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第21話 その呪いをラブはほどく

山。


空気が重い。


音がない。


風も止まっている。


白うさぎの足が震える。


「こ、ここです……」


ラブは止まらない。


「いいね」


そのまま進む。


奥。


小さな家。


黒ずんだ扉。


ラブは迷わず開ける。


中。


暗い。


匂いが重い。


一人。


女が座っている。


ゆっくり顔を上げる。


目が、光る。


「……誰だい」


低い声。


空気が沈む。


白うさぎが一歩下がる。


ラブは手を振る。


「こんにちは!」


明るい。


場に合わない。


魔女の目が細くなる。


「帰りな」


「関わると、ろくなことにならないよ」


ラブは首を傾げる。


「どうして?」


魔女は答えない。


ただ、見ている。


値踏みするように。


ラブが言う。


「お姫様、眠ってたよ」


一瞬。


空気が揺れる。


魔女の指がわずかに動く。


「……そうかい」


それだけ。


声は変わらない。


でも、


ほんの少しだけ低くなる。


ラブはそのまま聞く。


「どうして呪いかけたの?」


白うさぎが慌てる。


「ちょ、ちょっと……!」


魔女の視線が刺さる。


白うさぎが固まる。


魔女はしばらく黙る。


それから。


「……招かれなかった」


短い。


でも、はっきりしている。


ラブは頷く。


「そっか」


それだけ。


魔女の眉がわずかに動く。


「……それだけかい」


「うん」


ラブは笑う。


「嫌だったんでしょ?」


魔女の目が鋭くなる。


「王の祝いだ」


声が低い。


「国中を呼んでおいて」


「私だけ外した」


空気が重くなる。


白うさぎが震える。


「存在ごと、無かったことにされた」


静かに言う。


「だから、呪った」


ラブは頷く。


「うん」


肯定する。


魔女が一瞬だけ言葉を失う。


ラブが振り返る。


「連れてきて」


白うさぎが固まる。


「え?」


「王様」


軽い。


いつも通り。


「いるでしょ?」


白うさぎが慌てる。


「で、でも……!」


ラブは笑う。


「いいから」


空間が歪む。


白うさぎが何かを引きずる。


男。


王。


床に落ちる。


眠っている。


ラブがしゃがむ。


頬を叩く。


「起きて」


王の目が開く。


「……ここは……」


顔を上げる。


魔女を見る。


止まる。


顔色が変わる。


「……っ」


言葉が出ない。


体がわずかに震える。


ラブが言う。


「この人、呼ばなかったんだって?」


王は目を逸らす。


「……それは」


言葉が詰まる。


魔女が見ている。


逃がさない。


「言いな」


低い声。


王の肩が跳ねる。


「……恐れていた」


絞り出す。


「お前は災いを呼ぶと……」


「国に仇なす存在だと……」


魔女の目が細くなる。


「誰が言った」


「……噂だ」


王の声が弱い。


「証はない」


「だが……」


言葉が崩れる。


「……避けた」


沈黙。


重い。


ラブが言う。


「それ、ほんと?」


王は答えない。


答えられない。


ラブが魔女を見る。


「どうなの?」


魔女は目を伏せる。


一瞬。


それから。


「……一度もない」


静かに言う。


「そんなこと」


「してないよ」


王の手が震える。


「……」


視線が落ちる。


「……すまなかった」


小さい声。


魔女は動かない。


ただ見ている。


「謝って済む話じゃない」


低く言う。


でも、


さっきより少しだけ力がない。


ラブが言う。


「でも謝ったよ?」


軽い。


当たり前みたいに。


魔女が黙る。


ラブが続ける。


「どうする?」


「まだ怒る?」


魔女は目を閉じる。


少しだけ間。


「……どうでもいい」


小さく言う。


「もう終わったことだ」


ラブは頷く。


「そっか」


「じゃあさ」


ラブが続ける。


「呪い、どうする?」


魔女が顔を上げる。


「……どうする、とは?」


「解いてもいいし」


「そのままでもいいし」


軽い。


「どっちでもいいよ」


白うさぎが固まる。


王も動けない。


魔女だけが考える。


長くはない。


「……解くよ」


低く言う。


「もう、意味がない」


ラブが笑う。


「うん」


魔女が立ち上がる。


手を上げる。


空気が歪む。


糸がほどけるように、


呪いが崩れる。


静かに。


全部。


城。


眠っていた人々が、


ゆっくりと目を開ける。


ラブが振り返る。


「これで終わりだね」


白うさぎが戸惑う。


「え、でも……王子が……」


ラブは首を傾げる。


「来るんじゃない?」


軽く言う。


「来なかったら、それでもいいし」


少しだけ笑う。


「会えたら、ラッキーだね」


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