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2.目覚め

〜異世界アルテミシア、魔族帝国・影の玉座〜


黒崎零は、闇の中で目を開けた。


(……どこだ、ここは)


視界が安定するまで、数秒かかった。

石造りの巨大な空間。天井は遥か高く、黒い石柱が左右に並ぶ。

正面には、巨大な玉座。


(まるでファンタジーの世界だな)


体が、おかしい。

手を見る——人間の手だが、皮膚の下を何かが流れている感覚がある。

熱くもなく、冷たくもない。だが、確かに「何か」が動いている。


額に触れると、硬いものがあった。

角だ。


(マジか…転生ってやつなのか?)


黒崎零は、国連の交渉室で死んだ。爆弾で。

だが今、自分は別の体の中にいる。

そして——自分がなぜここにいるのか、何者なのか、何も分からない。


頭の中には、自分の記憶——黒崎零としての記憶——しかない。

この体の記憶は、全く流れ込んでこなかった。


(まずい。状況が何も分からない)


「……陛下」


声がした。


横を見ると、黒いドレスの女性がいた。

透き通るように白い肌。紅い瞳。波打つように長い黒髪。

口元からはわずかに牙が覗いている。

彼女は片膝をついて、黒崎を見上げていた。

だが、その目は——服従ではなく、観察する者の目だった。


「お目覚めになりましたか、魔王陛下」


黒崎は、一拍置いてから答えた。


「……ああ」


(今、魔王って言ったか?魔王。俺が?)


「陛下……少し、お顔が違います。いつもと」


女性は立ち上がり、玉座の傍らに寄ってきた。

距離は近い。おそらく、親しい間柄だ。だが、信頼しきっているわけでもない——その目が示している。


「問いがある」


黒崎は静かに言った。

「俺は今、正直に言う。頭が、おかしい」


「……おかしい?」


「記憶が、ない。今、何が起きているのか。俺が誰なのか。何もわからない状態だ。一から教えてくれ」


女性の目が、涙で潤んだ。

しばらく黒崎を見ていたが、やがて口を開いた。


「……禁断魔法の、代償ですね」


「禁断魔法?」


「三日前、陛下が行方不明になりました。封印室が光ったと報告があり、私が確認に行くと……陛下は床に倒れていた。魔力はほぼ空に近い状態で。」


女性は、じっと黒崎の目を見た。


「魂の代替召喚。先代が書き残した術です。術者の魂を代償に、異界の魂を呼び込む。……陛下は、自分の魂を差し出したのですね」


「魔王なんだろ、なんでそこまで追い込まれていた?」


「……勇者が現れました」


(勇者!?コテコテすぎて眩暈がする)


「敵国は連合し帝国領に攻め入っています。帝国内部でも反乱が起きています」


なるほど。


(追い詰められた魔王が、自分を捨てて異界の魂を呼んだ)


無茶だ。だが理解できる。


「君の名前は?」


「申し遅れました……リリア・ヴァルフレアム。魔族帝国の宰相を務めています。吸血鬼族の長でもある。陛下とは——十年来の腐れ縁と、言えばわかるでしょうか」


「十年か、そりゃ長いな。」


「ええ。あの駄々っ子が玉座に座った日から、ずっと傍で支えてきた。……呼んだ魂が、どんな者なのかは知りませんが。陛下の体の中にいる以上、あなたが今日から魔王です。覚えておいてください」


それは宣告に近かった。

だが、黒崎にとっては都合がいい。


「状況を教えてくれるか。俺が何をすべきなのかを。」


リリアは、わずかに眉を上げた。

だが、すぐに背筋を伸ばし、冷静な表情に戻った。


「承知しました。長くなりますが」


(まずは、この世界がどうなってるか理解しなければ。)


黒崎は目を閉じる。


国連地下。

交渉決裂。

爆音。


「俺は甘かった」


小さく呟く。


「え?」


「俺は、相手も合理的だと信じた。理性が勝つと」


静かに目を開く。


角が影を落とす。


「だが違った」


玉座に深く座る。


「正義も、理念も、条約も——上に立つ者の玩具だ」


「なら」


零は憎しみを込めて拳を握った。体の内側から怒りが溢れてくる。


「俺が全て支配する。国も、勇者も。」

「二度と、爆弾の答えを選ばせないために」


リリアの口元がわずかに上がる。


「……陛下、面白い方を呼ばれましたね。」



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