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消された記録、始まる予兆

男が取り出したメモリーカードを握りしめたまま、祐一はその男をじっと見つめた。空気が凍りつくような静寂の中、男は不敵な笑みを浮かべながら言った。


「あなたたちの行動はすべて計算通りだ。あのメモリーカードにある情報を見た者は、もう二度と外には出られない。」


「何を言っている?」と、祐一は冷静に答えながらも、心の中では鋭い緊張感を感じていた。今、目の前の男が何者で、どんな力を持っているのかは明確ではない。しかし、ひとつだけ確かなことがある。それは、この男が危険な存在であることだ。


紗香は男の言葉に反応し、足を一歩前に出した。今は冷静さを保ちつつも、明らかに彼女の表情には怒りが込められている。


「あなたは一体、何を企んでいるの?」と紗香は声を震わせずに問いかけた。


男は冷たい目をこちらに向け、ゆっくりと答えた。


「企んでいる? いいえ、私はただ、すべての計画を完遂させるだけだ。綾子博士が残したその“記録”は、私たちの未来を決定づけるものだ。今、この時を迎えるために、すべてが動き出している。」


その言葉が放たれると同時に、彼は再び一歩踏み出し、背後の通路の奥に向けて進んだ。祐一と紗香は、予兆的な恐怖を感じつつ、その男の動きを見守るしかなかった。


「待て!」と、祐一が声を上げる。


だが男は振り返ることなく、冷徹な表情で一言だけ告げた。


「すべてが終わったわけではない。これは、始まりに過ぎない。」


そして、男はさらに奥へと消えていった。瞬間、祐一はすぐに駆け出し、紗香も続く。二人は男が消えた通路の先に向かって進むが、その途中で壁に突然、暗い影が立ち現れる。


「待て、そちらに進むな!」


その影は、男とは別の存在だった。姿が見えた瞬間、息を呑んだ。通路の奥に立つその人物は、見覚えがあるはずだ。目の前に現れたのは、あの失踪したはずの綾子博士だった。


「綾子博士…?」紗香は思わず声を上げた。


しかし、博士の表情は冷たく、何かを決心したような目をしていた。


「紗香…今、お前に伝えなければならないことがある。」博士は静かな声で言った。


「でも、どうして…?」紗香の声には驚きと疑問が混じっている。目の前にいる博士は、すでに消息不明だと考えていた人物だった。だが、どうして彼女はここにいるのか? なぜ今、突然現れたのか?


綾子博士は何も答えず、ただ通路を指し示す。


「ここには、私が隠したすべての真実がある。これを知った者は、もう後戻りできない。すべてが決してはならない方向へ進む前に…お前たちだけには、それを知ってもらわなければならない。」


その言葉に、紗香の目が見開かれる。博士がそう言うということは、この場所こそが何か重要な秘密を抱えている場所であることを意味していた。


「その真実とは?」祐一が冷静に問いかけると、綾子博士はゆっくりと口を開いた。


「この研究所で行われている実験は、ただの研究ではない。これは、過去の生物を復活させ、そしてそれを人類の支配者として復活させるための計画だ。だが、ただ復活させるだけでは足りない。復活させた存在は、人間の支配を超える力を持つ。」


その瞬間、紗香の背中に冷たいものが走った。彼女は自分の母親が携わった研究が、どれほど恐ろしいものであったかを理解しつつあった。


「復活させる存在とは、何だ?」祐一の質問が続く。


「それは…恐竜時代の最強生物だ。スピノサウルス。過去の地球で封じられたその存在を、この現代で復活させることができれば、すべてのバランスが崩れる。」綾子博士は冷静に語った。


その言葉が、二人にとって何よりも衝撃的だった。スピノサウルス…それはただの恐竜ではなく、古代の封印された存在が現代に蘇るという、恐ろしい計画だった。


「その計画を止める方法はあるのか?」祐一が強く尋ねると、綾子博士は一度目を閉じ、静かに答えた。


「それを止めるためには、すべてのデータを消さなければならない。しかし、そのデータはすでにどこかに隠されてしまった。私の命が消える前に、それを探し出さなければ…」


その時、通路の奥から再び不気味な音が聞こえ、二人は顔を見合わせた。


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