最後に残るもの
最初に異変が起きたのは、天井だった。
中枢保管区を覆う巨大な記憶媒体が、一斉に黒く染まる。無数の魔術回路が壁を這い、床を走り、広間の中央に立つ御影征司へと収束していく。
『警告。施設全域の記憶保管装置が起動しています』
「……何をするつもりだ」
玲司が銃口を向ける。
御影は答えなかった。
代わりに、右手をゆっくりと持ち上げる。
その指先から伸びた黒い回路が、首筋へ突き刺さった。
「……っ!」
御影の身体が痙攣する。
皮膚の下に黒い光が走り、背後の保管装置が生き物のように脈動した。
『生体情報と記憶保管網の接続を確認。対象の神経系が施設の演算中枢に組み込まれています』
「……自分の身体を、装置に?」
『はい。御影征司は自身を記憶保管装置の制御核にしています』
御影が顔を上げた。
その瞳は、既に人間のものではなかった。
「人間の判断には限界がある」
声が二重に響く。
「一人の経験では、選べる答えが少なすぎる。ならば、千人の経験を使えばいい」
背後の装置に、無数の映像が浮かび上がった。
戦場。
研究室。
燃える街。
誰かの最期。
「ここには、数え切れないほどの人生が保存されている」
御影は笑った。
「君たちが何を選ぼうと、既に誰かが同じ選択をしている」
次の瞬間、御影の姿が消えた。
『右前方!』
「――っ!」
玲司は咄嗟に身体を捻る。
黒い刃が頬を掠めた。
御影が、いつの間にか目の前にいた。
玲司は反射的に引き金を引く。
しかし、御影は銃声より早く身を沈めた。
魔術弾が頭上を通過する。
「遅い」
御影の拳が玲司の腹部へ突き刺さった。
「がっ……!」
身体が浮く。
背後の壁に叩きつけられ、肺から空気が押し出された。
「玲司!」
朔夜が踏み込んだ。
赤魔術、生命錬成術式。
強化された左拳が御影へ迫る。
だが、御影は今度、朔夜の拳を受け止めた。
「……なっ!」
「格闘術式、第三百七十二記録」
御影は朔夜の腕を捻り、そのまま床へ叩きつける。
床が砕けた。
「ぐっ……!」
「続いて、対魔術師近接戦闘、第八十一記録」
御影の右腕が青く発光する。
青魔術、論理構築術式。
圧縮された空気が、至近距離から朔夜を吹き飛ばした。
「朔夜!」
澪が白い障壁を展開する。
朔夜の身体を受け止めた直後、御影の銃口が澪へ向いた。
いつの間にか、その手には拳銃型デバイスが握られていた。
「射撃戦闘、第千四百六記録」
銃声。
白い障壁が、一撃で砕けた。
「きゃっ!」
澪が後退する。
玲司は床を蹴った。
「……澪から離れろ!」
青い魔術弾を三発。
御影は一発目を避け、二発目を弾き、三発目を黒い障壁で受け止めた。
そして、笑った。
「素晴らしい」
御影の背後で、数百の記憶媒体が点灯する。
「次は、どの人生を使おうか」
◇
戦いは、一方的だった。
御影は攻撃のたびに戦闘技術を切り替えた。
銃撃。
格闘。
魔術制御。
近接戦闘から長距離射撃へ、さらに防御術式へ。
その動きに、一貫した癖がない。
玲司が射撃の隙を見つけても、次の瞬間には別人の戦い方に変わっている。
「……くそっ!」
朔夜が左手を振る。
緑魔術、原生循環術式。
床から伸びた根が御影の脚を絡め取った。
しかし、御影は足元へ赤い光を集中させる。
根が内側から引き裂かれた。
「第六十二記録。森林戦における拘束解除」
「……そんな記録まであるのかよ!」
朔夜が舌打ちする。
玲司は御影の背後へ回り込んだ。
だが、引き金を引く直前。
頭の奥で、何かが弾けた。
夕暮れの教室。
隣の席。
笑っている澪。
その光景が、突然、黒く塗り潰される。
「……え?」
玲司の足が止まった。
今、何を忘れた?
