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望月と少年の非日常譚  作者: 義春みちを
4章 ループ・ザ
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4章7話:吐きつづける嘘

 気がつけばまた、視界が眩むほどの綺麗な青空。遠くで少女と話す黒い少年。動いている。どこかが抉れていることも無く、頭部もしっかりとついていた。

 ただ少しだけ、フラッシュバックした光景が胃を刺激する。


 癒しを求めて、愛らしい少女の元へとちょっかいを出しにいく。


「リリカてゃそ〜かまってクレメンス〜」


「えっと…くれめんすって?」


「なんちゃらしてくれの意。元々は人の名前だけど」


 彼女と話したのはとうの昔

と、いうわけでもない。それなのにどこか懐かしさを感じる。懐かしさよりも安らぎという方が近いだろうか。小さな鈴のような声が耳をくすぐる。


「えいっ」


「ひえっ⁈」


 彼女の細く雪のような白い指が頬を押した。彼女のこちらを観察する目が輝いている。宝石のような明るい白群の瞳に、目を奪われる。


「思ったよりもやわこい…」


「…っは。な、なにして…」


 ふと我に帰り、見惚れていた目線を咄嗟に外す。もっと見つめていたい気持ちはあるが、面と向かっていると思わず視線を下げてしまう。


「『かまって』って言ってたから…。もしかして痛かった?嫌だった⁈」


「そんなことないっ!…です」


 焦る表情が柔らかくなる。困り眉に、見開かれてより鮮明に見える瞳も可愛らしいのだが、彼女には困り顔よりも笑顔がよく似合う。


 そんな事を考えていたら、両頬が柔らかい何かに包まれる感覚がした。


「もちもちしてる…!それにあったかい…

………子供体温…?」


「子供体温て…」


 リリレヴァの手がウツキの頬をこねくりまわしていた。どんな表情で頬を揉まれればいいのかわからず、目を閉じる。手から感じる体温、何か甘い香り、服の擦れる音、優しい声音がより鮮明になる。


「なんか熱くなってきた…」


 顔が明らかに熱っている。きっと彼女は熱が出たとでも思うのだろう。人の気も知らないで。自分が他者———特にウツキにどれだけ影響を及ぼすのかを理解していただきたい所だ。

 しかし柔らかい指で包まれるというのも乙なもので、どこか落ち着くというか、マッサージをされているような感覚になる。暖かい陽気と合わさりこのまま手の中で寝てしまいそうに


「終わりだ!終わりッ!リリィもあんまり男にベタベタしないッ!」


 至福の時間を裂くように声が割って入る。目を開いてはじめに視界に入るは、過去1で怒りに染まるマオの顔。まさに鬼の形相と形容するべき表情と化していた。


「オラッ!さっさと俺のリリィから離れろッ!」


 首根っこを掴まれ、グルンと視界が回り、7メートルほど投げられる。


「マオっ⁈何して…ウツキは人間なんだからすぐに壊れちゃうでしょ⁈」


 驚いたような声を荒げるリリレヴァ。ぷんすかと怒る彼女はとても愛らしい。それが自分に対する内容で怒っているとなれば、もはや天使に違いあるまい。


「リリィ、ウツキは丈夫だからそうそう壊れないよ。」


 それを適当にあしらうマオ。言葉からは彼女以外はどうでもいいことが読み取れる。

 実際の所、体育で習った受け身によって目立った怪我はないが、後頭部を打ち付けていたらどれほどの致命傷になったことか。しかし、今のウツキは死ぬ事もできない特異体質な為、丈夫ということに関して完全に的外れとは言えない。


「だからって投げること無いじゃんかよ…」


「じゃあウツキはリリィと他の男がいちゃついていたらどうする」


「殺s……」


 深く深呼吸し、出かかった言葉を飲み込む。


「少し理解(わか)らせてやらないとなって。」


 切れ味のいい剣ならば、ある程度ぶった斬れるであろう。彼女から貰ったものだとしても、彼女に危害が被る可能性があるのならそんな使い方も躊躇わない。しかし、『私だと思って大切にしてね』なんて言われた剣でそんなこと出来るだろうか。



