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第四十五話:明けぬ夜の日の出
今回は短いです。
夜は、満月が海を照らし、淡い光が船室に差し込んでいた。
何をする訳でもない。
ただ、背中で、肩で、互いの重さを感じていた。
船が波を切る音。
衣の擦れる音。
たまに溢れる会話。
たまに溢れる…笑顔。
溢さないのは、涙だけ。
長い夜は、一瞬のように過ぎていく。
朝日に照らされた、世界から消えそうになる月に、サラは手を伸ばす。
その手が、小刻みに震えている。
その手を握っても、月は掴むことすらできず、溢すまでもなく、消えていく。
朝日に照らされた、確かにそこに在る小さな拳を、ファルの手が包む。
その手は、小刻みに震えている。
その手を握り返せば、解けないように、優しく、強く、絡んでいく。
日の光に照らされた手は、黒く染まり、影を作る。
夕陽とは逆に伸びる影が、ファルを隠す。
その影を払うように、サラは握り合う手を、寝台に下ろした。
「ファル…私ね……朝が、嫌いになった」
ハヴァーヘルの街は、変わることなく、船の到着を待っていた。




