↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/88

鍵を持つ者たち

翌朝。

祐一と紗香は、少女・灯がかつて暮らしていたという養護施設「みずのえの家」を訪れていた。


古びた木造の建物。

門にはツタが絡まり、まるで時が止まったような雰囲気だった。


出迎えたのは、施設長の早瀬光一郎。

70を過ぎた穏やかな老人だが、目は鋭く、どこか祐一を警戒するような表情をしていた。


「灯ちゃんのことかい……あの子は特別だった。変な夢をよく見ていてね。話してくれたんだ。“石の花が咲く庭”で、男の人が名前を呼ぶって」


「“石の花”……?」


祐一が反応すると、紗香がそっと手帳を開いた。


「……過去の記録と一致してる。“石の花”というモチーフは、例の地下実験施設の資料にも出てきたわ。“灰の目”とともに」


施設の裏手に、古い井戸があった。


灯は、ここでよく遊んでいたという。

だが、その井戸のそばにも――“石化の破片”が落ちていた。


「……こんなもの、今まで見たこともない。誰かが最近、ここに置いたとしか思えない」


そしてもう一つ、衝撃の事実が明らかになる。

早瀬が差し出した古い入所記録には、灯ともう一人、**「柚山 紗香」**の名があった。


「……私、ここに?」


紗香の記憶にはなかった。

だが、記録上は確かに“幼い頃に一時預けられていた”とある。


早瀬は静かにうなずいた。


「ああ。君の父親――柚山誠一さんが、一度だけ君を連れてきた。

“この子の記憶を、一度ここで預けたい”って。理由は、教えてくれなかった」


その場に、重い沈黙が流れる。

祐一は、じっと紗香の表情を見つめた。


「……やっぱり、君の中には“なにか”がある。鍵になる何かが」


そのとき、早瀬が言った。


「君たちが探している真実には、どうしても解かないといけない部分がある。灯の血液に関しては、施設側でも知っていたことだ。しかし、その血液が“選ばれた者”のものだとは、思ってもいなかった」

「選ばれた者?」

「君、柚山紗香。君もまた、選ばれた者の血を引いている。」


祐一と紗香は、驚きの表情を見せ合う。


「まさか…私が?」


紗香は過去のことを思い出す。

父の顔を覚えていない。ただ一度だけ、記憶に残っているのは“どこかで見た不安げな顔”だった。


早瀬は静かに言葉を続けた。


「君が幼い頃、柚山誠一は君に“忘れさせるため”の処置を施していた。君が知ってはいけないことを、君自身が知らないように。おそらく、君の記憶を封じるための措置だった。だが、その封印が今、少しずつ解けてきている」


紗香は無意識に手を胸に当て、冷や汗をかいた。


「…記憶を封じる? それって、私が覚えてはいけない何かがあるということ?」


「君が知るべきなのは、君の血液が持つ力だ」

早瀬は慎重に言葉を選ぶように続けた。

「灯もその力を持っていた。君たちの血液は、ある特定の“力”を引き出す力を持っている。それを解放するための鍵が、君の存在にあるというわけだ」


紗香は呆然とした。


「その力って、私に何をさせるためのものなのかしら?」


「それが――石化を引き起こす実験に関わる力だ。君たちが“血液型X”を持つ者ならば、その血液は恐ろしい力を秘めている」


その言葉に、祐一は顔を強張らせた。


「つまり、灯が持つ力も、君と同じ。だとしたら、あの子が失踪したのも無関係ではない。」


紗香は混乱した頭の中で必死に考えを巡らせた。

そして、ついに口を開く。


「……灯を、私が助けられるということ?」


「その可能性は高い」

早瀬は穏やかながらも重い声で答える。


「だが、君自身がその力を完全に理解していない限り、無闇に行動することはできない。君の血液の力は、暴走すれば誰も制御できない。だから、君は、まず自分を信じることから始めるべきだ。」


紗香はしばらく黙って考えた。

そして、深い決意を胸に抱きながら、頷いた。


「わかった。私は、灯を必ず見つけてみせる。そのために、すべてを捧げる覚悟だ」


祐一はそっと紗香の肩に手を置き、静かに言った。


「君の決意を信じるよ。俺も一緒に行く。どんなことがあっても、君を支えるから」


その言葉に、紗香はほんの少しだけ、柔らかな笑顔を浮かべた。


「ありがとう、祐一さん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。