ジアが見たもの
今回、メイさんとわたしは、テントの向こう側、いつもとは反対の方向へ歩いていった。
その先には、巨大な木々が見えた。それに、影の中でとても静かに立っている何かも見えた。最初は、ただの木の幹だと勘違いしてしまうくらいだった。
正直に言うと、メイさんについていきたいとお願いしたとき、だいたいどこへ向かうのか、もうなんとなくわかっていた。毎回持ち帰ってくるいろんなものから、少しずつ組み立てていた話みたいなものだった。全部を一度に教えてもらうんじゃなくて、ばらばらの断片から少しずつ物語を学んでいく感じに似ていた。
でも、こっちの方向は……
思い出せる限りでは、この花畑に来てから、メイさんがこの方向へ向かったのは一度か二度だけだった。そして、そのたびに、いつもより少し疲れた顔で帰ってきた。
記憶違いでなければ、この方向から帰ってくるときは、いつも果物や野菜、それにひょうたんも一緒に持って帰ってきた。
全部同じひょうたんなのに、わたしたちのところに届くころには、なぜかそれぞれ違うものになっていた。
あるものはコップになり、あるものはバケツになった。どれも、テントに届く前に、メイさん自身の手でくり抜かれ、形作られていた。二つとして、まったく同じものはなかった。
本当は聞いてみたかった。どのひょうたんが何になるのか、どうやって決めているのか。見ただけでわかるものなのか、それとも、何年もの経験がいるものなのか。
でも、今は、そのタイミングじゃなかった。
花畑を出た瞬間、落ち着かない気持ちがすぐにわたしを包んだ。足の下の地面が、やわらかい花びらから、もっと硬くて凸凹したものに変わっていった。花の生えていないところで、根っこや石が、つま先に引っかかった。
胸が締めつけられた。
わたしはまっすぐ前を見つめ続けた。
それから右を見た。
それから左を見た。
道すがら、メイさんは何度もわたしに話しかけてきた。木々が一歩ごとにどんどん密になっていって、影が細い道の上にどんどん長く伸びていくのに、その声は落ち着いていた。
わたしも答えていた。
でも、実際に何を話していたのか、よく覚えていなかった。ただうなずいて、思いついたままの返事をしていただけだった。メイさんがどこへ連れていってくれるのかを見ることと、両側を通り過ぎていく見慣れない形に、注意がすっかり分かれてしまっていたから。
そして、右に曲がった瞬間、すべてが変わった。
確信はなかったけれど、まだ半分にも着いていないような気がした。
急に、わたしはメイさんの手を離して、さっき通り過ぎたばかりの曲がり角の方へ走って戻った。裸足が、踏み固められた土をぱたぱた鳴らした。すぐ後ろから、驚いたメイさんの息づかいが追ってきた。
「ジア?」
わたしは一本の木のそばで止まった。花畑の端でいつも登っているあの木とは、まったく違っていた。その幹は太すぎて、わたしの腕では絶対に回りきれないくらいだった。
すぐに左の方を見た。
花畑は、まだはっきり見えた。この距離からでも、花の一つ一つの形がちゃんとわかるくらいだった。数日前から、目がそんなふうに見せてくれるようになっていた。村にいたころよりも、ずっと遠くまで、ずっとはっきりと見える気がした。
それから、右の方へ視線を移した。
そちらには、あの巨大な木々のある森が、まだそこにあった。
そして……何かがいた。
それは木々の間、ずっと遠くに立っていた。全体の形以上のことはわからないくらい遠かったけれど、それでも、普通の動物のようには動いていないと、なぜかわかった。
もう一度左を見た。
それから右を見た。
見間違いじゃなかった。
この森は、本当にここにあった。さっき花畑から、あの遠い木々の間で何かが動いているのに初めて気づいたときから、ずっと見えていたものだった。
もう一度左の方を見た。
考えてみると……
まだ、花畑の距離の半分も歩いていないはずだった。後ろにどれだけ花畑がまだ見えているかを考えると、そうとしか思えなかった。
なんで、ここからでも花畑がこんなにはっきり見えるんだろう?
わたしは左を見続けた。
それから右を。
それからまた左を。
なんで……?
そのとき突然、後ろから肩に手が乗った。
「ひぃっ……!!」
わたしはすぐに振り向いた。
それは、メイさんだった。
その顔は少し心配そうで、熊のような耳が、わたしの方へかすかに傾いていた。
すぐに気づいた。
もしかして、メイさん、何か勘づき始めてるんじゃ……
その考えに、思わず自分の袖をぎゅっと握りしめてしまった。
「ジア、何か変なことでもあった?メイさん、ジアがずっと右や左を見てるのに気づいたんだけど」
わたしは首を強く、速く横に振った。髪が目にかかるくらい、勢いよく。
「な、なんでもないよ、おばさん」
メイさんが、静かにため息をついた。その言葉そのものより、もっと大きな心配がこもっているみたいな音だった。
それから、また手をつないでくれた。毛と肌の境目のところがざらざらしていて、それでもあたたかい手だった。
「ジア、もし何か変なことがあったり、怪物や村人を見たりしたら、メイさんに教えてね?」
その言葉があまりにもまっすぐで、一瞬びくっとしてしまった。
話すべきかな?ううん……
もし本当に、これがまた自分の体が変わってきているせいだったら……
メイさんに、怪物だと思われたくない。
その考えだけで、おなかがぎゅっとねじれた。森そのものが見せてきた何よりも、ずっと嫌な感じだった。
わたしはすぐに頭をかいて、無理やり笑顔を作った。内側で感じているよりも、少しでも本物らしく見えますようにと思いながら。
「えへへ……うん。わかった、メイさん。もしジアが変なもの見たら、絶対メイさんに教えるね」
メイさんは少し笑ってくれた。でも、その目の奥にある何かは、その笑みとぴったり合っていなかった。わたしが、メイさんがまだ答える準備のできていない質問をしたときに、時々見せる、あの表情だった。
わたしはまた、メイさんの隣を歩いた。手をつないだまま、あまり考えずに歩幅を合わせた。この数日間、一緒に過ごすうちに、自然とそうするのに慣れていた。
まだ怖かった。
でも……さっきよりは、少しだけ落ち着いた気持ちになっていた。まわりの木々も、前ほど見慣れないものには感じられなくなっていた。あの見たものは、まだ胸の奥にずっしり残っていたけれど。
もし本当に怪物か村人を見たのだとしたら……
自分の目が本当に何を見せてくれたのか、もう少しちゃんとわかるようになったら。あの遠い木々の間にあった形が、想像だったかもしれないという感じじゃなくなったら。
そのときは、メイさんにちゃんと話そうと思った。