「そういうことだよ。リリィは抜けてるんだから、周りがどうにかしてやらないと」


「ちょっと、抜けてるって失礼じゃない⁈」


「…それは禿同。まだ少ない時間だけど、それでもわかる。」


「ウツキまで!」


 またしてもご乱心な少女の気持ちは、2人の男には届かないどころか和やかな気持ちにさえしてしまうのだった。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □


「僕に男と抱き合うシュミは無いんだけど?」


 マオをリリレヴァより少し離れたところへと連れ出した。勿論彼女を1人にするのは不安なので、目の届く程度の場所に。


「ちげーよッ!女の子とイチャコラ出来ないからって、即座に近くの男に乗り換える奴がいてたまるか!こえーよ!どれだけ尻軽だと思われてんの⁈」


 『どうだか』と言わんばかりの顔をするマオ。


「いや、珍しく今回は真面目な話。あの、さ…襲撃されるって言われたら、協力してくれるか…?」


「…なんでそれを知ってる?って、聞き返す。」


 喉がきゅっと締まる。


 確かに、知っているとしたら敵の仲間だからっという理由は最初に思いつくだろう。それを疑う為にもそう質問するのは定石と言えるだろう。


「…痛いとこ突くよな、リリカてゃその為ってなると心強くもあるんだけど。…予知夢?というか、いやもっと確定的なものなんだけど…」


 また嘘をついた。しかも前回とは違い『予知夢』として。

 同じ事を繰り返すだけじゃ何も進展など無い。

 それに予知なんて便利なものじゃ無いからだ。やり直さざる終えないほどの状況下の苦肉の策。


 いつぞや読んだような、敵が来るような事を知らせてくれるアイテムとして偽るような事をしても良かったのだが、そう見せかける道具を持ち合わせていない。


 こんな嘘をつくのも、今回を最後にしたいところだ。


「ふわっとしてるんだな。…まあでも良いよ。君の考えに踊らされてあげよう。少しでもリリィの脅威が仄めかされたのなら取り除かないとだし。」


「…俺がいうのもなんだけどさ、お前騙されないようにしろよ?」


 騙されないと慢心している態度にかなり危機感を覚える。心強いだなんてとんでも無い、前言を撤回させていただこう。


「あと……ほんっっっっとに言いにくいし、言ったらマオに八つ裂きにされるだろうし、ダメ元で言うんだけどさ、」


「よくそれで言う気になったね。」


「言わないと駄目なんだよ。…前、ヴィオラにリリレヴァは戦えるって聞いたけど、リリレヴァってどれぐらい強いんだ…?」


 マオは眼光を鋭くさせ、舌打ちをする。


「あの子を戦わせる気か?」


「…正直、相手が強いし複数体いるしで戦力が枯渇してる。ジリ貧で押されて、最後に彼女だけ取り残されて…ってのが1番想定したく無い。後方支援型なら戦力に入れたい。戦線で戦うタイプなら、

…あんまり戦わせたくは無いけど」


 あの子に助けてもらったのにまた助けてもらうだなんてしたく無い。しかも生死が懸かっている場で。リリレヴァが守られながら、遠距離で敵を突っつくことが出来るならそれが1番良い。


 もう、好きな子が目の前で散る様なんて見たく無い。


「…遠距離も、出来るはずだ。だけど、連れて行きたくは無い。」


 ご尤も。ウツキとしても連れて行きたくは無い。しかし、あの惨状を2度と見たく無いからこその苦渋の択なのだ。


「もし、本当に勝てないとしても…」


「その時は僕と心中してくれ。リリィは絶対に戦場に立たせない。」


 マオの意思が揺らがぬ事は、その目が物語っていた。命を賭けてでもリリレヴァを守りたいとするマオは、ウツキに改めて決心をさせた。


「出来ればマオと心中もしたく無いけどな。」


 死なせない。心中なんてさせないし、死ぬとしたならそれは自分だけでいい。目の前で消え去ったあの夜を、ただ空回り傷つけただけのあの日を、繰り返しはしない。

 

