鎮圧(3)
「昨日の脱走者は50名です。」
「そうか、、」
ランドルは憂鬱な顔で毎朝の報告を受ける。
テュールから反乱軍に直接説得があった日以降、反乱軍からの脱走者がみるみる増えて行った。脱走者が多いと思ったら見張り担当まで逃げていたなんて言う日もあった。脱走者は食料の不足と共にどんどん増えて行き、今では一日数十人にまでのぼった。
「これで脱走者は1000名を越えました。」
「分かった。」
「リーダーはどうするつもりですか?」
部下は心配になってしつこく尋ねる。
「心配するな。俺だって手を打っている。もう少しの辛抱だ。」
「脱走者は日に日に増えて行くばかり。なるべく早く手を打たないと取り返しのつかないことになります。」
「分かってる。分かってるから、、下がってくれ。」
「失礼します。」
追い詰められているランドルの声を聞いて部下は渋々下がった。しかし、全く納得はできていないだろう。彼ももうすぐ脱走するかもしれない。
そこへ特命を任せていた仲間が帰ってきた。彼こそがランドルの最後の頼みの綱である。
「ランドル。いいニュースと悪いニュースがある。」
「悪いニュースから教えてくれ。」
「東門を守っていた部隊が鎮圧軍に降伏した。」
「そんな馬鹿な!いつだ?」
予想外のニュースにランドルは思わず立ち上がった。立ち上がる体力なんてあまり残っていなかったのに。ある程度の脱走者が出ることは仕方がないことだったが、まさか部隊が丸ごと脱走するなんて思ってもみなかった。
「たった今だ。様子がおかしいことに気づいて近づいてみたら勝手に門を開けて逃げていった。もう追っても遅い。」
ランドルはへなへなと座り込んだ。
部隊ごと脱走。俺たちはそこまで追い詰められていたのか。包囲前は1万人以上いた反乱軍もこれで6千人に減ってしまった。
「味方の士気にかかわる。他の皆には内緒にしておこう。」
「うわさですでに広がり始めている。動けるものはもう逃げてるさ。」
仲間は自虐気味に笑った。確かに、まだ脱走していない者は体力がなくなって動けないものくらいだ。
「いいニュースは?」
「敵の食料庫の場所が分かった。」
「分かったか!」
その報告にランドルは久しぶりの笑顔を見せる。今まで悪いニュースばかりだったが、何とか首の皮一枚つながった。
「ああ。探しに行った奴はほとんど帰ってこなかったが、たった一人馬鹿正直な奴が帰ってきてくれてわかったぞ。南門からかすかに見えるところにある丘の上だ。」
ランドルはずっと敵の食料庫の場所を探させていた。食事は1日数回、毎日取るものである。そのため、食料庫は本陣近くでかつ敵にバレにくいところにあることが多い。逆に言えば、その様な特徴がある地点は高確率で食料庫になっている。
ランドルは動ける部下たちを何十人と外に解き放ち、内密に食料庫の調査を行わせていた。
もちろん、ほとんどは失敗に終わる。敵に見つかったり、外に出られたからこれ幸いと逃げ出したりするからだ。しかし、今回は一人だけ戻ってきた。これは大成功だと言っていいだろう。
「よし、そこの食料を奪いに行って逆転してやる。」
ランドルは一筋見えた希望の光を何とか掴もうと強く言った。




