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商人貴族~僻地で始める国家改革~  作者: ふぃん
第7章 ラプラスは地獄を見た 中編  最狂王レオ
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レオの領地に隣接している、とある貴族領の村にて。


村に駐屯しているとある貴族の兵団は不審な親子を見つけた。


「私は戦争に巻き込まれるのを避けるために子供と逃げてきたんです。」

「まあ待て。レオの領地から怪しげな二人がやってきたら誰だって疑うだろう。お前たちの身元が判明するまで、しばらく拘留させてもらう。」

「そ、そんな、、、」

「ん?何か困ることでもあるのか?」

「いえ、そうではないですが。」

「今、町の方に連絡を送っているところだ。数日たてば騎士様が来られるだろう。」


レオ領の混乱を逃れて他の領地に移動する住民は少なくはない。レオに対するルイや貴族の恨みは相当なもので、レオの住民は何をされるか分かったものではないからだ。


戦争によって減少した人口を回復させるために、基本的にこのような避難民は見逃しているが、この親子は少し違和感があった。馬を持つことができ、馬に乗れることができる人間というのは良家の出身者ではないか。それに雰囲気も高貴さが隠しきれていない。


もしかするとレオの関係者かもしれない。兵士たちは揺さぶりをかけることにした。


「ああ。実はな。レオ、レオの息子のレオーネ、侍従長のヴェリテ。この3人がまだ見つかっていないそうなんだ。」


母親はぼーっとした顔をしているが、子供の方がピクリと反応する。まだ幼いから何が何だかわからないのだろう。母親と違って演技ができていない。少し子供に揺さぶりをかけてみる。


「ルイ様や貴族様はレオが先に2人を逃がし、後で落ち合うだろうと考えている。逆に言えば、ヴェリテとレオーネの二人を捕らえられれば、レオの居場所も吐かせられるということだ。どうやって吐かせるか。情報を出すまで子供の爪を一枚一枚剥ぎ取り、喉がつぶれて泣き喚くことすらできなくなるまでやる。だが、もし自分から話してくれるのなら身の安全は保障しよう。」


子供が見るからに動揺を始めた。拷問の話に怯えてガタガタと震えはじめ、今にも泣きだしそうに顔をゆがめている。「身の安全の保障」という兵士の口先だけの、何の保証もない言葉に希望を求め、どうすればいいかわからないというように母親の方を見つめた。


兵士たちは確信した。この二人はレオの息子のレオーネと侍従長のヴェリテだ。

一斉に剣を抜く。


「お前。子供を一人抱きながら体幹が全くぶれずに馬を乗りこなし、目の奥には全く怯えの色が見えない。それに母子と言っているが二人の顔は似ていないな。お前たちを逮捕する。」


ヴェリテは兵士たちから目を離さずにレオーネに静かに語り掛ける。


「レオーネ様、『小鳥の歌』を覚えていますか?今から目を閉じて、耳も塞いで、『小鳥の歌』を歌いましょう。歌を歌い終わるまで目を開けてはなりません。」

「う、うん。小さな青いことりちゃん、、」

「そうそうお上手です。」


~~~~~~~~~~~~~~^^


一方、アークたちはレオを王都に移送中だった。


両手を縛られているレオにとって揺れる馬の上で手を使えないのはかなり不安定なはずだが、まったくそんなそぶりを見せず、足だけで乗りこなしているのはさすがである。


「おい、アーク。」

「、、、」

「アーク。」

「どうされました?レオ様。」


アークがレオの隣に駒を並べる。

先ほどアークの裏切りに対してあんなに激怒していたのに、もうケロッとしているのはレオらしい。


「お前に一つだけ頼みがあるんだが聞いてくれないか。」

「内容によります。」

「俺の侍従長にヴェリテという女がいる。ヴェリテは俺の息子を抱えて脱出しているのだが、彼女を保護してくれ。」

「侍従長ヴェリテ、、、失礼ですが愛人か何かですか?」

「ひゃひゃひゃ。愛人なんかよりもっと深い仲になった。ここで死なせるのはあまりにも惜しい人材だ。今なら俺の息子も付いてくるぞ。どうだ?」

「はあ。探すだけ探しましょう。この騒乱が落ち着いたらね。ただ、王国は広いので果たして見つけられるかどうか。」


正直言って探す気はない。

もはやレオとの関係は百害あって一利なしである。どうしてこれ以上レオと親密な関係を築かなければならないのか。


「いや、ヴェリテはすぐ隣の領地に潜伏しているだろう。あいつとは俺の子供の頃からの専属の侍従だった。あいつの性格、癖、考えていることは手に取るようにわかる。」

「すぐ隣ですか。私も先ほど知った情報なのですが、レオ様の領地だけでなく、近隣の領地でも貴族たちの兵士が捜索を行っているそうですよ。何しろレオ様が発見されていませんから。」


レオどころか、彼の息子まで姿をくらませているため、今ルイは血眼になって探しているだろう。レオの領民が匿っているという噂を信じて住民たちを拷問しているという話もある。ネズミ一匹見逃さない捜索態勢では、ヴェリテとレオの子供は捕まるのも時間の問題だろう。


「あまり言いたくありませんが二人とも既に、、、」

「ひゃひゃひゃ。ヴェリテはそんな女じゃねえよ。騙されたと思って捜索隊を派遣してみ?俺が手紙書いてやるから。」


レオがあんまり熱心に勧めてくるものだから、アークも興味を持ち始めた。


レオは彼が興味を持った人間だけ名前を覚えている。レオポルドによると今まで彼が名前を覚えていたという人物は5人いるそうだ。

大宰相ルーベル、妹のカサブランカ、将軍レオポルド、アーク、そして侍従長ヴェリテ。

彼が名前を覚える人間は高い能力を持っている。ならば、ヴェリテも只者ではないのかも。


それにアークにとってはヴェリテ以上にレオの息子が欲しい。皇族カードである。

既にアークはカサブランカと緊密な関係を築いているが、恩を売る皇族が増えて困るものではない。レオの息子ということでこれからのラプラス王国においては影響力は全くないだろうが、思わぬところで役に立つかもしれない。


「分かりました。何人か冒険者を派遣して探してみます。」

ウォーデン家自身はやりたくない。貴族にレオの息子と侍従長を探しているなんてバレてしまったら、どんな誤解を受けるかわからないからだ。なので、付近に人探し専門の冒険者を派遣することにしよう。もちろん「そこら辺の金持ちが妻と息子を探している」みたいに誤魔化して。


アークの返答を受けたレオは満足そうに頷いた。


