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乱心令嬢リーベミオのたった一つの望み  作者: 池中織奈
番外編

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ロベルダ公爵家のその後 ②

「ロベルダ公爵、急な呼び出しにも関わらず来てもらってすまないな」



 そう口にするユウディス王国の国王の顔色は悪い。それも仕方のない話であろう。ずっと自分の息子だと思っていた存在の中身が九年もの間、異なっていたと神に知らされてしまったのだから。

 神は国に祝福を与えるとは告げた。でもだからといって、九年物間、見た目だけレリオネル・ユウディスだったものを息子と思い込んで接していたのだから。




「いえ、お気になさらず……」



 答える公爵も意気消沈している様子であった。



 こちらはこちらで乱心したと思いこんでいた娘が唯一真実を口にしてしまったことを知ってしまったのだ。

 ロベルダ公爵は、それはもう過去のことを悔いていた。




「まさか……レリオネルの中身が違う者になっていたとは……! なぜ、私は気づけなかったのかと、後悔してならない。それに……リーベミオのことも」

「はい……。私もです。ずっと、リーベミオは……言っていました。あれはレリオネル殿下ではないと。あの頃に中身が入れ替わったと推測するならば……横暴な様を一時期見せていたレリオネル殿下が変わったのは、元に戻ったではなく、別の存在がそう振る舞っていただけだったのですね……。それを知りもしないで私は……、娘の言葉を否定してしまいました……」




 ロベルダ公爵はそう言って、泣き出しそうな顔をする。たった一人で真実を口にし続け、その結果乱心したなどと言われた娘を思うと、胸が苦しかった。

 何よりも愛していたはずの、大切に思っていた娘の言葉を幾ら信じられないようなことを言っていても一欠けらも信じなかった自分の事も情けなくて、リーベミオに対して申し訳ないという気持ちでいっぱいだった。




「……私もそうだ。レリオネルが元の優しい子に戻ってくれたと喜んだ。違和感はたまに感じた。でも少しのものだったから……子供のレリオネルに何かあって、少し変化しただけだろうと思っていた」


 絞り出すようにそう口にする国王。そう、違和感がなかったわけではないのだ。

 別の魂が入り込んで、レリオネルのふりをしているだけなどとはまさか思ってもいなかった。



 今のレリオネルは確かに至らない部分も多々あった。それでも多くの者達に囲まれていた。

 複数の婚約者の女性陣は、とても優秀だった。レリオネルに足りないところがあっても問題ないぐらいには。

 だけれども、国王がそれを許したのは……、レリオネルが至らなくても許されたのは――彼が自分の血の繋がった子供だったからだ。



 国王は、中身が違う者が息子のふりを長年しつづけたことを考え、思わず嘔吐してしまいそうになる。なんとか我慢をして、公爵に向かって続ける。






「……リーベミオがレリオネルを大切に思っていたことは知っていたはずなのにな。出会った頃からあの子は息子に夢中で、レリオネルだって人を寄せ付けなかった時期だってリーベミオのことは傍に居ることを許可していた。そのリーベミオが……レリオネルが別人だと乱心した意味を私は考えようともしていなかったのだ。レリオネルが以前のような優しい子に戻ってくれたことが嬉しくて」



 国王はそう言いながら悔いるように目を伏せる。



 そう、国王や公爵だってリーベミオ・ロベルダがレリオネル・ユウディスを特別に思っていたことを知っていた。

 幼い頃、王宮を訪れたリーベミオは一生懸命レリオネル言話しかけていた。彼と会話を交わしているだけで、それはもう幸せそうに微笑んでいた。




「……妃は、倒れてしまった。レリオネルが別人だと知って。そしてリーベミオに申し訳ないと泣いていた。私もリーベミオの変化に気づいてのに……レリオネルが婚約解消したからと、もう気にしかなかった。あんなにも私も王妃も、リーベミオが義理の娘になることをあんなにも望んでいたのに」




 国王も王妃も、リーベミオが嫁いでくることを心から望んでいた.


 レリオネルとリーベミオが仲睦まじい様子を見せていることを、ほほえましく見守っていた。

 いずれこの二人が婚姻をして、ユウディス王国をおさめていくだろうと。



 あれだけリーベミオに一途で、他の女性になど目をくれていなかったレリオネル・ユウディスが女性を周りに侍らせることに思うことがなくもなかった。

 それに国王夫妻としては、乱心令嬢などと傷がついたリーベミオを王太子の婚約者のままにしておくわけにもいかない。



 それでもレリオネルがリーベミオを諦めることは私や王妃にとっても予想外だった。

 もし仮に、レリオネル・ユウディスが乱心令嬢と呼ばれるようになった彼女を手放さないことを選択したのであれば国王夫妻も婚約を解消しようとは思わなかっただろう。




(――そう、その時に気づけたはずなのだ。レリオネルがどれだけリーベミオと仲睦まじくしていたか知っていたから。婚約者を多数つくることにも疑問は覚えていたはずなのに……。リーベミオがあんなことになったからショックでそんな選択をしてしまったのかと勘違いしていた)




 国王は考えれば考えるほど、悔いしかなかった。



「それで、公爵よ。リーベミオは?」

「……人をやって確認していますが、用意していた屋敷にはもう居ないようです。リーベミオはとっくの昔に、レリオネル殿下のためにあの場所を脱して行動しております。世話役に置いていたものたちは気づいたらリーベミオが居なくなっていたようですが、どうせ捨て置かれた令嬢だからと気にもしなかったと」



 公爵はそう答えた。


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