第四十六話:交わる世界の先で
二つの色が、ハヴァーヘルの街に道を作り出す。
エテルナと同じ視線、言葉。
弾かれた色は、世界に混ざることなく、日に照らされながら進む。
「サラ、大丈夫か?」
「ん?何が?」
サラは、不思議そうにファルの顔を見る。
その瞳も、唇も、手も震えてはいない。
「いや、なんでもない」
サラは、ファルの返事で少しだけ笑みを浮かべた。
その笑みは、どこを見ているのか、ファルにも分からなくなる。
「…もう、他の人なんてどうでもいいから、気にしないよ」
ファルの手を握るサラの手が、指を絡めてくる。
少しだけ迷いながら、絡められた指。
鎖を、絡めるように。
鍵を、掛けるように。
エテルナでの騒動のせいか、騎士も魔術師も、二人を警戒するのみ。
誰一人、刃は向けない。
「…なんか、二人だけ、みたいだね」
サラは蒼い瞳は、青い空を見上げた。
サラは、少しだけ、目を細めた。
絡めた指に、力が入る。
「でも、ファルはずっと一人だったんだよね…」
「…そうだな」
ファルが空を見上げると、サラの視線が石畳に向けられた。
「もっと、もっと早く…私が生まれて、出会えていたら、ファルはもっと笑ってたかな?」
「…どうだろうな。自分でも、分からない」
ファルの視線が下を向く。
サラは、その横顔を見つめ、目を伏せた。
「そっか…。そうだよね」
サラが、足を止め、ファルの手を引いた。
ファルが振り替えると、下を向いて目を伏せている。
「サラ?」
ファルの呼び掛けに、深く息を吸った。
「ねぇ…ファルの世界に、私は『いる』かな」
サラの目がゆっくり開き、蒼い瞳がファルを捉えた。
そして、サラは言葉を続ける。
「…私の世界に、ファルは『いる』よ」
ただ見つめてくる蒼い瞳。
小さな光が差し、サラを染めようとしている。
ファルは、ほんの一瞬視線を反らし、またサラの蒼い瞳を見つめた。
「当たり前だろ。過去の、誰でもない…。今の俺には、サラが『いる』んだよ」
「…うん」
ファルがサラの手を引く。
手を引かれたサラの顔には、柔らかい笑みが溢れた。
人々は、二人の会話など、どうでもいい。
ただ過ぎ去るのを静かに待ち、二人の背中を見送っていた。
「ファル…私、決めたよ」
次回、最終話