「さてと、それじゃあ姫のところへ戻りますか」


「ウツキに姫と呼ばれているのはなかなかに複雑だが、そうだね。お姫様はお菓子が待ちどうしくて、お腹と背中がくっついているかもね」


 互いに茶化し合い、噂の姫のいる場所へと戻る。

 が、しかし肝心の姫が居ない。


「お、おい、目の届く場所にいたはずだよな…?」


 焦る様な声色を隠せずマオの方を向くが、彼もまた焦りが表情に滲み出ていた。先程まで襲撃者だなんだと話していたのだから、それが頭をよぎらないはずもない。


「クソッ…俺(・)がしっかり見てれば…」


「いや、元々は俺がッ…」


 罪悪感で染まり切る2人は責任は自分のものだと取り合う。しかしすぐに冷静になり、彼女には意味のない行動を止めて、辺りを探し始めた。

 

 ダンピールであり、弱点の多い彼女の事だ。いくらでも嫌な想像ができる。屋敷を取り囲む水、降り注ぐ日光、何かが潜んでいるかもしれない森。水面を覗き込んでも、木々の間に目を凝らしても、辺りを見渡しても、彼女の姿は無い。


「ま、マオっ…」


 自分の無力さが浮き彫りになっていき、他者に縋ろうとした。ただ、追い詰められているのは自分だけでなく彼もまた同じだった。


「あ…ぁあ…」


 自分のせいだ。自分のせいなのだ。自分がマオを連れ出さなければ、彼女から一瞬でも目を離さなければ、こんな事態に陥ってはいなかった。

 罪悪感がのしかかり、体が重く、吐き気を催す。彼女の記憶が次々に脳裏に浮かぶ。そのほとんどはきらきらと輝いた彼女の記憶。しかし、色濃くこびり付くは彼女の死に様。

 知らないところで彼女がもう居なくなっていたとしたら。視界がぼやけ、耳鳴りが強くなり、吐き気が増す。頭を金槌でガンガンと叩かれる様な痛み。心臓だか肺だかがぎゅっと痛み、息が荒くなる。


 腰についた剣に手を伸ばした。それを徐に首の横に当てる。


「マオ?厨房に2人が居なかったけど、買い物にでも行ってるの?」


 持鈴の様に、耳に響き、何処か落ち着く優しい声色が聞こえた。

 その方向を向いた瞬間、安堵で目から涙がこぼれそうになる。


「……なんで2人とも、そんな顔してるの…?」


 ウツキは彼女の前で情けない姿は見せられまいと、顔を逸らして目元を擦った。


「…リリィ、勝手に東屋の外に出るんじゃない。陽の光が出ているんだから、君の綺麗な肌に火傷痕でもできたら…」


「仮にできたとしても一瞬で消えるもん。マオが思ってるより柔じゃないから!私『ダンピール』だよ?吸血鬼よりかは日光の耐性あるし」


「それに、厨房に行ったのかい?お菓子は見つからなかっただろ。」


「…墓穴掘っちゃった……」


 それからリリレヴァはマオにガミガミと説教を受けた。これは心配した彼なりの愛情なのだろう。きっと。たぶん。おそらく。


「ウツキ…助けて…」


 彼女の目に絆されそうになるが、ウツキも彼女が居なくなり相当心配をしたのだ。心を鬼にして顔を逸らした。


「ひ、ひとでなし〜…」


「ぐはッ…」


 言葉の矢が心臓を貫いた。彼女にしてみればただの口から溢れた言葉。恨み言では無いとはわかっていても、それはウツキに甚大なダメージを与えたのだった。

おはこんばんちゃ、義春みちをです…

あの、ハイ.

更新とんでもなく遅れて申し訳ございませんでした!!!!

なんなら6時にも間に合ってないっていう…

展開が思いついても、描写が思いつかないんですよ…!

台詞だけならどれだけ楽だったことか…

茶番しか思いつかないんですけど、意味のある内容以外は削ぎ落とさないと脱線しまくるので…

出来るだけ意味のある話をさせてます…

タイトルも間違えていたし、時間はなくは無いのに脳が足りない…

嗚呼もう出なきゃ普通に予定に遅れてしまう…

申し訳ないですが今日はここら辺で…

次回(いつやねん)もお楽しみしていただけたら幸いです…!

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