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第13話 その物語をアリスは嗤う

アリスは扉を開いた。


城の一室。


外から声が聞こえる。


怒った女の声。


アリスは窓辺へ歩いた。


庭を見る。


女王がいた。


その前で、


一人の少女が働いている。


白雪姫。


床を磨いている。


桶を運ぶ。


黙々と。


「手を止めるな!」


女王の声が飛ぶ。


白雪姫の肩が揺れる。


「申し訳ありません……」


小さく頭を下げる。


弱々しい声。


アリスは少しだけ目を細めた。


女王は不機嫌そうに踵を返す。


そのまま城の中へ戻っていく。


静かになる。


白雪姫はその場に立ち尽くした。


少しだけ肩を落とす。


それから、


両手を胸の前で組んだ。


「いつか……」


かすかな声。


「素敵な王子様に、出会えますように」


顔を上げる。


笑う。


綺麗な笑顔だった。


あまりにも綺麗で、


作り物みたいに見えた。


その一瞬。


口元が、わずかに歪む。


ほんの一瞬だけ。


すぐに消える。


「祈るだけで出会えるわけない」


アリスはそう言って、


窓から離れた。


廊下を歩く。


石の床に靴音が響く。


そのとき。


一つの部屋から声が聞こえた。


女王の声。


アリスは足を止める。


少しだけ開いた扉の隙間から中を見る。


部屋の中央に、


女王が立っていた。


その前に鏡。


「鏡よ鏡」


低い声。


「この世界で一番美しいのは誰だい?」


鏡が光る。


ゆっくりと像を結ぶ。


映ったのは、


白雪姫だった。


「一番美しいのは、白雪姫です」


女王の顔が歪む。


「そんなはずはない!」


「世界で一番美しいのは、この私だ!」


鏡は揺らがない。


「一番美しいのは、白雪姫です」


その瞬間。


鏡の中の白雪姫が、


こちらを見た気がした。


アリスは何も言わない。


女王が頭を抱える。


「許せない……!」


「許せない……!」


荒く息を吐く。


そして顔を上げた。


「狩人!」


扉が開く。


「ここに、女王様」


男が一人、膝をつく。


「すぐに白雪姫を始末しなさい」


狩人が顔を上げる。


「……ですが」


「始末を!」


狩人は少しだけ黙った。


「……承知いたしました」


廊下。


アリスは壁にもたれた。


「白雪姫は殺されるかな」


いつの間にか、


チェシャ猫がいた。


「さあね」


猫が笑う。


「どう思う?」


アリスはすぐに答えた。


「狩人にはできない」


「どうしてだい?」


「そういう物語、でしょ」


少しだけ間。


「……くだらない」


アリスは吐き捨てる。


それから扉の方を見る。


「王子様に出会いたい」


「鏡が選ぶ一番」


「殺されかけて、でも助かる」


小さく息を吐く。


「最初から決まってる話じゃん」


少しだけ、目を細める。


「選んでるようで、選んでない」


猫が楽しそうに目を細めた。


「じゃあ、次も見に行く?」


アリスは肩をすくめる。


「別に」


「どうせそうなるなら」


「確認するだけ」


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