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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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264.

翌朝。いつもの様に見送りに行った燐は滝と家の前で別れ、朝焼けに染まる空を見上げていた。


「暫く戻って来られねぇけど、ちゃんと約束は守るから」


昨夜、白雲斎の家から戻る前に話していた佐助との遣り取りが思い浮かんだ。

城の抜け穴。

燐の脳裏に浮かんだ不安な事柄を読んだのか、佐助はヘラリと笑って見せる。


「浮世人の恩恵……って言っても私に当て嵌まるか謎だけど」


燐は白雲斎の言葉も思い出すと小さく息を吐いた。


日が傾き、空の色が変わる。

今日も寒いなと囲炉裏に火を入れ、ご飯作ろうかなと鍋に水を張る。


「ぁ……」


そういえば暫く夜更けに帰って来ないと言っていたことを思い出すと、一人で食べるには多い鍋の中身を見る。


「無理して帰って来てくれてたのかなぁ」


分身を置いてきた。

そう言って夜更けには帰宅していた佐助を思い出し声が零れる。


「なっ、に?!」


遠くで、腹の底を叩くような音。一拍遅れて、地面が揺れる。

次の瞬間、より大きな爆音が響き、家全体が軋む。


花火大会が脳裏に思い浮かんだ燐は、それじゃないと顔を顰めた。


「燐っ、今すぐ出るよっ!」


戸が勢いよく叩かれ、切羽詰まった声で名を呼ばれた燐は急いで戸を開けると滝が飛び込んでくる。


「何呑気な顔してんだい、さっさと行くよ!」


滝の言葉に燐は用意していた風呂敷を掴むと滝に押されるように家を出た。


「良いかい?松明じゃ明るすぎて見つかるっ、暗いがしっかり着いといで」


外は闇だった。

滝は必要なことを短く告げ、山へ向かう。

燐は黙って、ただ足を動かした。足元が見えず何度も躓きそうになった。


「急がせちまって悪かったね。怪我は無いかい?」


隠れ家に辿り着くと、滝は燐に水を飲むよう告げ、入り口にしっかりと岩を被せた。


「……はー、」


水を飲み込み、自分が息を止めていたことに気づいた。

中は薄暗く、湿った空気が満ちている。


「……結構揺れるんですね」


地響きが繰り返されるたび、天井から土がぱらぱらと落ちてくる。

不安気な燐の声に滝は不慣れな者には辛いだろうと燐を見た。


「ありゃ大筒って言ってね。音は響いてもまだ遠いから安心おしよ」


大筒。確か大砲っぽいものだったかと師匠の家で見た絵が浮かぶ。


「音の方向が城の方だったが、こっちまで来ないとも限らないからね」


不安気な顔を察したのか、滝は戦場はまだ遠いと言いながらも用心のためと燐に告げ住居として過ごす空間を整える。


「いやぁ助かったよ。中で火が使えりゃ随分と過ごしやすくなるからね」


奥で焚火を起こすと、穴の中は見違えるほど暖かくなった。

煙の様子を見に外へ出ていた滝が戻り、「これなら大丈夫だ」と笑みを向ける。


「お役に立てて良かったです」


以前才蔵さんから教えてもらった知識が役立ったと燐は滝に笑みを返し鍋の湯を碗に注ぐ。


「穴ぐら暮らしにゃ勿体ないね」


味噌玉を溶いた汁と以前作った団子での夕餉。


大筒の地響きの中ぼんやり立っていただけあって、この女は肝が据わっているのだろうと滝はゆっくり汁を啜っている燐を見た。


「お浜さん達、遅いですね」


「およねは亭主が動けねぇから近場に逃げたとは思うけど」


先に食べ終えた滝は燐にここで待つよう言い残し、夕闇へ出ていった。

一人残された燐は、膝を抱え、身を小さくする。


「音もしないし……寒いし」


じっとしていても仕方ない。火を絶やさぬようにと移動し、薪に手を伸ばす。


「ヒッ」


突然肩を叩かれ、心臓が跳ね上がる。

誰もいなかった筈と燐は短い奇声を上げた。


「アタシだよ、お燐さん」


聞き覚えのある声。燐は胸元に手を当て静かに息を吐くと声の方を見た。


「あ、……お、浜さん」


「アハハそんなに驚いたかい?……長屋に火が点いた」


横に屈むお浜の言葉に燐が目を見開く。


「え?滝さんたちは?!」


「あー、お滝さんなら山降りておよねさんと一緒に行くってさ」


笑いながら隣に座ったお浜の口調が変わり、長屋が襲われたことを静かに話した。

滝の安否を問う燐に、お浜は笑みで返すと燐に薪を渡す。


「もう外は暗いし、来るとしても明日になるんじゃない?薪こっちに寄せとくかい?」


隠れ場所は他にもある。

滝と同じようなことを言いながらお浜は薪を火の側に移動させた。


「寒いなら巻いときな。少しは温けぇからさ」


肌寒くなって来た燐が腕を擦っていると、お浜が寝藁を一枚燐の肩に掛け、自分も同じように包まる。


「夜は、音、しないんですね」


時折火が爆ぜるパチという小さな音の他は何も聞こえない。

焚火の周りに薪を重ね置き始めたお浜の背を見る。


「ああ。鬼筒は暗いんじゃ撃てねぇからね」


ぐるりと薪で焚火を囲んだお浜は、じっと火を見て最後の薪を置くとパンパンと軽く手を叩き、木くずを払い落とすといつもの笑みで振り向いた。


「さ、これで明け方までは持つだろうから寝ちまおうよ」


お浜は燐にそう言うと寝藁を巻いたままころりと敷き藁に横になった。


「あーあ。戦なんざ早く終わりゃあいーのに」


燐は自分の風呂敷を枕代わりに横になる。

横向きのお浜と目が合うと燐はお浜の言葉に軽く頷き寝藁に包まった。

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