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商人貴族~僻地で始める国家改革~  作者: ふぃん
第7章 ラプラスは地獄を見た 中編  最狂王レオ
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逮捕

こうしてレオ、クーレオ、アーク、ユリアの4人は命からがらルイたちの包囲を突破した。レオの僅かな残党たちとの戦いが、依然として山の裏側で行われていたことも影響したのだろうか。ルビコン子爵家の兵士たちに見逃してもらった後は、特に危ない目にあわなかった。


「私は商人ですのでここ周辺の地理には明るいです。まもなく日が昇ります。その前にあの山まで行きましょう。」

「ああ。険しい山に入ってしまえば、まずバレないな。案内を頼む。」


馬がない中で移動できる距離には限界がある。

4人はレオ領の脱出まではできず、境界にある山に逃げ込んだ。これからは昼には身を潜め、日が沈んだ後に行動をしなければならない。


とりあえず、レオ領の境界付近にある山の一つに潜んだ。


「確かここらに、ああ、あった。」

「空き家か。」

「教会の修行僧が暮らしていたそうです。今はご覧の通り空き家になっています。」

「家というより小屋だな。だがありがたい。」

「アーク殿は記憶力がいいですね。こんな家を覚えているなんて。」

「いえいえ。さあ。入りましょう。」


修行僧や冒険者などが休憩代わりに使用していた小さな小屋を発見した。

はじめにクーレオが安全確認のため中に入り、続いてレオ、アークが中に入る。


小屋の中はここ数年は誰も使っていなかったのか、随分と埃にまみれているものの、椅子や机など最低限の設備は整っていた。


「では私は追手がいないか確認に行ってきます。」

「頼んだぞユリア。」


ユリアが出て行った後、レオたちは奥の部屋で体を休める。唯一ある寝台にレオがごろんと寝っ転がり、一息ついた。


「これからどうされるのですか?」

「ひゃひゃ。どうしようか。いっそ隣国に亡命するか。もうこの国に俺の居場所はないだろう。まあ、これからのことはこれから考えるから、とりあえず今は少し休ませてくれ。」


アークの質問にレオは目を閉じながら答えた。何も考えていないのならば、アークもこれ以上質問する意味はない。

それからしばらくは3人とも体を休めた。クーレオとアークは壁に寄りかかりながらうとうとしている。




ギイイイ


どれほどの時間が経過しただろうか。いや、眠っていたため長く感じていただけで、実はそれほど時間はたっていないかもしれない。


入り口の扉が開く音がした。


長らく使われていなかった扉だ。どんなに慎重に開けたとしても音が出る。その不気味な音で3人は目が覚めた。小さな音で目が覚めるということは、疲れていたとしても臨戦状態だったのだろう。


ユリアが帰ってきたのか。いや、そんな音ではない。何かやましいことがあるような、できればレオにはバレたくないような、そんな音。


横になって休んでいたレオは目を瞑ったまま静かに言った。彼にはすべてが分かったのだろう。


「アーク、貴様か?」


レオが何が言いたいのか分かっている。アークは答える。


「あなたの死後、ウォーデン家が許されるためにはこれしかないのです。」


そう言い終わるや否やアークの体は宙に浮いていた。横になっていたレオが目にもとまらぬ速さで起き上がり、アークの首を掴んだのだ。


「貴様ああああああああああああ!!!!!裏切りやがってええええええええええ」


両手で思いっきり首を絞められ、抵抗できないまま宙に浮かされたアークは呼吸ができない。間近で見たレオの目は真っ赤に充血し、怒りに燃えていた。


「殺す。殺す殺す殺す殺すお前をこの手で殺してやる!!」


レオの声に反応して、バタバタと足音がこの部屋に向かってくる。


「陛下!窓から逃げましょう。早くう!」


一足遅れて状況を理解したクーレオが窓をたたき割った瞬間、部屋の扉が蹴破られた。先頭にユリアとユナ、それに続いてウルトとハルが突入してきた。


「おらああ」


クーレオが大斧を投げた。

狭い部屋だったため、このひと振りで突入してきた四人の動きが止められた。


「陛下!行きましょう!!」


ユリアたちの動きが止まった一瞬の隙をついて、クーレオはレオをアークから引っぺがした。何とか解放されたアークは激しく咳き込みながら必死に呼吸をする。


「窓から逃げ、、ぐああっ」


レオを先に逃がそうと窓に近づいたクーレオの額に短剣が刺さる。おそらく即死だろう。正確に短剣を投げ刺すこの技術。ライカだ。


「くそっ」


レオは諦めずに窓から飛び出す。


「出たぞ!生け捕れ!足を狙え。」


外でテュールの声が響き、少し遅れてレオの叫び声が聞こえた。


「レオ確保おおお!」

「やったか。」


外から報告を聞き、安心したアークは再び咳き込む。


「アーク様!ご無事ですか!?」


ユリアが近寄ってきた。

大丈夫と言いたいが咳が止まらない。めまいがして目もチカチカする。あと数秒首を絞められていたら間違いなく気を失っていた。


外にいたテュールが上機嫌で入ってきた。そして、咳き込んでいるアークの背中をバンバンと叩く。


「でかした!レオを捕らえたぞ。お前の手紙のおかげだ。」

「ゴホッ、、うまくいって良かった。」


咳がひどいだけではなく、ここ数日の緊張から解放されて眩暈も収まらないアークはユリアに抱きかかえられながら小屋を出た。



アークは東辺境伯との戦いが長引き、レオが次第に劣勢になってきた時からこの展開を描いてきた。東辺境伯に敗れたレオは自領にまで敗走する。だがルイなど諸侯の決起によって味方は次々と討ちとられ、僅かな兵士たちと共に領地の脱出を目指す。そこを待ち構えていたウォーデン軍にユリアが合図を送り、諸侯より先に見つけて捕らえる。


多少の計画のズレはあった。特にレオが山で覚悟を決めた時はかなり焦った。アークの直感だが、レオは騎士のような潔い死を選ぶのではなく、這いずり回ってでも生き延びるような人間だと思っていたからだ。何とか説得に成功したが、あのままレオが死のうとしていたら、アークはどうすればよかったのか。


だが、そんなことはもはやどうでもいいことであった。

レオは無事に捕らえられたのだ。


「よし、他の貴族たちに見つかる前に帰るぞ。」


テュールが意気揚々と宣言し、約百名のウォーデン兵士たちは山から撤退した。

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