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第16話 その正しさをアリスは疑わない

森。


開けた場所。


白雪姫が立っている。


その前に、


老婆。


手には、赤い林檎。


「これはね」


老婆が差し出す。


「ひと口齧ると、願いが叶う林檎なのさ」


白雪姫が笑う。


「まぁ、素敵」


手を伸ばす。


受け取る。


そのまま、


口元へ運ぶ。


「ありえない」


声が割って入る。


白雪姫の手が止まる。


振り向く。


「……あら、アリス」


老婆も目を向ける。


「なんじゃ?」


アリスはそのまま近づく。


「願いは叶わない」


静かに言う。


「何を言う!」


「それは毒林檎」


老婆の動きが止まる。


「食べたものは眠る」


「王子の口付けで目を覚ます」


老婆の目が見開かれる。


「貴様……!」


白雪姫は黙って聞いている。


アリスは視線を老婆に向ける。


「私はあなたを否定しない」


少しだけ間。


「美しくなろうとしてる」


「維持しようとしてる」


「それはちゃんとしてる」


老婆は何も言わない。


アリスは続ける。


「なのに選ばれない」


「それはおかしい」


空気が止まる。


白雪姫が首を傾げる。


「なんの話をしているの?」


アリスは白雪姫を見る。


「……あんたは美しくないって話」


白雪姫は少しだけ目を細める。


「ふぅん」


その反応は、あまりにも軽い。


まるで、


最初から分かっていたみたいに。


白雪姫が言う。


「あなたは思わないんだ」


「ええ」


アリスは即答する。


「間違ってるものは間違ってる」


「あなたは何もしてない」


「なのに選ばれる」


一歩、踏み込む。


「そんなのは──」


「違う違う」


言葉が止まる。


アリスの動きも止まる。


「え」


白雪姫は笑う。


「選ばれてるんじゃなくて」


少しだけ間。


「選ばせてるの」


空気が歪む。


アリスの眉が動く。


「……何言って」


白雪姫は林檎を老婆に戻す。


軽く手を叩く。


音が響く。


その瞬間。


白雪姫の隣に、


鏡が現れる。


何もない空間から、


当然みたいに。


老婆が息を呑む。


「な……なぜ鏡が」


白雪姫は気にしない。


「鏡よ鏡さん」


柔らかい声。


「この世で一番美しいのはだぁれ?」


鏡が光る。


「それは、白雪姫、あなたです」


白雪姫は頷く。


「うん」


「知ってる」


アリスが一歩下がる。


「……これは」


白雪姫は続ける。


「もう一ついい?」


鏡が揺れる。


「今ここで歪んでいるのはだぁれ?」


少しの間。


鏡が答える。


「青いワンピースの少女」


「アリスです」


白雪姫が笑う。


「そうなんだ」


その笑顔は、


さっきまでと何も変わらない。


なのに、


何かが決定的に違う。


アリスの呼吸が乱れる。


「そんな……」


足元を見る。


影が揺れる。


黒く、滲む。


広がる。


自分の影なのに、


自分のものじゃないみたいに。


「そんなわけない」


一歩下がる。


足が沈む。


闇が絡みつく。


逃げ場がない。


「違う」


声が揺れる。


「私は──」


言葉が切れる。


そのまま、


飲まれる。


暗闇。


音がない。


感覚がない。


ゆっくりと、


目を開ける。


「……ここ」


立っている。


周りに、鏡。


いくつも。


大小、無数。


全部に、自分が映る。


どこを見ても、


自分しかいない。


「……なにこれ」


一つの鏡。


アリスが映る。


口が動く。


「あなたの中」


別の鏡。


「本質」


また別の鏡。


「真実」


重なる声。


「心」


「あなたの歪み」


逃げ場がない。


どこを見ても、


否定できない。


アリスが後ずさる。


「私が……」


頭を押さえる。


「歪み?」


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