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開国

「いやぁ、本当に驚いたね。先祖返りせずに元に戻るなんて、本当に奇跡だよ。…………なのに、なんで落ち込んでいるんだい?」


 事情を知らないドラズさんは不思議そうでした。


「もう嫌です……死にたいです……殺してください……」


 この年でシモの世話をされました。

 しかも同世代に友達に……


「まぁまぁ、香、僕は気にしていませんから」


 ディアス、笑いを堪えるのは止めてもらえませんか!?


「それにしても香ちゃん、本当に妖狐の力は感じないのかい?」


「はい、もう自分の意思で先祖返りは出来そうにありません」


「どういうことだい? 戦鬼皇と妖狐帝の力で相殺されたとでもいうのかい?」


 私は正直に「分かりません」と言いました。


 ドラズさんは考えますが、答えは出せなかったようです。

 それは私もです。


「まぁ、分からないことにいつまで止まっていられないね。とりあえず、分かったことと千代ちゃんのことからだね。どっちからにする?」


 私は「千代は無事ですか?」と聞きました。


「そっちの方が気になるんなら、案内するよ」


 ドラズさんに案内されて、千代の元へ向かいました。

 その途中で動いている機巧人たちを見かけました。


 彼らは私たちを一瞬だけ視線を向け、作業に戻ります。


「ここだよ」とドラズさんは中央の塔、その隣の建物の前で立ち止まりました。


 ドラズさんが扉の前に立つと、勝手に扉が開きます。


「やぁ、香ちゃん、目が覚めたんだね」


 中にはレンリスさんがいました。

 千代はと言うと、


「千代……?」


 透明な筒の中に入り、色々な器具が接続されています。


「修復作業中らしいよ。自己再生も出来るらしいけど、こっちの方が早いんだってよ」


「ママ、目が覚めて良かった」


 透明な筒の傍にあった音響装置のようなものから千代の声がしました。


「千代の方こそ大丈夫なんですか?」


「うん、後、二日くらいで再生が完了する。それまで待っていてくれる?」


 千代は不安そうに言います。


「待つ、ですか?」


「うん、私もママと一緒に旅へ出る」


 千代の言葉に私は驚きました。


「でも、千代がこの都市の、機巧人の中心なんですね」


 今までのやり取りで何となく分かります。


「《管理者権限》は別の機巧人に譲渡した」


「えっ!? そんな簡単に手放していいモノなんですか?」


「構わない。元々、私が一番初めに造られて機巧人だったから、今まで《管理者権限》を持っていただけ。それに私には新しい役職を作った。それが《外界探索》」


 外界探索?

 言葉からして天空都市の外に出るということですか。


「『エルバザール』は何千年も見つかることはなかった。でも、ついに文明が追いつき、私たちは発見された。外の世界を知る時が来たんだと思う」


「私と千代ちゃんで色んなことを話したんだ。で、決まったことがある。天空都市『エルバザール』の開国さ」


 レンリスさんが嬉しそうにいました。


「でも、それだと鳥人の方々は損をするんじゃないんですか?」


 本音を言えば、鳥人族は機巧人の技術を利益を独占したいはずです。


「私たちが戦争をしたいんなら、機巧人を利用するのもいいだろうね」


 レンリスさんは過激なことを言います。


「でも、戦争なんてして何になるんだい? 魔王は結局、誰かに認められたかい?」


 恐らく、魔王が死んでこの世界で悲しんでいる人はいないでしょう。

 だから、復讐戦をしようとする勢力が現れないのです。


「私たちが第二の魔王になるなんて御免だよ。だから、軍事に関わりそうな技術は機巧人の方で最重要機密にしてもらう。そんなこと、私たちは知りたくないからね。それよりも私たちがしたいのは貿易さ」


「貿易ですか?」


「そうだよ。旧魔王領の種族や南の大陸の獣人たち、それに西方連合を巻き込んだ大貿易をするのさ。ここの技術を吸収して、空の貿易経路を確立する。そうすれば、今までとは比べ物にならない位、物資や人の往来は活発になるよ」


 レンリスさんは楽しそうに語ります。

 この人は人を支配したり、とかには興味がないようです。

 貿易とは名ばかりで新しい冒険をしたいのでしょう。


「いずれは香ちゃんたちのいる東方同盟とも繋がりを持ちたいね」


「その時は私が案内しますね」


 レンリスさんは「楽しみにしている」と言いました。


「じゃあ、千代は私と一緒に来るんですか?」


「うん」と千代が言います。

 その後、不安そうに「駄目?」と付け加えました。


「駄目じゃないですよ。これからもよろしくお願いしますね」


 千代の件と『エルバザール』の今後の方針が決まったところで、


「じゃあ、今度は分かったことについて話そうかね」


 ドラズさんは少し低い声で言いました。

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