誰かと話していた。
何でもない、いつもの放課後。
けれど、その相手の顔が思い出せない。
『玲司様! 精神干渉を検出!』
ノアの警告が響く。
御影がこちらを見ていた。
「戦闘経験だけではない」
御影の瞳が黒く輝く。
「君たちが共有している記憶も、ここでは私の管理対象だ」
黒い光が広間を満たした。
「……っ!」
朔夜が頭を押さえる。
澪も膝をついた。
「……何、これ……!」
玲司の視界が揺れる。
昨日の教室。
三人で歩いた帰り道。
くだらないことで笑った時間。
それらが、砂のように指の間から零れ落ちていく。
「……やめろ!」
玲司が叫ぶ。
御影は静かに首を傾げた。
「なぜだ?」
黒い魔術回路が、さらに強く輝く。
「君たちは記憶に依存しないと言った。ならば、失っても構わないはずだろう?」
その言葉と同時に。
「……おい」
朔夜の声が響いた。
玲司が振り返る。
朔夜は、こちらを見ていた。
だが、その表情がおかしかった。
「……お前」
困惑。
警戒。
そして、僅かな恐怖。
「……誰だ?」
玲司の呼吸が止まった。
「……朔夜?」
「悪い。顔は見覚えがある」
朔夜は額を押さえた。
「でも、名前が……出てこねえ」
玲司は言葉を失った。
胸の奥が冷たくなる。
まただ。
自分が《存在読込》(オーバーロード)の反動で朔夜の名前を忘れた、あの日と同じ。
今度は、朔夜が自分を忘れている。
「……朔夜、僕は」
「待て」
朔夜が左手を上げた。
その目が鋭くなる。
「今、説明するな」
「……え?」
「敵が記憶を弄ってるなら、お前の言葉を信じていいかも分からねえ」
玲司は息を呑んだ。
御影が笑う。
「賢明だ。君の目の前にいる少年は、本当に味方なのかな?」
朔夜の銃口が、僅かに揺れた。
玲司は動けなかった。
その時。
御影の右腕が変形した。
黒い刃が伸びる。
狙いは、玲司の背中。
『玲司様、後方!』
「――っ!」
振り向く。
間に合わない。
しかし、刃は届かなかった。
朔夜が割り込んでいた。
左手のデバイスから青い障壁が展開し、黒い刃を受け止める。
「ぐっ……!」
「……朔夜!」
「名前は分かんねえって言っただろ!」
朔夜が叫ぶ。
「でも、今こいつがお前を殺そうとしたのは見えた!」
青い障壁が軋む。
「だったら、止める理由は十分だ!」
朔夜は左腕を振り抜いた。
障壁が爆ぜ、御影の身体を押し戻す。
玲司は、その背中を見つめた。
覚えていなくても。
朔夜は、守ってくれた。
◇
「……オタクくん!」
澪の声が響いた。
振り返ると、彼女が玲司へ駆け寄ってくる。
その顔は青ざめていた。
「……あーし、変なの」
「……澪?」
「あいつと、いつ初めて会ったのか分かんない」
澪が朔夜を見る。
「小さい頃から一緒だったはずなのに……どこで会ったのか、何を話したのか……全部、ぐちゃぐちゃ」
声が震えていた。
「……怖いよ」
玲司は手を伸ばした。
澪は、その手を強く握った。
「でも」
彼女は涙を拭う。
「今、オタクくんがここにいるのは分かる」
「……うん」
「だから、離さない」
玲司は、その手を握り返した。
御影が二人を見つめる。
「興味深い。記憶を失っても、感情的な結びつきは残るか」
御影の背後で、黒い魔術陣が展開した。
「ならば、その感情も分解してみよう」
無数の魔術弾が生成される。
玲司は澪を庇うように前へ出た。
『玲司様。敵対象の術式出力が上昇しています』
「……ノア。何か方法は?」
