エピローグ
十年間前、ジンブ、鶴の館にて。
「えい! やあ! ……どうですか、姉様?」
聞いた瞬間、頭部にゴン、という衝撃を受けました。
姉様のゲンコツが炸裂します。
「いったー……」
「馬鹿者、一刀流もまともに扱えないのに二刀流をしようとするな!」
「でも、城之助兄様は出来るじゃないですか? それに一本より、二本の方が強くないですか?」
そう言うと姉様は私の頭にまたゲンコツを落としました。
「痛いです……」
「だから、お前は馬鹿なんだ。お前は人より魔力量が多いが、制御が苦手だろ。まずは一刀流を体得しろ。私が師匠になってやる」
姉様は得意げに言いました。
「姉様はすぐに殴るから嫌い。私は城之助兄様の弟子になります」
「お前は……」
またゲンコツが来ると思って、私が身構えると、
「お前たちはいつも仲が良いな」
と言いながら、城之助兄様が現れました。
「城之助!?」と言い、姉様とさっと拳を引っ込めました。
この人は城之助兄様の前では猫を被っているつもりみたいです。
でも、無駄ですよ。
姉様のことは全て城之助兄様に報告済みです。
「城之助兄様、見てください。魔陰二刀流攻法ノ一『カナイザワ』」
私は見よう見まねで覚えた城之助兄様の剣技をやります。
魔力の籠っていない拙い剣技でしたが、
「凄いな。香は将来、俺よりも強くなるな」
と言って、城之助兄様は褒めてくれます。
「そうですか。えへへ……」
「城之助、あまり香を褒めないでくれ。すぐ調子に乗るんだ」
姉様は私が褒められるとすぐに不機嫌になります。
「いいや、本当にこの子は才能がある。香、お前はどこを目指すんだ?」
「どこですか? う~~ん、そうだ! 大剣聖になりたいです!」
私の宣言に二人は驚いていました。
大剣聖、それはお爺様だけが持っている称号です。
「またお前はとんでもないことを……」
姉様は呆れていました。
でも城之助兄様は微笑んだ、気がします。
「そうか、ならまずは俺を、その次に移を越さないとな」
「えっ、姉様の方が強いんですか? 刀一本しか使えないのに」
そう言った瞬間、姉様が拳を握ったのが分かりました。
でも、城之助兄様がいるのでそれ以上は何もできないようです。
「別に刀一本の方が弱いわけじゃない。お前のお爺様だって一刀流だろ?」
「そうですけど……」
「移の剣技は美しい。全ての剣士が見本にすべきだ」
「城之助、私は香と違って、褒められても調子に乗らないぞ」
とは言いますが、姉様は頬を赤くします。
「剣術の基礎は移に学べ。二刀流のやり方は俺が教えるからな。移もあんまり香をぶつなよ」
「なっ!?」
姉様は私に「バラしたな」という視線を向けました。
そんな姉様に私はべー、と舌を出しました。
「香の悪い頭がこれ以上、悪くなったら、イノシシになってしまう」
「城之助兄様!?」
「そうだな。私も獣の妹なんて御免だ」
「姉様も酷い!」
私は怒っているのに、姉様は笑っていました。
「さて、香、お前が大剣聖になる為の稽古を始めようか。言っとくが、お前の二人の師匠は優しくないから、覚悟しろよ」
と城之助兄様が言います。
「望むところです! 私はジンブ一の大剣聖になるんですから!」
私はとても厳しく、とても優しい二人の師匠に剣技を教わりました。
いつか二人を超える日を目指して、今日も修行を続けます。
こんな日々がずっと続くと思っていました。
読んで頂き、ありがとうございます。
今回で『女剣客と機巧少女』は完結となります。
宜しければ、本伝の『カードゲーム世界王者の異世界攻略物語~モンスターを召喚できるディスクを使って、モンスターとヒロインたちが戦います~』の方もよろしくお願い致します。
「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への率直な評価とブックマークをお願い致します!




