表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/66

第17話 その否定をアリスは否定できない

暗い。


何もない。


足元も、感覚も、曖昧。


アリスは立っている。


「……ここ」


周りに、鏡。


いくつも。


大小、無数。


全部に、自分が映っている。


どこを見ても、


逃げ場がない。


「……なにこれ」


一つの鏡。


映ったアリスが、


口を開く。


「あなたの中」


別の鏡。


「本質」


別の鏡。


「真実」


声が重なる。


「心」


「あなたの歪み」


アリスは顔をしかめる。


「……違う」


鏡の中のアリスが笑う。


「違わないよ」


別の鏡。


「ずっとそうだった」


また別の鏡。


「見てきたでしょ」


アリスは首を振る。


「違う」


「私は──」


言葉が止まる。


鏡が一つ、


映す。


教室。


昼休み。


笑い声。


『アリスもそう思うよね?』


「……うん、いいよね」


自分の声。


アリスの目が揺れる。


別の鏡。


『可哀想』


『でも仕方ないよね』


『普通だし』


誰かの声。


それを聞いてる自分。


何も言わない。


また別の鏡。


(意味わかんない)


(くだらない)


(どうでもいい)


心の声。


口には出さない。


「……やめて」


鏡は止まらない。


映す。


繰り返す。


全部、


“言わなかった言葉”。


「空気を読む」


「合わせる」


「隠す」


声が重なる。


「でも」


一つの鏡。


アリスが映る。


真っ直ぐ見ている。


「中では否定してた」


「ずっと」


アリスは後ずさる。


「違う」


「それは普通」


「誰だってそう」


鏡の中のアリスが言う。


「じゃあなんで」


少しだけ間。


「こんなに嫌いなの?」


息が止まる。


「……」


言葉が出ない。


別の鏡。


「頑張っても報われなかった」


「だから?」


「報われてるやつが嫌い?」


別の鏡。


「親の言うこと聞いてた」


「だから?」


「好き勝手やってるやつが嫌い?」


別の鏡。


「空気読んでた」


「だから?」


「自分で選んでるやつが嫌い?」


アリスが首を振る。


「違う」


「私は」


「正しいこと言ってるだけ」


鏡の中のアリスが笑う。


「うん」


「知ってる」


少しだけ間。


「だから一番嫌いなんでしょ」


空気が止まる。


「……え」


「正しいこと言ってるのに」


「何も変わらない自分が」


「一番嫌いなんでしょ」


アリスの手が震える。


「違う」


声が弱い。


「私は──」


言葉が続かない。


鏡が一斉に歪む。


「否定してるんじゃない」


「してるよ」


「ずっと」


「他人を使って」


「自分を」


アリスが頭を押さえる。


「やめて」


「やめて」


鏡の中のアリスが近づく。


「でもさ」


「楽だよね」


「否定してればいいだけだから」


「選ばなくていい」


「傷つかなくていい」


「変わらなくていい」


アリスの呼吸が乱れる。


「違う」


「違う」


鏡のアリスが言う。


「じゃあなんで」


一歩、近づく。


「ここにいるの?」


足元が黒く滲む。


広がる。


「現実にも」


「この世界にも」


「合ってないって思ってるのに」


「どっちにも居場所ないのに」


「なのに」


少しだけ間。


「どっちも否定してるの?」


アリスの足が沈む。


逃げられない。


「私は……」


声が震える。


「私は……!」


言えない。


鏡が一斉に言う。


「空っぽ」


「何もない」


「選んでない」


「ただ否定してるだけ」


アリスが崩れる。


膝をつく。


「……やめて」


小さな声。


鏡の中のアリスが、しゃがむ。


目線を合わせる。


「ねえ」


優しい声。


「あなた」


少しだけ笑う。


「白雪姫のこと」


「否定できるの?」


沈黙。


答えられない。


「だってあの子は」


「選ばれてる」


「何もしなくても」


「でも」


「あなたは?」


言葉が刺さる。


「……」


何も言えない。


鏡が囁く。


「ねえアリス」


「あなた」


少しだけ間。


「選ばれたこと、ある?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