罪の記録、母の声
地下施設の監視室にて、伊藤祐一は封印された映像データを再生していた。
「綾子博士の……最終メッセージか」
画面には、老朽化したラボの片隅で、一人語りを始める女性――柚山綾子博士の姿があった。
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「この記録は、私が命の限りに託す“遺言”です」
白衣をまといながらも、彼女の顔は疲れと迷いに満ちていた。
「私は、石化再生プロジェクトの主任研究員として、多くの“禁忌”に手を染めました。
石化とは、古代に封印された生命維持の手段であり、同時に“意識を凍らせる檻”でもある」
彼女は震える手で装置を示す。
「この技術は、生物兵器として悪用される可能性が高い。
だから私は、データを二つに分けた。一つは“仮の成果”、もう一つは“真の応用理論”。
後者は、私の娘――柚山紗香の血液情報と結びつけて鍵をかけました」
祐一は息をのむ。
「つまり……」
博士は続ける。
「紗香……あなたは、無垢でいて、最も強い希望。
だがそれゆえに、あなたの血は“解錠”の鍵になってしまう。
私の罪が、あなたを巻き込むことになる。……ごめんなさい」
映像の中の綾子が涙を流す。
「でも、私は願っています。
あなたが、自分の意志でこの技術をどうするか“選べる未来”を持てることを。
そのために、私はもう一人の“あなた”を残しました」
祐一は、隣に立つ紗香とYSA-02を見つめる。
二人の表情は静かだが、胸の奥で確かな熱が揺れていた。
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映像の最後、綾子博士はカメラに向かって微笑んだ。
「あなたがこの記録を見ているなら、もう私の手は届かない。
でも――どうか、未来を“奪う”のではなく、“紡いで”ください。
それが、私が娘に託す、唯一の願いです」
映像が切れ、部屋に静寂が戻る。
祐一は深く息をつき、そして呟いた。
「……彼女は、母親である前に“科学者”だった。
でも最後は、確かに“母”だったな」
紗香は目を伏せていたが、ゆっくりと顔を上げた。
「この願い、ちゃんと受け止めなきゃ。
母の過ちも、もう一人の私の存在も、全部含めて――私が答えを出す」
YSA-02も静かに頷く。
「私も……その答えの一部になりたい」
その瞬間、施設全体に警告音が鳴り響く。
誰かがセキュリティを突破し、真の研究データへのアクセスを始めたのだ。
「来たか……“次の動き”が始まるな」
祐一が背中で拳を握りしめる。




