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044:新たな問題


 オズヌさんから聞いた話によると、一定量以上の魔力量を持つ子供は、生まれが何であろうとも皇族となる資格があるらしいのだ。当然、マリク様なら軽々クリアしている。


 ちなみに、エリスちゃんも、恐らくその資格はクリアしているらしい。


 ただ……それでも問題があって、それは


「皇族は10歳を超えたら親子以外の男女は同じ空間で生活できないしきたり」


 がある点だ。


 マリク様はまだ7,8歳だとしても、エリスちゃんはすでに12,3歳だろうし……


 それほど遠距離ではないかもしれないが、それでも、公爵家で暮らしている時のような距離感の生活スタイルは望めない。


 教育環境としてのメリットは、皇族や宮廷魔導士の中には、声そのものに魔力を込められる『魔法使い』様も幾人かいらっしゃるらしいし、当然、魔法や魔術に関しての環境としては世界最高峰と言って良い点である。


 ……とは言え、マリク様の教育係となるであろう『魔法使い』様が、必ずしも教師に向いているか? と言われると少し疑問符が付く人もちらほらと居る、というのも不安要素だ。


 事実、あの、オズヌさんに強制的に眠らされていた中年男性は宮廷魔導士の中でも貴重な『魔法使い様』なのだとか。


 う、うーーーん……

 この恰幅の良い中年男性さん……あのマリク様と……うまく、やれるのだろうか?


「あのぉ……皇族(?)になったら、その人がマリクの先生になるだべか?」


「必ずしも教師役になるとは限らないが、可能性は……あるな」


「……多分、マリク……嫌がるんじゃねぇかなぁ……その人、ぬとぬとしてるし……」


 普段の困り眉をさらにハの字に寄せて、すやすや眠る少々お顔に皮脂が多めなお鬚の男性を見つめるエリスちゃん。


 ……エリスちゃんが大変辛辣(すなお)である。


 だが、まぁ……わたしも、こちらの魔法使い様がマリク様とうまくやれるかどうかは大いに不安だ、と言っていいだろう。


「まぁ……本来なら、皇族の養子は3歳の魔力量検査の時点で、規定量を上回った場合に打診されるのが普通だからな。その場合は、両親も『お世話係』として10歳までは一緒に生活するしなァ……」


 オズヌさん自身は、マリク様をどうしても皇族にしたい、という訳ではないようだ。


「俺はご本人の意志を尊重するぜ……と言えば恰好は良いかもしれんが、要は、これだけの魔力量を誇る相手なら、本人が嫌だと言うのを無理に止めるのは不可能……とは言わんが、割には合わんからな。」


 オズヌさんは、そこまでの労力は割きたくない、とばかりに首を振った。


 なるほど。つまりは、マリク様次第という訳か。


 わたし達の事情聴取は、そんな形で割とあっさりと幕を閉じた。


 本来なら、あの別荘に揃っていた全メンバーの事情聴取をそこで済ませたかったのかもしれないのだが、マリク様はあれから未だに目を覚ましていない。


 一応、あのオズヌさんも「急激な魔力消費による休眠状態」と言っていたし、エリスちゃんも「たぶん、半月くらいで戻ってくるべ?」との事だったので、一旦別荘から、いつもの別宅の方へ戻って来た形である。


 アークヴェル様とセレス様については、ご一緒に……とはいかなかったものの、拘束だの処罰だの廃嫡だのと言った物騒な事にはならなそうな事が確定したようだ。


「本来なら、私が全て責任を負うべきなのですが……」


 と、困惑と安堵が混じった口調で呟いていたアークヴェル様は、ちょっと背負いすぎです!

 ホントにもぅ……


 これ、わたし達が一緒に居て、事情聴取やら何やらを手伝っていなければ、きっとお母様のやらかした全責任を背負って自ら投獄を望みそうだったのよね。


 ……そうならなくて良かったわ……


 ともかく、お父様との話し合いが残っているお二人を除いたメンバーは通常の生活に、という訳だ。


「まったく! アークヴェル様が外出されるとは聞いていたけど、セレス様も、さらにはマリク様まで消えちまうとは、一体どういう事なんだい!? おまけに北宮はぶっ壊れちまうし、王都警備部の連中は、どかどか勝手に入ってくるし! そのうえ、ヤンデルーナ様が捕まったとか言われてサァ、あの執事のじーさんは泡吹いて倒れちまうし、中宮のメイド長は寝込んじまうし! 料理長のアタシと西宮のメイド長で手分けして、北宮の修繕依頼やら何やら全部手配したんだよ!?」


「パンナさん! ありがとうございます、ご迷惑をおかけしてしまって……!」


「アンタのせいじゃないのは分かってるけど、こりゃ旦那様から特別給与でも貰わないとやってられないよ、ホントに」


 向こうは向こうでバタバタだったのだが、こちらはこっちで大変だった模様。


 食堂に顔を出すと、パンナさんが溜まりに溜まった鬱憤を爆発させてくださった。

 パンナさん……ホント、ありがとうございます!! そして、お疲れ様です。


 だが、そのパンナさんの奮闘のおかげで、北宮は大工さん達がセッセと吹き飛ばされた2階部分を修繕してくれている。


 一応、あの地下の子供部屋や1階台所、お風呂、トイレなどの水回り系には被害が無かったので、一旦わたし達の生活空間はあの地下子供部屋を使わせていただいている。


「いつもここでマリクと遊んでたから、ある意味一番落ち着くべ~」


 とエリスちゃんがいつもの困り眉ながらも嬉しそうだったのが印象的だった。


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