否定はできない。
でも。
納得もしきれない。
ラブは気にしない。
「あとからでもいいじゃん」
軽く言う。
「出会って」
「好きになって」
「それで幸せになるならさ」
少しだけ間。
「順番、違うだけでしょ?」
白うさぎは黙る。
考える。
でも。
答えは出ない。
ラブが笑う。
「変なこと言ってる?」
白うさぎは首を振る。
「……そうは思いませんが……」
少しだけ間。
「でも……」
言葉が続かない。
ラブはもう気にしていない。
くるりと手を回す。
カードが現れる。
ハートのクイーン。
指先で挟む。
少しだけ見つめる。
「なら、いーじゃん」
軽く言う。
「みんな幸せ!」
ラブは微笑む。
満足そうに。
白うさぎは、
その横顔を見ている。
少しだけ、
不安そうに。
その「幸せ」が、
本当に同じものなのか、
分からなくなりながら。




