ここにもマンゴーがあるんだ?
メイさんがわたしの名前を呼ぶのが聞こえた瞬間、たぶんもう三回目か四回目だったと思う、わたしはすぐに駆け出した。その声は、マンゴーみたいな果実をつけたあの木のあたりから、野菜の畝を越えて届いてきた。走るあいだ、自分の足音が踏み固められた土にぶつかる音と、肩をかすめる葉っぱの音が混ざり合った。裸足の裏で、小石が時々ずれた。額の生え際に、汗がじんわりにじみ始めた。あの木がようやく見えてきたころには、息が短く弾んでいた。
そばに着いたとき、わたしはまだ少し息を切らしていた。メイさんはこちらを向いて、しばらく待っていたことがわかるくらい、眉をわずかに寄せていた。両腕は、摘んだばかりの葉物野菜が半分入ったかごの上で、ゆるく組まれていた。
「ジア、いったいどこに行ってたの?」
思わず緊張気味の笑いがこぼれた。手が頭の後ろへ伸びて、走ったせいでほつれた髪を、指先でいじった。つま先が、土の上で少し丸まった。何かやってはいけないことをしているのを見つかったときにいつもなる感じだった。
「ジア、マンゴーみたいな果実がなってる木を見てたの、おばさん……パパが、アルデ市から帰るたびに、お姉ちゃんによく買ってきてくれてたやつ」
メイさんはしばらく黙っていた。目を少し細めて、頭の中でその木を思い描いているみたいだった。片手は、まだかごの編まれた持ち手にかかったままだった。それから、さっきよりやさしい声で、もう一度聞いてきた。
「それ、どこにあるの?ジア、その場所、メイさんに見せてくれる?」
わたしは頭を素早く、嬉しそうに縦に振った。その小さな動きで、ほどけかけていた髪の毛先が、また目にかかりそうになった。
「こっちだよ、メイさん」
そう言って、わたしは先に歩き始めた。小さな足が、日差しであたたまったやわらかい土の上に、かすかな足跡を残していった。一歩ごとに、土のにおいがふわっと空気に混じった。メイさんは数歩後ろからついてきた。使い古されたスカートの裾が、低く伸びた葉つきの茎に時々引っかかって、やわらかい音を立てた。頭上のどこかで、鳥が二度鳴いて、それからまた静かになった。畑の羽音の中に、その声はすぐに溶けていった。
しばらくして、あの木の前に着いた。広い枝が、地面の上にゆらゆらと動く木漏れ日の影を落としていた。木の下には、日差しから逃れられる、ひんやりとした静かな空気がたまっているみたいだった。体重を移すたびに、落ちた葉が足の下で小さく音を立てて崩れた。メイさんの反応を待ちながら、わたしはじっと立っていた。
「あ……この木……」
メイさんの視線は、根元からゆっくり上へたどっていって、しばらくのあいだ、その葉の形をじっくり見つめていた。指が一本、考え込むようにあごを軽くたたいていた。それから、ようやく小さな笑みが顔に浮かんだ。
「メイさん、これ、前に見たことあるわ。これ、マンゴー農家が育ててる、あの種類のマンゴーの木と同じね」
わたしは首をかしげて、メイさんを見上げた。好奇心が、顔にはっきり出ていた。両手は、後ろでゆるく組んでいた。
「本当に?」
メイさんはゆっくりとうなずいた。人間の方の手のひらを伸ばして、幹のごつごつした樹皮にそっと触れた。指が、その溝をなぞった。まるで、古い友達に挨拶しているみたいだった。
わたしはもう一度その木の方を向いて、じっくり見つめ直した。眉が、頭の中で何かがしっくりこなくて、ぎゅっと寄った。少ししてから、また顔をメイさんの方へ向けた。あごを少し上げながら。
「え……なんで、ジア、ガルデ市でこれ見たことないんだろう?」
メイさんの視線は、また枝の方へ戻っていって、指はもう一度あごを軽くなでた。何か大事なことを真剣に考えているときに、いつもする仕草だった。
「メイさん、この木は、山が多いダルデ市でたくさん育っているって聞いたことあるわ。エルデ市にもかなりあるけど、ダルデほどじゃないの。カルデ市とファルデ市には、この木はあまり育っていないのよ」
わたしの口が、驚いて小さく丸くなった。目を二回まばたきして、その情報がゆっくり頭の中に落ち着いていくのを感じた。じゃあ、マンゴーの木って、村ではあんなに当たり前に見えていたのに、実はどこにでも育つわけじゃないんだ。
「そっか……」
これまでずっと、パパとジアが行ったことがあるのはアルデ市だけだった。いつもパパの仕事のためで、荷馬車の後ろで二人一緒に乗って、パパは書類を確認していた。でも、そのとき、静かで半分忘れかけていた記憶がよみがえった。お姉ちゃんとジアは、あとでカルデ市の学校に行く予定だったこと。
それってつまり……ジアも、いつかそこでこの木を見られるかもしれないってこと?
メイさんは、わたしの顔にその考えがよぎるのを見て、小さく笑った。まるで、そこにはっきり書かれているのを読み取れるみたいに。
「メイさんも、ダルデ市には行ったことないの。でも、メイさんの学生時代、カルデ市でこの木を見たことがあるのよ。ジアも、そこで学校が始まったら、この木を見られるわ。パパが前に言ってたとおりに」
わたしは何度も、何度も頭を縦に振った。胸の中に、小さな誇らしさがあたたかく広がった。メイさんが今言ったことは、パパが前に言っていたことと、言葉までぴったり同じだった。それだけで、世界全体が少し確かなものに感じられた。
そのあと、メイさんはわたしに向かって手を差し出してきた。手のひらを開いて、指の間には、朝の作業でついた乾いた土が、まだかすかに残っていた。
「さあ、帰ろうか。メイさん、お料理に必要なものはもう全部集めたわ。一緒に作って、食べましょう」
わたしは大きく笑って、指をその手の中へすべり込ませた。土のざらつきが少し残っていても、その手はあたたかくて、握り方はいつもと同じようにしっかりしていた。
「ふあああ……」
思わず大きなあくびが出た。止められないくらい大きくて、あまりの大きさに目の端がうるんだ。あとで、あごが心地よく痛んだ。
「ジアも疲れたよ、メイさん。帰ったら、ジア、眠って休みたい。今日は本当に、本当に疲れた」
小さくて静かな笑みだけが返ってきた。わたしのことを少し面白がっているときにいつもするみたいに、目じりにしわが寄っていた。わたしたちは一緒に、畑を離れて歩き始めた。野菜や果物の木の列が、後ろへゆっくり遠ざかっていった。真昼近くの太陽が、家へ続く曲がりくねった道の上に、わたしたちの影を長く細く伸ばしていた。後ろのどこかで、虫のかすかな羽音がしばらく残ってから、歩くあいだの静けさの中へ消えていった。代わりに聞こえるのは、足音の柔らかい崩れる音と、道の端の丈の高い草を時々揺らす風のささやきだけだった。




