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商人貴族~僻地で始める国家改革~  作者: ふぃん
第7章 ラプラスは地獄を見た 中編  最狂王レオ
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逃避行

「フラン。どうしてこんなに慌ただしく王都から出るの?」


第3隊士のリリィは他の隊士から後れを取った分、大急ぎで荷造りをしながら、同時に第1隊士のフランに疑問をぶつけた。


「カサブランカ・セブン」と世間では言われているように、カサブランカ親衛隊は七人いる。その中で第1隊士のフランは別格だ。カサブランカの側近中の側近。5歳の頃に地方の男爵家から使用人兼同年代の友人として派遣されていたので人生の大半は二人一緒に居るのだ。また、皇族に派遣されるだけあって、非常に頭が切れて度量も大きい。そのためカサブランカの相談役でもあり、今回のような急な決断や大きな決断の背後には必ずフランがいるのだ。


「私と殿下で勝手に決めてごめんなさいね。これ以上都にいるのはあまりにも危険だからよ。」


フランは手を止めて教えてくれた。


「レオ様がいなくなった都が反乱勢力に攻められたらまず持たない。市民の暴動すら鎮圧できるかわからない。今日から都で殿下の身の安全を確保できないの。」


確かに従来は王直属の近衛兵が王都を警備していたのだが、近衛兵は前王ゼロルドの大敗で壊滅した。ゼロルドと運命を共にしたのか、それともレオを恐れて都に戻ってこないのかわからない。ともかく今は散り散りになっているのだ。


それからはレオの兵士たちが都の治安維持の仕事をしていたのだが、彼らは今日、都を出発してしまった。要するに今の都は警察がいないのだ。


「それにマリー殿下が都を脱出したことも大きい。これまでは、レオ様がカサブランカ殿下とマリー殿下を幽閉していたと思われていた。そんな中でマリー殿下が脱出したのにカサブランカ殿下が都に残っているままだったら、、」

「ルイ、マリー殿下vsレオ、カサブランカ殿下だと思われても仕方がないってことね。」


リリィは納得した。

確かにマリーとルイがレオに対して反乱を起こしたのに、カサブランカが王宮にとどまっているという状況は非常にまずい。カサブランカはレオ側だと思われても弁明のしようがない。


「その通り。カサブランカ殿下がレオ様と手を結んでいると思われるわけにはいかない。レオ様の残虐な性格ではすぐに限界が来る。なるべくレオ様に目を付けられないように、離れないといけないの。」

「まるでレオ様は疫病神ね。」

「疫病神なんて生ぬるい。あのお方は時限爆弾よ。」


フランは苦笑しながら言った。


カサブランカと親衛隊一行はレオの出兵直後で慌ただしくなっている城門を素知らぬ顔で突破した。

城門を突破するときはさすがのカサブランカも緊張した。おそらくレオはカサブランカの都脱出を許さないだろう。普段から彼女は軟禁状態同然の生活だったのだから。きっと、城門のレオの兵士も彼女の脱出を防止するように命令を受けているはずだった。


しかし、心配も杞憂に終わった。軍服を着ている兵士が、レオの軍勢に遅刻したように慌てて馬を走らせて来たら門もあっさりと開いたのだ。


こうして無事に王都を脱出したカサブランカ一行は、近くの森に身を潜めて行くあてを探した。レオの出兵が唐突に決まったのだから、カサブランカの脱出も当然に突然のことだ。脱出してからどこに行こうかなんて決めてない。


フランとカサブランカは切り株に腰を下ろして話し合った。


「殿下、都を脱出したはいいけれど行くあてはどうしましょう。」

「行くあてがあったら、弟のルイスのように兄が都にやってくる前に逃げ出しているわ。」

「どなたか親しい貴族とか、関わりがあった貴族とか、、」

「う~ん」

「あの伯爵家は、、ああだめだ婚約を断ったんだった。あの子爵家は、、、だめだバカ息子を蹴っ飛ばしたんだったわ。あの男爵家は、、、だめだ抗議に来た使者を丸刈りにして追い返したんだった。」

「殿下と仲がいい貴族はなかなかいませんね。」


カサブランカと貴族の不仲エピソードが次々と出てくることにフランは苦笑した。


ルイとマリーの反乱の知らせがレオに届いたのはカサブランカの昼食時。それからレオが兵を集め出発し、カサブランカが隙を見て脱出した。これがわずか一日で起こったのだ。時刻はすでに夕方になり、日も沈んでいく。親衛隊とはいえ女だけでこのまま夜を迎えるのは少し不安がある。



そんな時、王都周囲を探索に出ていた隊員たちが帰ってきた。

彼女らは何も手掛かりが得られずに首を振ったが、唯一第7隊士のハンナが貴族の配下らしき集団を見つけたらしい。


「殿下。北西にしばらく行った道に紋章を出している馬車がありました。」

「どこの貴族かわかる?」

「えーっと。フランさん。こんな紋章だったんですが。」


ハンナは木の枝で地面に文様を描いた。太陽が沈みかけており、周囲が暗くなっているので、フランは地面に顔を近づけていたが、文様が完成するなり即答した。


「これはウォーデン男爵家ね。殿下もお会いになっていますよ。ハバロフ召集の晩餐会で。おそらく王都から地元に帰ってる途中だと思います。ウォーデン家は他の貴族とは異なり、まだ邸宅に人員が常駐していましたが、この前の大火事で邸宅が焼けてしまったはずです。」

「相変わらず何でも知ってんなーフランは」


第2隊士のジャンヌが感嘆するような、でも同時に呆れるような声で呟いた。


フランはカサブランカの側近として必要なすべての能力を教育されてきた。諸外国使節の謁見の際は通訳だってしていたのだ。貴族の紋章とその活動を覚えていることくらい朝飯前だ。


「確かアーク=ウォーデン、、」


フランの言葉でカサブランカも思い出した。ハバロフ召集の時に会った若者だ。妹のマリーを惚れさせるだけ惚れさせて、さっさと地元に帰って行ったのは姉から見てどうなのかと思うが、他の貴族とは違って伝統が浅い商人出身の貴族ということもあって、話もよく合った気がする。


最悪の中の最良と言ってもいいだろう。

大嫌いな貴族を頼るしかないが、貴族の中では一番マシなウォーデン男爵がこんな近くにいるのだ。カサブランカの決断は早かった。


「ハンナ!その馬車のところへ案内して!みんなも急ぐわよ。絶対に逃がしちゃダメ。」


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