『記憶保管装置との接続を断つ必要があります』
「……どうやって?」
『御影征司の身体には、施設の記憶情報を統合する中枢回路が存在します』
玲司は御影を見る。
胸部。
黒い回路が集中している。
「……あそこを撃てば」
『通常の射撃では防御されます。さらに、対象は損傷した回路を別系統へ切り替えられます』
玲司は歯を食いしばった。
ならば、すべての回路を同時に止めるしかない。
しかし、御影の周囲には無数の防御術式がある。
そのすべてを突破する方法など――。
「……いや」
玲司は顔を上げた。
ある。
一人では無理でも。
三人なら。
「……朔夜!」
「何だ!」
「……あいつの胸の回路、見える?」
朔夜は御影を睨んだ。
「見える。で?」
「……そこを壊したい」
「了解」
即答だった。
玲司は目を見開く。
「……いいの? 僕のこと、覚えてないのに」
朔夜は一瞬だけ振り返った。
「お前、さっきから変なことばっか聞くな」
「……え?」
「俺が信じるかどうかは、俺が決める」
朔夜は笑った。
「今のお前は、命懸けで誰かを守ろうとしてる。だったら十分だろ」
玲司の胸が熱くなった。
「……ありがとう」
「礼は勝ってからにしろ!」
朔夜が踏み込む。
赤魔術の光が、床を赤く染めた。
◇
御影が右手を振った。
黒い魔術弾が、雨のように降り注ぐ。
「澪!」
「分かってる!」
白魔術、神話顕現術式。
白い障壁が三人を包む。
無数の弾丸が衝突し、激しい光が散った。
「……っ、重い!」
澪の膝が沈む。
既に透花の生命維持で消耗している。
これ以上、長くは持たない。
「朔夜、頼む!」
「おう!」
朔夜が左手を振る。
青魔術、論理構築術式。
御影の周囲に、複数の解析陣が展開した。
「……見つけた!」
朔夜が叫ぶ。
「胸の回路は、背後の保管装置と繋がってる! ただし、接続点が多すぎる!」
『解析結果を共有してください』
「誰だ?」
『玲司様のデバイスに搭載されたAI、ノアです』
「……なるほど。便利な奴だな!」
『評価に感謝します』
朔夜は苦笑しながら、解析情報を送った。
玲司の視界に、無数の青い線が浮かび上がる。
御影の身体から伸びる黒い回路。
その接続点。
さらに、背後の記憶媒体へ繋がる供給経路。
『解析完了。主接続点は三箇所』
「……三つ」
『はい。ただし、敵対象の防御術式が各接続点を保護しています』
玲司は息を吸った。
「……なら、順番に壊そう」
御影が笑う。
「無駄だ」
黒い障壁が展開する。
「君たちの攻撃手順は、既に解析済みだ」
「……そうかもしれない」
玲司は銃を構えた。
「でも」
隣で、朔夜が笑った。
「今から考えることまでは、分かんねえだろ?」
朔夜が床へ手を叩きつけた。
緑魔術、原生循環術式。
床の亀裂から、無数の根が伸びる。
御影は即座に防御術式を展開した。
しかし、根は御影へ向かわなかった。
背後の記憶媒体。
そこに絡みつく。
「……何?」
御影の表情が変わった。
「本体じゃなくて、供給元を狙う!」
朔夜が叫ぶ。
根が記憶媒体の接続部を締め上げた。
黒い回路が軋む。
御影は即座に切断しようとする。
だが、その瞬間。
「……澪!」
「任せて!」
白い光が、御影の視界を覆った。
攻撃ではない。
澪の白魔術が、記憶干渉によって生じた認識の乱れを一時的に抑え込む。
御影の視界に重なっていた無数の戦闘記録が、僅かに揺らいだ。
「……っ!」
御影の動作が止まる。
