27-1.会議の前って、片付けしたくなるよな
――ピピピピッ、ピピピピッ♪
「……ん」
スマホを見る。
八月十三日、日曜日。時刻は午前九時や。
世間は、お盆休み中や。
「長期休暇なんて、あっても暇なだけやろ……」
そう。ワイの会社にお盆休みなんてものは存在しないのだ。
そして、再び目を瞑り、指を折る。
「一、ワイ。
二、ミクちゃん。
三、カコ。
四、矢名井。
五、鈴香部長。
……そして、アイカ。
よし、みんなおるな」
重い瞼を開けて、起き上がろうとすると――
「さあみんな、遠慮なくどうぞッス〜」
「ここが、地球人の生活スペースなのか……。
誠に非合理な空間だ……」
「小汚い部屋ですわね。
カコさんは、よくこんな所に居候できますわね」
「私の部屋と同じ間取りなのに、圧倒的に狭く感じるんですよね、ザンテツ課長の部屋って……」
幻聴やない、玄関の方から間違いなく“アイツら”の声がする。
ワイは飛び起きて、迎撃行動に入った。
「ちょ!
お前らなんでウチにおんねん!」
襖を開けて玄関をみると、彼女らは当然のように靴を脱いで上がろうとしている。
「おじさん、おはよッス!
作戦会議のために、みんな呼んどいたッスよ〜」
「「お邪魔しま〜す!」」
「いやいや、待てや!
キャパオーバーやで!」
「そんな意地悪言わないで欲しいッス〜!
ここはウチの部屋でもあるんスから!
さぁ、みんな入っていいッスよ〜!」
「お前は勝手に居候しとるだけやろ!
って、絶対狭いっての!」
ワクワクした表情で居間に流れ込む四人衆。
ワイの迎撃行動は失敗した。
◇
六畳一間の和室。
ちゃぶ台。
昭和みたいな扇風機。
そして、部屋の雰囲気に合っていない洋風のボロボロのソファ(ワイのベッド)。
カオス過ぎるやろ……。
「……なんだか落ち着きますわね」
矢名井さんは妙に気に入っとる。
「これが、地球の独身男性の居住区画……。
ツガイを見つけられずに老齢になった者の末路……」
アイカは、部屋そのものを観測対象みたいに見回していた。
「何やねんその言い方。腹立つな」
ワイは突っ込む。
「やっぱ独身男性の居住区画はキツイッスよね〜。
作戦会議の前に、みんなで部屋の片付けでもするッス!」
カコは急に立ち上がり、仕切り始めた。
「そうしましょうか!
私、ちょっと海鮮系の匂いも気になりますし……」
「イジっとるやろ、ミクちゃん」
ワイはもうミクちゃんの性格は把握しとる。
天使のくせに、小悪魔のようにからかうその性格を。
「片付けのために時間を使うとは、なかなかに非合理で地球らしい過ごし方であるな……。
我の能力で、この部屋を“片付け”てやろう」
「おい、アイカが言うとシャレになってへんで!
片付けはワイがやっとくから、勝手にいじらんといてくれ!」
変な所漁られて、変なおもちゃが出てきたら、ガチで終わるで……。
「ほな、一時間くらい、みんなでお買い物頼むわ。
お菓子とかジュースとか、これで買ってきてくれや」
そう言って、五千円札を財布から取り出した。
しかし矢名井さんが勝手に押し入れを開け始めた。
「勝手に漁るな! ここは幼稚園か!」
「あ、矢名井さんズルいッス!
ウチもここ開けた事ないんスよ!」
「ま、待て……!
そこはアカン……!」
「な、なんですの……? コレ……」
時すでに遅し。
あんなの見つかったら、ワイ、お婿さんに行けへんで……。
「おじさん、こんな所にこんな“おもちゃ”隠してたんスか?」
「……これは、『人生ゲーム』と、書いてありますわ」
……へ?
そう、押入れから出てきたのは、古びた箱。
まさかの“子供のおもちゃ”やった。
昔、実家から持ってきて放置しとったやつや。
「……興味深い品が出てきたな。
それは、何なのだ?」
アイカが聞く。
「まあ、地球の娯楽や。
地球人の一生を、ゲーム形式で遊ぶんや」
「人生をゲームに……?」
アイカが反応する。
「興味あるッス」
「私も」
「……」
意外にも、宇宙人のみなさんは、やる気マンマンみたいや。
「……ほな、まだ時間あるし……、やってみるか?
ワイが準備しとくから、その間に、お菓子とジュース買ってきてや。
……いや、買ってきてくれたら、一回付き合ったるわ」
ワイは宇宙人の扱いに慣れてきていた。
◇
一時間後。
「なんで我が突然、無職になったのだ!?」
「おーっほっほ!
アイカ、就活失敗ですわね!」
「私なんて、東京大学に入学しましたよ!」
「アカン! 入社してすぐにトラックに轢かれたわ!」
「おじさんの人生と同じッスね……」
みんな、この後の作戦会議の事なんか忘れて、本気で楽しんどる。
「このゲーム……本当に地球人の一生を追体験できるのだな」
アイカが真顔で分析しとる。
「オモロいやろ?」
「悪くない……」
そして、来る“ギャンブルマス”。
「きたでぇぇ!!」
ワイだけ立ち上がる。
「もちろん、全額ベットや!」
「おじさん、薄給でコツコツ貯めたお金、無駄にする気ッスか!」
「これが男のロマンや!!」
そして、ルーレット。
カラカラカラ――
ピタ。
結果は、大当たり。
「よっしゃあああ!!」
「うるさいッス!」
「見たか! これが地球のギャンブル王や!」
アイカが静かに言う。
「……理解した」
「何をや?」
「お前のような地球人が、非合理に魅了される理由を。
そして、それを観測する我らすらも、巻き込んでしまう理由も」
アイカの真剣な表情の裏には、笑みが感じられた。
人生ゲーム、波乱の後半戦は、また次回のお楽しみや。
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※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!




