27-2.卓上の人生と、ほんまの人生
時刻は、すっかり夕方。
勝負は最終局面を前にして、一時休戦しとった。
矢名井さんとアイカが夕飯を買ってきてくれるらしい。
ちゃぶ台には缶チューハイとポテチ。
ワイは完全に酔っていた。
その時――
「ただいま戻りましたわ〜」
矢名井さんは、おにぎりやら飲み物やらが入った袋を両手に持っている。
そして、アイカは胸の前に袋を抱える。
「……遅くなったが、これは詫びだ」
「なんやこれ」
「中華まん……と、書いてあった」
「めっちゃ多ない?
買い占めたやろ……」
「よく分からなかったから、全部買ったぞ」
「やっぱ全部か〜い♪」
酔ってるワイ。
「肉まんまんまんどこや~♪」
手を伸ばす。
むにっ。
「……」
「……」
「……」
「お、ちょっと小ぶりやな……。
コレも実質値上げの波ってやつか〜?」
Tシャツ越しのアイカの胸やった。
「それは、中華まんではない。
我の胸部だ。」
「あ、すまん」
ミク吹く。
カコ転げる。
「おーっほっほ!
地球の“セクハラ”ですわ!」
「我は、どう反応するのが正解なのだ?」
「ビンタッス!」
「ビンタです」
「ビンタですわ!」
パァン!
「ホゲェ!」
全員、爆笑。
◇
そして、外は暗くなり、ちゃぶ台の上の“人生”は終盤に差し掛かっていた。
ワイは札束(紙)をちゃぶ台に叩きつけ、立ち上がった。
「総資産、ダントツやろこれ!」
「おじさん、強すぎッス」
「完全にギャンブルマスのお陰ですね……」
「非合理の極みですわ」
「確率的に、ここまで偏るのは異常ではないのか……」
一同、戦意喪失。
「へへっ、これが“ワイの生き方”や!」
差し掛かる最後の直線。
そして、ルーレット。
カラカラカラ――
ピタ。
「なんや、ゴールまで、あと一マスかいな。
……って、え!?」
ワイが止まったマス。
そこには、こう書かれとった。
『宇宙人襲来!侵略から地球を守れ!
ルーレットを回し、一の目が出たら、全財産没収!』
「……は?」
沈黙。
「……まあええ、一の目なんて滅多に出ぇへんし」
ザンテツは笑いながら、ルーレットを回す。
カラカラカラ――
ピタ。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……は?」
数秒遅れて、理解する。
「いや待て待て待て待て!
……そ、そんなアホな話あるかいな!」
出た目は、一。
たくさんの数字がある中で、一。
しかし、現実は変わらない。
金が消える。
もちろん、全て。
積み上げたものが、一瞬で崩れ落ちる。
「う、嘘やろ……?」
誰も何も言わない。
そして、ワイは最下位になった。
◇
「……なんやねん。これ……」
ワイはぽつりと呟いた。
「こんなん……アリなんか……?」
ミクちゃんが静かに言う。
「……これが、“人生”なのですね。
まあ、現実でも、似たようなことは起きます」
ザンテツは顔を上げる。
「……そういや、ミクちゃん」
「はい」
「前、言ってたよな。
人生の“幸福の総量”は、みんな同じになるように調整してるって」
「……はい。
各惑星の天使と悪魔は、そういう仕事を任されています」
カコが軽く手を挙げる。
「は〜い、ウチも頑張ってるッス」
「……ほな」
ワイは盤面を見る。
自分の駒。
さっきまでの頂点。
最下位のリザルト。
「今のこれも……そういうことなんか?」
ミクは、少しだけ考えてから答える。
「……このゲームにも、天使と悪魔がついているのなら、そういうことです。
でも、少なくとも、“絶対に勝ち続ける人”はいません」
「……」
「どこかで必ず、帳尻は合うようになっています」
沈黙。
ボロい扇風機の音だけが響く。
「……なるほどな」
ワイは、笑う。
さっきまでとは違う笑い。
「ようできとるわ、人の一生って」
ゆっくりと立ち上がる。
そして、言った。
「ギャンブルなんて、二度とせんわ」
カコが目を丸くする。
「え、マジッスか。
おじさんのアイデンティティッスよ?」
「大マジや」
一拍置いて。
「……賭けてもええで」
「「どっちやねん!」」
みんなのエセ関西弁のツッコミが炸裂する。
「でも……、運に任せるギャンブルは、もう終わりや」
ワイの目は、さっきまでと違っていた。
そして、ちゃぶ台に手をつき、みんなを見る。
「今度は、“勝ちに行く賭け”や」
全員、黙る。
空気が変わる。
「……ほな、作戦考えるで」
ザンテツが言う。
「ミクちゃんが言うには、宇宙検閲官は年末に来る予定なんやろ?
せやけど、今回はアイカの能力で、先に接触できる。
つまり、準備が整ってない相手を叩けるって事や!」
「……それ、昨日も同じ事言ってたッスね……」
「……あれ? そうやったっけ……?」
「……我は記憶の削除など、しておらぬぞ」
「課長、アルコールでやられてるんじゃないですか?
お水、飲んでください」
ミクちゃんがコップに水を注いでくれた。
「まあ、今のは復習や……!
ここから本番の作戦会議行くで!」
ワイはコップの水を一気に飲み干した。
「宇宙検閲官は、合理性の崩壊に敏感な存在やろ?
せやから、逆に利用したるんや」
ザンテツは言う。
「ほな、宇宙で非合理が起きたら、どないする?」
「……すぐに、何らかの対応には入ると思いますわ」
矢名井さんが答える。
「つまりや、鈴香部長に頼んで、わざと“デカい非合理”を起こす」
「……それは、危険すぎぬか?」
アイカが即座に反応する。
「せやから囮や」
「囮にする対象が、一般人なんスけど!?」
「しかしやな……」
ワイは頭を掻いた。
「“何も知らん奴の非合理”が、一番デカいノイズになるんやないかって考えたんや」
ミクちゃんは何かに気づいた様子やった。
「なるほど……。
『17.再現できへん物をどう扱うんや……』で試したみたいに、非合理を再現しようとした時点で、合理的になる。
だからこそ、鈴香部長にお願いするんですね」
「そういうことや、ミクちゃん。
てか、久しぶりにメタいセリフ言ったな!」
「つまり、鈴香部長しかできない仕事ってことッスね」
「せや、その間に、本命でぶっ叩く。
鈴香部長が危険なのは分かった。
ほなら、矢名井さんとアイカは、その防衛や」
「我はVOID亀裂を発生させるだけで、侵入はしないという事だな」
「せやな。
宇宙検閲官は、ワイとミクちゃんとカコに任せてや」
ザンテツは頷く。
「……私たちの地球は、私たちで救って見せます」
「ウチも、この惑星が大好きッス!」
ミクちゃんとカコも気合いバッチリみたいや。
「成功確率は、どのようにお考えなのでしょうか?」
矢名井さんが聞く。
「まあ、……低いわな」
即答。
「……でも、みんなも、さっき分かったやろ……?
全部、計算通りにいくなら、それはもう“人生”ちゃう」
誰も否定しない。
「だからこれは――」
一呼吸。
「人生最大の賭けや……!」
沈黙。
そして――
「……乗ったッス」
カコ。
「私も」
ミクちゃん。
「合理性は低いですが……価値はありますわね」
矢名井さん。
「……我も協力しよう」
アイカ。
全員、揃う。
「……ほな、決行は明日やな」
ザンテツが呟く。
「……この賭け、絶対に勝つで」
その言葉に、全員が頷いた。
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