メイさん
昨日は、まだひどく疲れていた。手足は重く、頭もぼんやりしていた。だから、ほとんどの時間をテントの中で休んで過ごした。おばさんがくれた薄い毛布の下で、浅い眠りに何度も出たり入ったりしながら、体は少しずつ力を取り戻していった。
でも、今朝は違った。布の隙間から日差しがもう差し込んでいて、おばさんが様子を見に来る前に、勇気を出して外へ出てみることにした。裸足の足の裏が、まだ夜露で湿った草にそっと触れた。
わたしは大きく息を吸い込んだ。まわりの景色を感じながら、肺いっぱいに澄んだ朝の空気を満たした。野花と遠くの松、それに名前のわからない、ほんのり甘いにおいが混ざっていた。
「空気、すごくいいにおい。この花畑って、怖い森の中に隠された天国みたい」
わたしは目を閉じて、まわりから聞こえてくる音を、ひとつずつ丁寧に聞き取ろうとした。朝が、一つずつ層になって、わたしの感覚に降りてくるのを感じた。
「本当にお水があるんだ。鳥の声も、草を揺らす風の音も聞こえる」
それでも、この穏やかな草原の近くには、突然変異した怪物や野生の獣らしき音は、何ひとつ聞こえなかった。胸の中で固く縛られていた何かが、ようやくゆるみ始めた。
しばらくして、テントに背を向けて立っていると、右側の茂みから、おばさんが不意に現れた。あの大きな体のわりに、足音は驚くほど静かだった。
「おはよう、ジア。今日は調子どう?のど、まだ痛かったりかゆかったりする?」
わたしは嬉しくうなずいた。何より先に、のどのことを聞いてくれたのがうれしかった。指を二本、そっと自分ののどに当てた。
声は、昨日よりはっきり出るようになっていた。それでも、言葉のはしばしに、かすかなかすれがまだ残っていた。
「うん、おばさん。ありがとう、おばさん……」
言葉が途中で止まったのに気づいて、おばさんは興味深そうにわたしを見つめた。少し首をかしげながら、続きを待っていた。
「どうしたの、ジア?」
わたしは、片足からもう片足へ体重を移し替えた。昨夜からずっと胸の中にあった質問を、どう聞けばいいのか、急にわからなくなった。
「おばさんの名前、ジアが知ってもいい?」
一瞬、驚いた表情がおばさんの顔をよぎった。そのあと、それは静かであたたかい笑いへと変わり、近くの枝から小鳥を一羽、驚かせて飛び立たせた。
「ふふ、もちろんよ。メイ・ギンムベルスというの」
その名前を初めて聞いた瞬間、胸の奥に、あたたかいものが広がった。頬が痛くなるくらい、大きく笑ってしまった。
「そうなんだ……ありがとう、ギンムベルスさん。ジアを助けて、治してくれて。ジア、少しの間、おばさんのこと怪物とか、悪い人だと思ってた。ごめんなさい」
ギンムベルスさんは、わたしとの短い距離を詰めて、頭をやさしく撫でてくれた。大きな手のひらが、わたしの乱れた髪に、意外なほど繊細に触れた。
その笑みは、目の奥まで届く、あたたかい笑みだった。
「メイさんって呼んで」
わたしは頭の横で人差し指を二本立てて、ゆっくりくるくる回した。その意味がわからなくて、顔が混乱でゆがんだ。
「ええ……ジア、わかんないよ。なんでメイさんなの?ギンムベルスさんじゃなくて?」
そのとき、おばさんが体を屈めて、わたしの目の高さまで下りてきているのに気づいて、指の動きが止まった。
近くから、その顔をじっくり見つめた。昨夜はちゃんと見えていなかった細かいところに、今なら気づけた。その目は落ち着いていて安定していて、年齢と静かなやさしさを物語る、かすかなしわに縁取られていた。
頭の上に乗った熊のような耳が、時々、わたしには聞こえない遠くの音に反応して動いた。もう一方の、明らかに変化してしまった片方の手は、もうあの最初の恐ろしい夜のように怖くなかった。あのころは、おばさんのすべてが不確かで、奇妙に感じられたのに。
なぜか、こんなに近くでおばさんを見ていると、ずっと前にわたしとお姉ちゃんを置いていったお母さんのことを思い出した。まだすべてが単純で、壊れていなかったころのことを。
わたしは軽く首を振って、その薄れかけた記憶を、いつもの静かな片隅へ押し戻した。そして、もう一度おばさんの方を見た。
おばさんは、確かに産みのお母さんじゃない。それでも、そのぬくもりに包まれた一瞬だけ、誰かがそばにいてくれるってどういう感じだったか、思い出させてくれた。もう長いこと、味わっていなかった感覚だった。
ぼんやりしていたわたしの意識は、おばさんがそっと名前を呼んだ瞬間、崩れて散った。
「ジア、また考え事?」
わたしは何度か瞬きをして、すぐに今この瞬間へ戻ってきた。
「おばさんが、メイさんって呼んでって言ったから。ジアにそう呼んでほしいんだって」
わたしはもう一度おばさんの顔を見た。目の端から広がる、やさしいしわを見つめた。
おばさんは目を閉じて大きく微笑みながら、人間の方の手をわたしに向けて差し出した。手のひらを開いて、辛抱強く待っていた。
「それで?約束できる?」
おばさんは手のひらを少し高く上げて、わたしを誘った。
「まずハイタッチね」
わたしはためらうことなく、すぐに手のひらを合わせた。軽く触れただけなのに、あたたかい心地よさが腕を伝って広がった。
「うん、メイさん!」
何も考えずに、わたしは両腕をメイさんに回して、ぎゅっと抱きついた。顔を、使い古された、ざらざらした服の生地に埋めた。
一瞬、メイさんの体がこわばった。突然の抱擁に驚いたようだった。でも、すぐに力を抜いて、抱きしめ返してくれた。片方の腕をわたしの小さな肩にしっかり回し、もう片方の手をそっと頭の上に乗せた。
朝の日差しが、まわりの木々の隙間から差し込んで、わたしたちを金色の光で包んだ。花畑の真ん中に一緒に立っている間、花びらは風にやさしく揺れていた。
その抱擁のぬくもりは、少しずつわたしの中に染み込んでいった。心の隅にまだしつこく残っていた迷いを追い払っていった。
わたしたちのまわりで、草原が朝のやさしい風に揺れていた。近くでは、あの変わらぬ川の音が、木々の上から降ってくる鳥の声と混ざり合いながら、静かに流れ続けていた。
その一瞬だけ、メイさんの腕の中で、金色の朝の光に包まれているあいだ、怪物のことも突然変異のことも、まったく気にならなくなった。
わたしはただそこに存在していた。恐れではなく、やさしさを選んでくれた誰かに抱きしめられながら。わたしを見捨てられるべき生き物ではなく、ただの怯えた子どもとして見てくれる誰かに。




