~レオ軍の強さに関する報告~
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アーク=ウォーデンから
テュール=ウォーデンにあてて
拝啓
テュール兄さん。
お元気ですか?
ミカンダを出て会談に向かってから連絡をしなくてごめんなさい。
私はあれからレオ陛下に従い、各地で反乱を起こした貴族との戦いに奔走しています。何とか目立たないようにしているのですが、人数が少ないレオ軍において兵站や補給を担当しているのでどうしても目立ってしまいます。
きっと王国各地の貴族からはウォーデン家がレオ陣営に入ったと思われているでしょう。実際その通りですから。レオ陛下の輝きが続く限り、私たちは人々の恨みを買い続け、レオ陛下が没落したとたん、貴族たちは私たちに一斉に牙を剥きます。
私の交渉の至らなさでウォーデン家を王位継承戦争の最前線に引っ張り出してしまったこと、本当に申し訳なく思っています。
来たるべき時のため、ミカンダでの軍事増強を図らなくてはなりません。
レオ軍の強さは圧倒的です。
ゼロルド前王の50万の大軍を打ち破ったのはもちろんご存知でしょうが、今も数万の貴族の軍隊を2000人の兵士たちで次々と破っています。昨日はテネシー伯爵が率いる南部の貴族の連合軍を半日で敗走させていました。
私は今回、レオ軍の後ろから彼らの強さの秘訣を見ていました。すると、いくつか気づくことがありましたので報告させていただきます。
もちろん、ミカンダにおいて軍事はテュール兄さんにすべてお任せしています。だからこの報告を読んでどうするかは兄さんの自由です。
①常備軍
この発想は正直ありませんでした。私を含めて貴族たちは傭兵や農民兵を使います。
確かに傭兵は維持費がかからないという利点があります。しかし、所詮雇われの身である彼らは戦意が低く、すぐに逃亡して領内を荒らしまわることもあります。
農民兵はもっと悲惨です。彼らは戦い方も知らず、臆病ですぐに逃げ出します。また、農民を徴兵するため、領地の穀物生産にも悪影響を及ぼします。
しかし、レオの兵士は違います。
どうやら、彼らは皆少年の頃から共同生活を送りながら、軍事訓練を受け続けているようです。もともと隣国に対する防衛の司令官だったレオ陛下だからできたことでしょうが。そのため、彼らの一人ひとりの能力は極めて高く、農民兵や傭兵では全く相手になりません。また仲間意識やレオ陛下に対する忠誠心も強く、どんなに人数差がある相手に対しても、戦意が全く衰えません。
戦いのプロと言えば軍人や騎士が挙げられるでしょうか。軍人は司令官、騎士は貴族のボディーガードといった役割で固定されています。しかし、レオ軍はその一兵卒に至るまで軍人や騎士と同等の能力を持っているとみてよいでしょう。
想像してみてください。兄さんの腹心のハル。彼女は軍人学校を出たと聞きましたが。2000人の兵士すべてが彼女と同等の能力を持っていると。農民兵を率いる貴族が歯が立たないのは必然でしょう。
②機動力
彼らは圧倒的なスピードを持っています。敵の準備が整わない間に攻撃を開始し、あっという間に陣営を崩す。このような作戦がなぜ可能か。答えは簡単です。彼らはすべて馬に乗れます。
一般的に馬に乗れる人間は少数派です。私たち商人の他、貴族、軍人、一部の冒険者くらいでしょうか。その中で馬に乗りながら戦える人間はほとんどいません。
しかし彼らは馬から矢を放ち、馬から剣や槍を使って敵を翻弄させます。①とも重なりますが、毎日訓練しているからでしょう。少なくとも戦いの時だけ徴兵される兵士には決してできない芸当です。
③指揮系統
彼らの指揮系統ははっきりしています。そもそも彼らには3段階しか階級がありません。一般兵、2名の幹部、そして指揮官。多くの司令官がいる貴族たちの軍勢と全く異なる点です。
幹部は子供のようなレオポルド(弓使い)とクマのようなクーレオ(斧使い)しかいません。その彼らもほとんど口を挟まず、基本的には指揮官たるレオ陛下がすべてを決めます。
彼らのように指揮系統がはっきりしていれば戦場で混乱することもないでしょう。レオ軍の兵士が少ないのはこのようなことが理由にあるのかもしれません。
以上です。
繰り返しになりますが、軍事はあくまで兄さんの領分。私の手紙を参考にするかしないかは兄さん次第です。
また報告があればユナを通じて届けさせます。
イアンナ姉さんとミネルヴァにもよろしくお伝えください。
私とユリアはしばらくミカンダに戻れないでしょう。
それでは。
敬具
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アークへ
会談の後、ミカンダに帰って来ずにそのままレオ陛下の下で動き始めたから心配していた。だが、こうして便りをもらうことができたので今はひとまず安心している。
ちなみにアークからの手紙はミネルヴァが肌身離さず持っているので俺はあまり読むことができなかった。ミネルヴァはお前と定期的に手紙のやり取りをしたいと駄々をこねていたが、ユナを始めとした教団員に大きな負担を強いることになるのでやめさせた。
まあお前のことだからレオ陛下の元でもきっと大丈夫だろう。
ウォーデン家への弊害に関しては心配しないでくれ。
確かにウォーデン家がレオ陣営へと入ったことが原因で、貴族たちによって商会の商人たちが嫌がらせを受けたこともあったそうだ。しかし、いまや商人ギルドはウォーデン商会が支配しているようなもの。我々に嫌がらせをしても不利益しかないと悟ってからは何の被害も出ていない。
カサブランカ殿下は依然としてミカンダにとどまっている。よほど居心地がいいのだろうか。出て行くつもりは当分ないそうだ。我々としても皇族が一人いるだけで外交的にも政治的にも助かっている。
内政はイアンナ姉さんとミネルヴァを中心に行っている。お前のおかげでミカンダはいつも通りの平和な時が過ぎている。
手紙の内容はとても勉強になる物だった。
①常備軍
これは一考の余地がある。
俺も末端の兵士は農民や傭兵の仕事だと固定された考えを持っていた。
ちょうど軍事学校ができたばかりだ。一兵卒に至るまで戦いのプロで構成された精鋭部隊を創るのも面白いかもしれない。
②機動力
これも非常に魅力的な考えだ。だが、馬を大量に育て、馬に乗れて戦える人材を大量に育てるには膨大な時間がかかってしまう。軍人学校に騎馬科を設立することを検討しよう。
③指揮系統
我々はそもそも軍隊がほとんどないので、これはそういうのが整った後に考えたいと思う。
アーク。お前もウォーデン家領主として最善の方法を常に模索しろ。そして今置かれた状況で全力を出せ。ミカンダは心配ない。
テュールより
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