~~~~~~~~~~~~~~



「なっなんだこれは、、、」

「レオーネとヴェリテらしき人物を発見」という報告を受けて飛んできた騎士たちは茫然としていた。昨日まで村だったそこは廃墟となっており、兵士たちが倒れている。まるで軍隊の襲撃を受けたかのようだ。


「騎士様!こちらの兵士がまだ息がありますぜ。」


まだかすかに息をしている兵士が一人見つかった。


「騎士様、、、」

「何があった。」

「レオの侍従長です。たった一人にやられました。申し訳ございません。レオの息子ともども逃げられました、、」

「馬鹿な、、、」


騎士は茫然とした。

まさかそんなことがあるのか。いや、あのレオの侍従長であった女だ。たった一人で一部隊を壊滅させることなど造作もないことなのかもしれない。


とにかく、生き残った兵士の証言を信用するならば、兵士たちが壊滅させられて逃げられてしまったということだ。これは非常にまずい。領主の面目が丸つぶれだ。この地域の責任者である騎士自身にも悪影響が及ぶのは必須。


騎士の決断は早かった。


「村を封鎖しろ。隠蔽だ。」

「騎士様?」

「取り逃がしたとなると領主様の権威が失墜する。レオの息子と侍従長は我が領地に何か来なかった。」

「はっはい。」


この騎士にとっても、またヴェリテたちにとっても幸いなことに、ヴェリテたちが村に来たことはこの騎士しか知らなかった。他の騎士や軍に応援の要請などせずに単独で手柄を独り占めしようとしたからだ。


この村には火が放たれて塵と化し、火事により兵士たちが命を落としたことにされた。



この時、すでにヴェリテは領地の外れにいた。

ヴェリテは右手にレオーネを抱え、左手に手綱を持ち、全力で駆けてきたのだ。


「まさか、他の領地でも捜索が行われていたなんて。やっぱり近場はダメね。久しぶりだったけど、体は鈍っていなかったわ。でも私も歳ね。息があがってしまった。」


ヴェリテはもう三十路である。

レオの侍従長として肉体の維持には努めていたが、それでも年々の体の衰えは顕著であった。今回もほんの数十回剣を振り回しただけで息があがってしまった。若い頃は一日中戦っていても顔色一つ変えなかったものだ。


「レオーネ様、ここまでくればひとまず大丈夫でしょう。少し休憩しますよ。」


静かな小川が流れている。

二人はここで休憩することにした。


「ヴェリテ。血まみれだよ。拭いてあげる。」

「レオーネ様。ありがとうございます。」


ヴェリテは小川の水面に映る自分の顔を見る。何十人もの返り血で赤く染まっており、真っ赤なお面の中に黒い目が張り付いてギョロギョロと動いている。


これではレオーネも怯えてしまうと慌てて顔を洗った。


「ねえ。ヴェリテはそばにいてくれるよね?父上のようにどこかへ行かないよね。」

「ええ。私はレオーネ様の側におりますよ。」


よく見るとレオーネにも大量の返り血が付いている。誰かを守りながら戦うのは予想以上に大変でレオーネにも危ない目にあわせてしまった。だが、この子供はヴェリテの言いつけをしっかりと守り、目を開けず、耳を塞いで一生懸命に歌を歌っていた。


まだ子供だからよく分からないのだろう。それでいい。余計なトラウマなど植えつけたくない。父親とは違い、慈しみと優しさを持っているこの子供をまっすぐに育てていきたいのだ。守らなければならない。この子を。


「レオーネ様。よく聞いてください。私は貴方に忠誠を誓います。だから心配しないで。必ず貴方を守ります。」


跪いて忠誠を誓ったヴェリテに対し、文言が分かっていないレオーネはきょとんとしたままだった。



おかげさまで100話に到達しました!

いつも見に来てくれる皆様のおかげです。

今後も続いていきますので、是非見に来てください。


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