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第19話 その肯定をアリスは否定できない

衣装部屋。


静か。


ドレスが並んでいる。


アリスは立っている。


少しだけ、息を吐く。


「……さっきの」


言いかけて、止まる。


ラブがくるりと振り返る。


「なに?」


明るい声。


ここに似合わないくらい、軽い。


「…ううん、なんでもない」


少しだけ間。


「ただ…」


アリスは言葉に少し詰まる。


「…ありがとう」


ラブは気にしない。


聞こえてないのか、聞こえてるのか。


そのまま歩く。


ドレスの間をすり抜ける。


「ねえねえ」


振り返る。


「ここ、かわいいね」


「そうかな?」


アリスは短く返す。


ラブは笑う。


「うん」


「全部、似合いそう」


アリスは何も言わない。


でも、否定もしない。


肩の上。


チェシャ猫が揺れる。


「ずいぶん楽しそうだね」


ラブが猫を見る。


「だって楽しいよ?」


「変わってるね」


猫は目を細める。


「肯定するのって、疲れない?」


ラブは少しだけ考える。


「うーん」


首を傾げる。


「別に?」


あっさり。


「だってさ」


少しだけ間。


「嫌なもの、嫌っていいし」


「好きなもの、好きって言っていいし」


「それだけでよくない?」


猫が笑う。


「ずいぶん簡単に言うね」


「簡単だよ?」


ラブはすぐに返す。


「難しくする必要ある?」


アリスは黙って聞いている。


口は挟まない。


ただ、見ている。


猫が言う。


「全部うまくいくって思ってる?」


ラブは頷く。


「うん」


迷いがない。


「だって」


「そうなった方が楽しいじゃん」


猫が少しだけ黙る。


「…それ、現実でも?」


ラブは笑う。


「現実とか関係ないよ」


「ここでも、どこでも」


少しだけ間。


「楽しい方でいいでしょ?」


その言葉は、


迷いがなさすぎて、


少しだけ怖い。


アリスの指が、わずかに動く。


言葉は出ない。


「アリスはどう思う?」


ラブが聞く。


まっすぐ。


迷いなく。


アリスは少しだけ考える。


それから。


「……別に」


短く言う。


「否定するよ」


ラブは笑う。


「うん、それでいいと思う」


止めない。


否定しない。


そのまま受け取る。


当たり前みたいに。


アリスの目がわずかに揺れる。


でも、それ以上は何も言わない。


猫がくすりと笑う。


「優しいね」


「そうかな?」


ラブは首を傾げる。


「普通だよ?」


「普通、ね」


猫は目を細める。


少しの沈黙。


ラブが手を叩く。


「よし」


軽い音。


「次いこっか」


部屋の奥。


扉がひとつ。


ラブが近づく。


迷いなくドアノブに手をかける。


「じゃあね、アリス」


振り返る。


笑う。


「またね」


そのまま、


扉を開ける。


光。


ラブの姿が消える。


静かになる。


アリスはそのまま立っている。


扉を見る。


閉じた後も、


しばらく。


肩の上。


猫が揺れる。


「大丈夫かい?」


アリスが少しだけ笑う。


「心配してくれるんだ」


「そりゃあね」


猫は軽く言う。


アリスは視線を落とす。


手を見る。


握る。


開く。


「……大丈夫」


小さく息を吐く。


「うん、大丈夫」


少しだけ間。


「なんか、スッキリしたから」


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