討伐軍:テュールら(8) 敗走
鎮圧軍が敗れ、大将であるルノーが討ち取られたのはテュールがいる丘からよく見えた。
「撤退の準備ができたけん。いつでも命令できるよ。」
丘の上で鎮圧軍の体たらくを険しい表情で見ていたテュールの元へ、ハルがやってきて言った。
「よし。じゃあ早速撤退だ。」
テュールは即座に判断を下す。軍が敗れた今、テュールたちもできるだけ早く戦線から離脱しなければならない。
「武器は大して持っていないが食料と物資はたくさんある。真っ先に狙われるのは俺たちだ。敵に見つかる前にさっさと逃げる。」
冒険者たちに撤退の準備をさせているミーアが心配そうに言ってくる。
「大量の食料と物資がございます。荷車を押して逃げるのならば確実に追いつかれてしまうでしょう。しかし、置いたまま逃げればそっくりそのまま敵の手に渡ってしまい厄介なことになってしまいます。テュール様だったらどうしますか?」
「簡単な話だ。そういう時はな、燃やすんだよ。もったいないとは思うが仕方がない。」
「なるほど!いやあわたくし、冒険者としてのもったいない精神が宿っておりまして、燃やすという発想には至りませんでした。確かに炭にしてしまえば敵の手に渡っても安心安全でありますね。でも、食料がないと出る力も出ませんからわたくしが可能な限り食べてあげましょう。」
ミーアはそう言いながら、鞄一杯に食料を詰めた後、名残惜しそうに残りの物資や食料に油をまき、火をつける。
「よし、全員撤退だ!」
火が付いたのを確認して、テュールは部隊に撤退の命令を下した。
鎮圧軍が連れてきているであろう物資補給部隊を探し回っていた反乱軍が丘の上からあがる煙に気づき、テュールたちがいた場所に到着したのは、テュールが撤退をしてから数十分後のことであった。
「全部炭になっています。」
「チッ」
部下からの報告を受けたランドルは舌打ちをしながら自分の目でも見て回る。食料も物資も例外なく全部燃やされていた。
「もったいねえな。燃やすくらいならば俺たちにくれてもいいのに。なあ?」
鎮圧軍から食料と物資を奪う気が満々であったランドルはぶつぶつと文句を言いながら燃えカスを蹴っ飛ばす。
「兄ちゃん」
そこへ追撃に行っていたライカ帰ってくる。ライカはルノーを討ち取った後、総崩れになっている鎮圧軍をさんざんに追いかけまわしていたのだ。
「おう。どうだった?」
「どうぞご覧ください。これが鹵獲品です。」
ライカはどや顔で後ろを指し示した。彼女の後ろには武器や食料が山のように積まれている。
ランドルは嬉しさと安堵の気持ちで笑った。
「こりゃありがたい。」
「捕まえた敵兵たちに持ち物を出したら解放するって言ったら争うように出してきたよ。」
ライカは誇らしげに奪った武器や食料を紹介していった。
「こっちは貯蓄部隊のようだが、全部燃やされていたからな。ライカが奪ってくれて助かった。」
こうしてランドルたち反乱軍は予想よりは奪えなかったものの、一定の成果を持って意気揚々と引き上げていった。




