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第11話 その沈黙をアリスは否定する

衣装部屋。


少しだけ、


景色が違う。


テーブル。


椅子。


紅茶。


焼き菓子。


「……あれ?」


アリスは首を傾げる。


「こんなの、あった?」


「新しく置いておいたんだ」


猫が笑う。


「落ち着くでしょ?」


アリスはカップを持つ。


「変なの入ってたりしない?」


「心外だなあ」


「冗談」


一口。


温かい。


「……」


少しだけ、息をつく。


「それで、どうするの?」


猫が覗き込む。


アリスはカップを置く。


「人魚姫は、このまま何も出来ない」


静かに言う。


「何もせず、泡になって消えるだけ」


目が細くなる。


「そんなのおかしい」


猫が少しだけ笑う。


「珍しいね」


「助けてあげるなんて」


「変わんないよ」


すぐに返す。


「気持ち悪いところを、綺麗にするだけ」


立ち上がる。


「行くよ」


「いつでも」


扉を開ける。


水中。


もう驚かない。


息も。


重さも。


当たり前みたいに、


受け入れる。


洞窟の前。


声が聞こえる。


「うんうん、上手くいかなかったんだね」


魔女。


「それは残念」


少しだけ、


楽しそうに。


「あんたは泡となって消えちまうよ」


人魚姫の肩が震える。


「……でも」


間。


「可哀想だから、1つチャンスをやろう」


アリスの目が動く。


「王子が結婚する前に」


「このナイフで王子を殺すのさ」


静寂。


「そうすれば」


「王子は誰のものにもならない」


「……あんたも消えない」


人魚姫の指が震える。


ナイフ。


「迷うのかい?」


魔女は笑う。


「アタシはどっちでもいいけどねえ」


「決めるのはあんただよ」


「人魚姫」


人魚姫が出てくる。


弱い。


足取りが、不安定。


アリスと目が合う。


一瞬。


逸らす。


そのまま、


上へ。


地上へ。


「……」


アリスは何も言わない。


ただ、


追う。


鐘。


音。


空気が震える。


ファンファーレ。


「我が国の王子と!」


「隣国の姫の!」


「結婚式が始まります!」


紙が舞う。


招待状。


今日。


「……今日か」


人魚姫が走る。


もう、


痛みは感じていない。


限界を越えている。


アリスも走る。


式場。


人。


光。


祝福。


牧師の声。


その手前で。


人魚姫の足が止まる。


ナイフが、


手から滑り落ちる。


音。


小さく。


首を振る。


出来ない。


それが分かる。


「ねえ」


後ろから声。


人魚姫が震える。


「言わないの?」


沈黙。


「何も」


一歩、近づく。


「……いや」


少しだけ、


皮肉っぽく。


「言えないんだったね」


人魚姫の肩が揺れる。


「でもさ」


視線を合わせる。


「それでいいの?」


式場を見る。


王子。


笑っている。


別の女の隣で。


「王子は勘違いして」


「ほかの女を選んだ」


一歩。


「助けたの、あんたなのに」


一歩。


「優しさも、何もかも」


「全部、届いてない」


人魚姫の目が歪む。


「それで」


声が少し落ちる。


「何も言わずに」


「自分だけ消えるの?」


沈黙。


「それ」


はっきりと。


「報われないって、最初から決めつけてるだけじゃん」


人魚姫の手が震える。


「自分で」


一歩、踏み込む。


「自分を消すって」


真っ直ぐに。


「おかしいよ」


少しだけ、間。


「怖いだけでしょ」


空気が変わる。


音が、歪む。


人魚姫が、


口を開く。


声は出ない。


出ないはずなのに。


何かが、


溢れる。


水。


泡。


光。


喉が裂けるように、


歪む。


目が揺れる。


「……」


言葉にならない叫び。


その代わりに、


現れる。


歪み。


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