表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/42

20-2.キャンプで仲良し大作戦(後編)


 ガサッ……ガササッ。

 

 そして、草むらから現れたのは、


「……なんや、鹿かいな」


 普通に鹿やった。

 拍子抜けする。


「びっくりさせやがって……」


 矢名井さんは冷静に分析する。


「……普通に野生動物でしたわね。

 しかし、カコさんの能力が使えない今、熊などの強力な動物には気をつけなければなりませんわね……」


「……ああ、生身のワイとミクちゃんの刀じゃ、ちょっと辛いかもしれへんな……」


「いざという時は、私も参戦いたしますわよ」


「そういや、矢名井さんは戦闘得意なんか?」


「それは、次回以降のお楽しみにしててくださいませ」


「……また、メタいな……」


 ワイらの会話に呆れたのか、鹿は一瞬こちらを見て、森の奥へ消えた。


 ――そして残る現実。


「……カコ、どこに行ってしまったのでしょう……」


 ミクちゃんは、責任を感じとる……というよりは、本気で心配しとる顔や。


「……ミクちゃん、安心せい。

 ワイが必ず見つけたるわ」


 そして、歩き始める。

 歩く。歩く。ただ、ひたすら歩く。

 暗闇の中、頼りないスマホのライトだけで。


「……電波、入らへん」


「当然です」


「当然ですわね」


 短い会話。

 空気は重いままや。


「……」


 ミクちゃんは前だけを見て歩いとる。


 でも、分かる。

 いつもより、足が速い。


「……焦っとるな」


「焦ってません」


 即答。


「……ただ」


 一瞬だけ、言葉が止まる。


「……無駄な行動だったと思っているだけです」


「誰の、何がや」


「……」


 答えん。


 けど、分かる。

 ――自分のことも含めて、や。


 ◇


 さらに奥へ進んだ。

 同じような景色。

 同じような木。


「……アカンな」


 ワイは立ち止まる。


「引き返す方向すら分からへん」


「……はい」


 ミクちゃんも認める。


「……申し訳ありません」


 珍しく、矢名井さんが頭を下げた。


「私がもっと早く止めるべきでしたわ」


「いや、誰のせいでもない」


 ワイは首を振る。


「……いや……、ワイのせいやな」


「課長……」


「止めきれへんかった」


 それは事実や。

 あの時、もっと強く言えばよかった。


 ――その時。


 カサッ。


 さっきとは違う音。


 近い。


「……!」


 三人同時に振り向く。


「……今の……」


「……人の音ですわ」


 息を潜める。


「……カコか?」


 ワイは、少しだけ優しく声を出す。


「おい……おるんやろ」


 数秒間の沈黙。


 やがて――


「……」


 木の陰から、ゆっくりと影が動いた。


 そして現れたのは――


「……カコ」


 間違いない。


 カコや。


 でも、いつもと違う。

 顔を伏せて、こっちを見ようとせぇへん。


「……お前なぁ」


 思わず、ため息が出る。


「どんだけ探した思うとんねん……」


「……」


 カコは黙ったままや。

 拳をぎゅっと握っとる。


 やがて――


「……迷惑、かけたッス」


 小さい声。


「……ごめんッス」


 らしくない。

 ほんまに、らしくない声や。


「……でも……、ウチ、ちょっと一人になりたかっただけッス。

 そしたら、みんな追いかけてくるから……」


「……はぁ」


 ワイは頭をかく。


「無事なら、それでええわ」


「……っ」


 カコの肩が、少し揺れる。


 その瞬間――


「……やっぱり、バカね」


 冷たいミクちゃんの声。

 いつも通り、カコと話す時の調子。


「一人で飛び出して、案の定迷って」


「……」


「本当に、何も考えてないんですね」


 カコが俯く。

 空気がまた張り詰める。


 でも、ミクちゃんの声が、ほんの少しだけ震えとる。


「……どれだけ心配したと思ってるんですか」


「……え」


 カコが顔を上げる。


「課長も、矢名井さんも」


 一歩、踏み出す。


「……私も」


 一瞬、視線が揺れる。


「……心配、してたんです」


「……っ」


 それでも続ける。


「でも、無駄なことしてる暇なんて、ないんです」


「……」


「カコ一人の問題じゃないんですよ」


 いつも通りの正論や。


 でも――


「……心配、する側の気持ちも……」


 一瞬、言葉が漏れるが、すぐに口を閉じる。


「……っ」


 カコの目が揺れる。


「……なんや」


 ワイはニヤッと笑う。


「ミクちゃん、ちゃんと心配しとるやん」


「……」


 カコが小さく笑う。

 ほんの少しだけやけど。


「……ミク、相変わらずッスね」


「カコもです」


 視線がぶつかり、まだ火花が残っとるように見える。


 でも――


 さっきまでとは違う。

 完全な敵やない。


「よっしゃ!」


 ワイは手を叩く。


「全員揃ったな」


「……課長」


 ミクちゃんが言う。


「ここからどうしますか?」


「決まっとるやろ」


 周りを見ると、当然のように暗闇の森。


「今日はここで耐える」


「……はい」


「……了解ッス」


 カコも頷く。


「まったく……」


 矢名井さんがふっと笑う。


「問題児ばかりですわね、地球のチームは……」


 少しだけ、空気が軽くなった。


 ◇


 それからは、みんな協力的だった。

 まずは火を起こすための、枝を集め始める。

 さっきより、少しだけスムーズや。


「……カコ、もうちょい枝を寄せてください。

 酸素の道を作ると、燃えやすいんです」


「こうッスか?」


「そうです」


「お、ええ感じや」


 動きが、噛み合い始める。


 完全やない。

 でも、バラバラでもない。


 そして、火がつく。

 ボッ、と小さな炎。


 その光に照らされて、みんなの顔が並ぶ。


「……寒くないッス」


「……ですね」


「そらよかった」


 ワイは火を見つめる。


 この二人、仲良しとは言えへん。

 でも――


「……まあ、ええやろ」


 この距離なら、ちゃんと生き残れる。

 そんな気がした。


 ――せやけど。


 ここが安全やなんて、誰も保証してへん。


 それでも今は、この火の前で、三人が揃っとることの方が大事やった。

「面白かった!」「続きが気になる!」と思ったら、  下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品への応援をお願いいたします!(つまらなかった星一つで大丈夫です。)  


どんどん投稿しますので、ブックマークも是非ご利用ください!  


※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