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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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258.

食事後。燐は滝に言われるまま、草履の予備や干物を風呂敷に包み一緒に家を出た。


「お燐さん、大変だったね」


途中合流したよねが燐に声をかけ、その隣の女も心配そうに燐を見ていた。


「アタシん家の隣のお浜だよ」


滝はそう言いながら皆を紹介した。よね、浜、自分、滝。長屋の並びと一緒だと燐はお浜に会釈する。


「さ。そんじゃ行こうかね」


「山道、久しぶりだわ」


滝が皆を促すと、お浜は小さく息をついて続く。燐は取り合えずその後に続いた。


「お燐さんは初めてだろ」


町外れの痩せた土地に建つ長屋群の入り口を抜け、山に向かう道。お浜の言葉に燐は頷く。


「この長屋は職人や手間請けの連中が集まる場所ってのは知ってたかい?」


作物はまばらにしか育たないため、皆質素な暮らし向きだとお浜は続けた。


「此処は黒霧が近くて子供も食いもんも育たないから今までは見向きもされずに何とか無事だったけど、今回は危ねぇんだろ?」


お浜の言葉に前を歩いていた滝が振り向き頷く。


「嫌だねぇ。…天下だなんだって迷惑な話だよ」


4人はそんな会話をしながら、洗濯場の川を通り過ぎ湯溜まりに向かう。


「山に入る前に、ちょっと休んでこうかね」


滝が声をかけると女達は頷いて草履を脱ぎ湯溜まりに足を浸けた。


「…此処は湯溜まりもあるし長く住んでるから移りたく無いねぇ」


「アタシもだよ。全部焼かれちまったら移る他無いけどさ」


足湯の会話じゃないなと思いつつ、燐は皆の会話を聞きながら未知の山を見ていた。


「今からその山に行くんだよ」


「え…けど山は危険なんじゃ」


滝の言葉に燐は絶対近付くなと佐助の言葉を思い出し滝を見た。


「女の戦を教えるって言ったろ?女は男とは違う命のかけ方で次の暮らしに備えんのさ」


山を見上げながら話す滝にお浜が続く。


「まずは足よ。戦は男共がやる。女は生き延びるために逃げる、隠れる、隠す。だろ?お燐さんは焼け出されて来たって聞いてたから、知ってるだろうけどさ」


「この辺はてんでに山に逃げて隠れんのさ。けどアタシもお浜さんも、お滝に誘われてね」


長屋に越して来て、戦の余波に逃げ惑っていた時に滝に声を掛けてもらい命拾いをしたのだとよねが言えば、お浜も同じだと頷く。


「隠れ場なんて人に教えたりしないもんなのに、お人よしだよねぇ」


「アタシだって誰もってわけじゃないさ。一緒に洗濯してたのが道に転がってんのなんて見るのは嫌ってだけ」


人に教えれば見付かるリスクが増える。それでも顔見知りが悲惨な目に遭うのを避けたいと滝は何でもないように笑った。


「さあて大事な足がふやける前に、そろそろ行くよ」


辛気臭くなりそうな空気を立ち切るような滝の声に皆、湯から足を上げ再び山道を歩き出した。


「お燐、休むかい?」


「滝さ すみ、ませっ…」


「も、休、も…あた、しゃ」


道の両側には低い樹々が生い茂り、土の露出した急な坂が続く。肩で息をする燐と、よねの様子に滝は苦笑する。


「戦で逃げる時は、こんなにゆっくりじゃ捕まるよ?」


呆れた声を出すお浜も、額の汗を拭う。その場にへたり込んだよねは、渋々立ち上がった。


「捕まったら、」


どうなるんだろうと無意識に途中まで出ていた言葉を燐が飲み込む。


敵方(てきかた)に捕まったら…身ぐるみはがされ、連れ去られんだろうね」


「そうかい?もう歳だし、殺されて終いだろ」


よねが眉を下げ悲観すれば、滝がそれを笑い飛ばす。


「お滝さん達ぁそうかもだけど、アタシ等ぁまだまだ…知らねぇ男共に乱暴取りされて死ぬんなら、さっさと婆さんになってひと突きで死ぬ方が良いね」


「なーに言ってんだよ、アタシ等だって」


色んな意味で不穏な会話が続くも、女達は意外と平然としている事に、日常なんだと燐は世界観の違いに眉を下げた。


「あ」


暫く山道を登っていると遠くに痩せた畑が見えた燐は小さく声を上げた。


「山に逃げたら、こうやって様子を見んのさ」


山歩きの不慣れな燐の様子に、お浜は燐の隣に低く屈む。習って身を屈めると、お浜は長屋まで見渡せるように、そっと草の根を左右に分ける。


「こっから先は獣も出るし、黒霧も近いから様子見んのも必ず誰かと来るんだよ」


屈む若い2人に滝は警戒対象は敵だけではないことを告げた。


山道の傾斜が増し、土の露出が目立ち始める頃、滝は獣道から草むらへ入る。


「ここの岩の隙間から少し潜るよ」


背の高い草から見える岩の前で屈んだ滝が草を左右に分け、燐に声を掛けた。


「途中狭くなるからね。手に持つか、こうすると良いよ」


先に滝が潜り、次に準備していたお浜が燐を振り向き風呂敷を口に銜える。狭く湿った岩と土の隙間は、思ったより深く続いていた。


「中、結構広いんだ」


四つん這いで開けた場所に出た燐は思わず呟き周りを見る。屈めば移動できる広さの空洞の少し先に滝とお浜が座っていた。


「なかなか良いだろ?入り口を塞いだ岩で大きい獣も入れないしね」


随分前、狩りに来た時に見つけた獣の巣穴だった場所だと滝は話す。最後によねが加わると、4人で持ち寄った品を穴の奥に隠した。

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