『敵対象の戦闘記録切替に遅延を確認』
「……今だ!」
玲司が引き金を引く。
青い魔術弾が、御影の左肩を貫いた。
黒い回路が断裂する。
第一接続点、破壊。
「……小賢しい!」
御影が怒鳴った。
黒い魔術弾が、玲司へ殺到する。
しかし、朔夜が割り込んだ。
赤魔術。
強化した左腕で床を砕き、破片を盾にする。
魔術弾が破片へ衝突した。
爆発。
煙が広がる。
その中から、朔夜が飛び出した。
「二つ目!」
青魔術による圧縮衝撃。
御影の右側面を覆う障壁が砕ける。
玲司が撃つ。
第二接続点、破壊。
御影の身体が大きく揺れた。
「……馬鹿な」
背後の記憶媒体が次々と消灯する。
しかし、御影は倒れない。
最後の接続点。
胸部中央。
そこへ、残されたすべての魔術回路が集中していた。
『警告。敵対象、全記憶情報を中枢へ集約しています』
御影の身体が黒く染まる。
「……認めん」
声が低く響いた。
「記憶を持たない人間に、何が残る」
黒い光が広間を覆う。
「過去を失った者が、どうして自分自身でいられる!」
御影が両腕を広げた。
無数の記憶が、玲司の頭へ流れ込んでくる。
知らない人生。
知らない死。
知らない後悔。
何百人もの声が、同時に叫ぶ。
――お前は誰だ。
――何を覚えている。
――何を根拠に、自分を自分だと言える。
「……っ!」
玲司は膝をついた。
頭が割れそうだった。
朔夜の顔が、分からなくなる。
澪と過ごした日々が、遠ざかる。
透花と出会った教室さえ、曖昧になっていく。
何もかもが、黒い海へ沈んでいく。
「……僕は」
玲司は呟いた。
自分は、誰だった?
何をしてきた?
誰と笑い、誰を守ろうとした?
思い出せない。
けれど。
「……オタクくん!」
声がした。
澪だった。
彼女が、玲司の手を握っている。
「……大丈夫」
澪の声が震える。
「思い出せなくても、あーしはここにいるから」
反対側から、朔夜の声が響いた。
「おい! 立てるか!」
玲司は顔を上げた。
朔夜が、こちらへ手を伸ばしている。
その名前を、今度は玲司自身が思い出せなかった。
それでも。
その手を取っていいと、思った。
「……うん」
玲司は立ち上がった。
「……行こう」
朔夜が笑う。
「おう!」
◇
御影が、最後の魔術弾を生成した。
巨大な黒い球体。
内部には、無数の記憶情報が圧縮されている。
『高密度黒魔術反応。直撃すれば精神構造の維持は困難です』
「……分かってる」
玲司は銃を構えた。
だが、照準が揺れる。
敵の姿が、いくつにも重なって見える。
記憶干渉。
視覚情報の改竄。
玲司は、目を閉じた。
「……ノア」
『はい、玲司様』
「……今、僕が見てるものは信じられない」
『はい』
「……だから、君の記録を信じる」
『了解しました』
ノアが外部観測情報を展開する。
御影の位置。
胸部の術式核。
そして、三人の現在位置。
玲司は目を開けなかった。
「……朔夜!」
「何だ!」
「……敵の足を止めて!」
「了解!」
朔夜が踏み込む。
緑魔術、原生循環術式。
床から伸びた根が、御影の両脚を拘束した。
御影は黒い魔術で根を焼き払おうとする。
しかし、その前に。
「……まだだ!」
朔夜の左腕が赤く輝いた。
赤魔術、生命錬成術式。
強化した拳が、御影の胸部へ叩き込まれる。
鈍い衝撃音。
黒い装甲に亀裂が走った。
「……貴様!」
御影が叫ぶ。
朔夜は笑った。
「俺の名前も知らねえ奴に、負けてたまるか!」
その瞬間、澪が白い障壁を展開した。
御影の黒い魔術弾が放たれる。
白と黒が衝突する。
轟音。
障壁が砕けた。
澪の身体が後方へ吹き飛ぶ。
「……っ!」
玲司は目を開けかけた。
しかし。
「撃って!」
澪の声が響いた。
「あーしは大丈夫! だから、今!」
玲司は、引き金に指をかけた。
『敵術式核、露出』
ノアが告げる。
『射線確保。距離十二・四メートル』
玲司は息を吸った。
過去の経験は、使わない。
別世界の自分にも、頼らない。
ただ、今ここにいる仲間を信じる。
「……これが」
玲司は、静かに呟いた。
「……僕たちの選択だ!」
引き金を引いた。
青い魔術弾が、一直線に飛ぶ。
御影の胸部。
黒い装甲の亀裂。
その奥にある術式核へ、弾丸が突き刺さった。
瞬間。
世界が、白く弾けた。
◇
爆発は、音を置き去りにした。
巨大な記憶保管装置が震え、無数の魔術回路が断裂する。
黒い光が消えていく。
天井の記憶媒体が、次々と停止した。
『中枢術式核、破壊を確認』
ノアの声が響く。
『御影征司と記憶保管装置の接続が切断されました』
玲司は、ゆっくりと目を開けた。
広間の中央。
御影が膝をついていた。
胸部の黒い回路は砕け、身体を覆っていた魔術光も消えている。
「……終わったのか」
朔夜が呟く。
『敵対象の戦闘機能停止を確認』
玲司は、御影へ近づいた。
御影は顔を上げた。
その瞳は、元の人間のものへ戻っていた。
「……理解できない」
御影が呟く。
「記憶を失い、経験を奪われ、それでも君たちは戦った」
玲司は答えなかった。
御影は、震える手を見つめる。
「……君は」
その声は、ひどく弱かった。
「……何を根拠に、自分を信じる?」
玲司は、少しだけ考えた。
失った記憶は、戻っていない。
今も、朔夜との幼い頃の出来事を思い出せない。
澪と過ごした日々にも、欠けた部分がある。
そして、これからも失うかもしれない。
それでも。
「……覚えていることだけじゃない」
玲司は答えた。
「今、僕が何を選ぶかだ」
御影の目が、僅かに見開かれる。
「……そうか」
小さな声だった。
「……記録されていない選択、か」
御影は、ゆっくりと目を閉じた。
その身体が、床へ崩れ落ちる。
『御影征司、意識消失。生命反応あり』
ノアが告げた。
玲司は銃を下ろした。
戦いは、終わった。
けれど。
「……オタクくん!」
澪の声が響く。
振り返ると、彼女が透花を抱きかかえていた。
少女の顔は、青白い。
呼吸は浅く、手は冷たい。
「……透花?」
玲司が駆け寄る。
透花は、僅かに目を開けた。
「……れい、じ……?」
その声は、消え入りそうだった。
『警告。記憶保管装置の停止に伴い、透花様の生体維持補助も低下しています』
「……そんな!」
玲司は顔を上げた。
御影を倒した。
記憶保管装置も止めた。
それなのに、透花の身体はまだ崩壊しようとしている。
「……ノア、何か方法は!」
『施設の補助装置を利用できる可能性があります。ただし、記憶保存回路と生体維持回路を分離する必要があります』
玲司は、透花の手を握った。
冷たい。
けれど、確かに温もりが残っている。
「……透花」
少女が、ゆっくりと顔を上げる。
「……もう少しだけ、待ってて」
玲司は、その手を強く握った。
「……今度こそ、君の明日を守るから」
透花は、僅かに笑った。
その瞳から、一筋の涙が零れた。
戦いは終わった。
しかし、少女を救うための最後の選択は、まだ残されていた。




