死との遭遇
そのとき、頭の中には一つの考えしか浮かばなかった。あの怪物は、もうわたしがいることに気づいていて、それでもまだ立ち去っていない。
片方の切れる手には、さっき食べたばかりの虫の残骸がまだくっついていた。殻や羽のかけらが、その刃みたいな縁に、薄暗い光の中で湿ってかすかに光りながら張りついていた。
人間の口とはまったく似ていないその口が、残った食事をゆっくり噛み続けていた。そのやわらかくすりつぶすような音が、この静かな空き地の中では、あまりにも大きく聞こえた。
怪物はわたしを見つめていて、わたしもその怪物を見つめ返していた。どちらも、髪の毛一本分すら動かなかった。
その怪物は、その場に固まったまま座っているわたしを、じっと観察していた。その目の中で、瞳孔がびくびく動いていた。頭のてっぺんから足の先まで、まるで一寸残さず調べるみたいに、こちらを見回しているのがわかった。
冷たい汗が、もう首の後ろにたまっていた。自分の脈拍がのどに打ちつけているのを感じた。あまりにも大きくて、怪物にも聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいだった。
この生き物がいったい何なのか、まったく見当がつかなかった。その知らなさが、何も考えられなくさせた。メイさんに初めて出会ったときとは、まったく違う感じだった。
怪物は頭を右に向けて、それから左に向けた。それから、こちらへ向かって歩き始めた。一歩ごとに、足の下の落ち葉に、やわらかく湿ったへこみができていった。
恐怖が、できる限り大きな声で叫んで泣きたいくらい、体中にあふれてきた。それでも、何も声にならなかった。恐怖が、もうわたしのすべてを飲み込んでしまっていたから。
怪物は巨大だった。今や、その体とわたしの間には、手のひら数個分の距離しか残っていなかった。その重みで、下の地面がかすかに震えている気がするくらい近かった。
体を低くしながら、あの恐ろしい手の一本を、ゆっくりとためらいなく伸ばしてきた。まっすぐ、わたしの顔に向かって。
まったく動けないまま、その手がどんどん近づいてくるのをただ見つめることしかできなかった。目のほんの数センチ手前で止まるまで。近すぎて、その暗くて節くれだった表面の、隆起や関節の一つ一つまではっきり見えるくらいだった。
息が、胸の奥のどこかで固まって、もう動かなくなった。その、信じられないくらい長く引き伸ばされた数秒のあいだ、その手がもうすぐ振り下ろされると確信した。
その手が完全に止まって、目の前で動かなくなった瞬間、心臓も、まわりのすべてと一緒に止まってしまった気がした。もう、次に何が起こるかを待つことしかできなかった。
でも、その手は、わたしに触れなかった。代わりに、右の方へそれていった。その突然の動きの変化に、心臓は一瞬本当に止まって、それからいつも以上に激しく打ち始めた。
それでも、怪物はわたしから離れようとはしなかった。その巨大な体は、まだ目の前にかがみ込んだままだった。吐く息のあたたかさを感じるくらい近かった。
湿った土のにおいと、その下に、名前をつけたくない、もっと鋭い何かのにおいが混じっていた。ほかの五本の手は、体のまわりで動かないままだった。
今すぐにでも動き出せそうな構えで。少しでも動いたら、それが攻撃するきっかけになってしまうんじゃないかと怖くて、視線をほかへそらす勇気もなかった。
次の数秒は、これまでの人生で一番長い時間みたいに感じられた。かすかな音が耳に届いた。右側に浮かんだままの手の中で、何か小さなものが動いている音。
乾いたガサガサという音のあとに、小さなおびえた鳴き声が続いた。頭の中は、そこで何が起きているのか、あらゆる恐ろしい可能性でいっぱいになった。それでも、振り向いて確かめる勇気は出なかった。
体全体が激しく震えて、気づかないうちに、指が下の土に食い込んでいた。ただ黙って、この先に起きることが自分の人生の終わりになりませんようにと願うことしかできなかった。
それから、怪物はその手を引き戻して、体をまっすぐに伸ばした。頭上の空の、もっと広い部分をふさぐくらいの高さで。
そのはさみの中には、いくつかの小さな生き物が握られていた。てんとう虫みたいな虫と、カエルまで一匹。どれも身動きできないまま突き刺されていて、一本の脚だけがまだぴくぴく動いていた。
それを全部まとめて口へ運んで、生きたまま食べてしまった。その湿った噛み砕く音が耳に届いた。それから、怪物はただ向きを変えて、わたしのそばを通り過ぎていった。
重い足音が、木々の中へだんだん消えていった。まるで、最初からわたしの存在なんて気づいていなかったみたいに。
安堵が、あまりにも強く押し寄せてきて、足の力が抜けてしまった。森の真ん中で、そのまま仰向けに崩れ落ちた。冷たく湿った地面が、破れた服越しに背中に押しつけられた。
涙が少しずつあふれてきて、止める間もなくこぼれ落ちた。すぐに、本格的に泣き始めた。一つ一つの荒い息とともに、体全体が震えていた。
あの怪物に生きたまま食べられて死んでしまうと、本気で信じていた。その考えだけで、涙は、自分の中に何も残らなくなるまで止まらなかった。
でも、今までのどの瞬間とも違って、記憶の霧の中から、一つの記憶が浮かび上がってきた。前に自分自身にした約束だった。それだけで、なぜか泣くのが止まった。
手の甲で顔をぬぐって、頬に土をこすりつけながら、体を起こして、木の下で小さく丸くなった。かごの中の果物や野菜は、まわりのあちこちに散らばって、葉っぱや土に半分埋もれていた。
目はまっすぐ前を見つめたまま、空っぽだった。頭は、たった今目の前で起きたことのすべてを、まだ受け止めきれずにいた。
家に帰りたい。それしか考えられなかった。胸の奥に深く居座って、決してゆるまない痛みだった。
パパ、お姉ちゃん、スースー、それにメイさんの姿が、一度に頭の中を漂った。積み重なっていく疲れと絡み合いながら、もう何をする力も残っていなかった。
眠気が、今までにないくらい速く、重くのしかかってきた。まぶたをこれ以上開けていられないくらい押さえつけてきた。何が起きているのか、本当に理解する前に、わたしはもう、森の真ん中で一人、眠りに落ちていた。




