侵入者と消された記録
警告音が鳴り響く中、地下施設の通路を祐一と紗香は急ぎ足で進んでいた。背後からは、警備システムが次々と解除されていく音が聞こえる。誰かが侵入してきたのは明らかだった。
「警備システムが解除されてる。何かが…進行中だ」
祐一は冷静に言ったが、その表情には緊張が浮かんでいた。紗香はその横で歩きながら、手に持った端末を操作していた。
「アクセスログを調べてみるけど、ほとんどが消去されてる…。この先に何かがあるのかもしれない」
ふたりは無言で足を速め、地下施設の一番奥にある研究室に辿り着いた。そこは、あの綾子博士が最後にいた場所であり、もともとセキュリティが最も厳重だった。
ドアを開けると、部屋の中は静まり返っていた。目の前には、大型のサーバーラックが並び、モニターが数台点灯している。だが、その中の一台だけが異様に赤く光っていた。
「何だ、これ?」
紗香がそのモニターに近づき、画面を覗き込んだ。そこには、綾子博士が最後に録画した映像データが表示されているはずだが、何故かそのファイルは破損しているようだった。画面の下部には「データの消去」が表示され、完全にアクセスできなくなっていた。
「消去されてる…でも、消したのは誰だ?」
祐一はモニターをじっと見つめた後、すぐに部屋の中を見渡した。すると、壁の隅にわずかな異常を発見する。
「隠し扉か…」
祐一はその場で立ち止まり、壁の一部を押した。少し重く、ひんやりとした金属の感触が手のひらに伝わる。壁がわずかに動き、隠し扉が開いた。
「ここだ…」
その先には、真っ暗な通路が続いていた。祐一と紗香は互いに顔を見合わせ、頷き合う。二人はそのまま、通路の奥へと足を進めた。
⸻
通路を抜けた先には、さらに深い地下施設が広がっていた。その中にあるのは、無数の古びたデータベースと、古代文明に関する研究が詰め込まれたファイルだった。しかし、そのすべてが密閉されたガラスケースに保管されていた。
「これは…何だ?」
紗香が一つのガラスケースに近づき、手を触れると、ケース内に眠るように保存されていた数十冊の古代文字が刻まれた巻物が目に入った。それらは、紛れもなく、失われた文明の遺産だった。
「これは…私たちが探していたものかもしれない」
祐一がしばらくその巻物を見つめた後、視線を上げて、再び暗闇に向かって歩みを進める。
「待て」
紗香が急に声を上げた。
「見て…あれ」
通路の奥から、薄く灯るライトの下に人影が現れる。それは、薄暗い中で不気味にこちらに近づいてきた。
「侵入者…!」
祐一は即座に拳を握り、身構える。紗香もその気配を感じ取ったのか、背筋をピンと伸ばした。
人影が近づいてくる。顔がはっきりと見える距離に差し掛かると、祐一と紗香の前に立っていた人物が姿を現した。
それは、警察の制服を着た男だった。顔には冷徹な表情が浮かび、目には鋭い光を宿している。
「お前は…」
祐一がその男を見つめると、男は無表情で口を開いた。
「あなた達の動きは全て監視されていた。ここに来ることも…」
男は一歩、さらに踏み出すと、胸ポケットから何かを取り出した。それは、紗香の母、綾子博士が生前に使っていたと思われる古いメモリーカードだった。
「これが…」
紗香が目を見開くと、男は冷ややかな声で続けた。
「あなたの母親が残した“すべての真実”がここにある。もう遅い、すべては終わりだ」




