討伐軍:テュールら(6) 反乱軍の援軍3
先頭に立っているライカを見て討伐軍の兵士たちが青ざめる。先輩の兵士や捕えた捕虜から繰り返し言われていた「金髪の少女」。ただの脅しだと思っていたが、まさか本当に、本当に存在していたとは。
「あ、、あの金髪は、、」
「戦場の稲妻!!!」
兵士たちは戦わずに逃げ出した。
その逃げる兵士の背中を馬で蹴飛ばしたライカは剣を天に向かって掲げ、5百人の先遣隊を鼓舞した。
「壊滅させるのは兄ちゃんに任せる。先遣隊は相手の陣形を崩し、突破口を開くことに集中して!」
「「はっ!」」
敵は既に戦う意思を無くしており、ちりじりになって逃げる。ライカは一般の兵士は馬で蹴飛ばしながら、位の高そうな兵士を狙って短剣を投げていた。
「ほらほら~早く逃げないと馬に蹴飛ばされちゃうぞ~」
鎮圧軍の兵士を楽しそうに追い立てるライカに部下が追いついてきた。
「それにしてもずいぶんとぬるい相手ですね。確かに我々は不意打ち的に襲撃しましたが、みんな背中を見せて逃げていきますよ。」
相応の犠牲があると覚悟していた反乱軍の兵士たちは少し拍子抜けをしていたが、ライカは初めからわかっていたように満足げに答える。
「鎮圧軍なんてしょせんは貴族たちの烏合の衆だからね~余裕余裕。」
こうして、反乱軍の援軍はあっさりと鎮圧軍の防衛線を突破した。
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一方そのころ、鎮圧軍のルノーは反乱軍が立てこもっている城を包囲して苛烈な攻撃を仕掛けていた。城門は東西南北の4つの方角に存在している。数の力を利用して、そのすべてに同時多発的に攻撃を仕掛けることによって相手の疲労を誘っていた。
自らは北門の攻撃の指揮をとっていたルノーの元に部下が慌ててやってくる。
「ルノー様、偵察に行っていた兵士がまだ帰ってきません。」
他の貴族のことを信用していないルノーは援軍対策を監視させるために自分の兵士を派遣していた。その兵士が帰ってきていないという。
あくまで味方を監視させるために派遣したのだ。戦闘に巻き込まれることなどないはず。
ルノーは楽観的だった。
「この雨だからな。視界が悪くて道に迷っているんだろう。もうしばらく待ってやれ。」
「しかしこの雨です。何か嫌な予感がします。」
心配そうに俯く部下が顔を上げる。何か声が聞こえたようだ。
ルノーにも声が聞こえる。南側から乱闘するような声だ。
まさか敵が城から出てきたか?
それはありがたい。
白兵戦になれば数でも経験でも勝っているこちらに有利なはず。
ルノーが少し浮足立っていると、南門を担当していた部隊から伝令係が真っ青な顔をして飛んできた。
「大変です!敵の援軍が来ました!」
そんなまさか、、、
「どこに来たんだ!?」
分かりきっているはずなのに聞いてしまう。
「ここです!!」
伝令係が叫んだ。
南門での兵士の叫び声や剣を合わせる音が大きくなってくる。
敵の援軍が来た。
援軍の襲来自体は想定外というわけではない。
しかしあまりにも、あまりにも早すぎる。
「そんな馬鹿な。くそっ援軍を止めるはずの奴らは何をやっていたんだ!」
ルノーは見方を動揺させないように小声で悪態をつくと、すぐに現状を整理して部下に指示を出す。
「はやく他の司令官たちに援軍を要請しろ!」
「あまり他の貴族家の人間に借りを作るようなことは、、、」
「馬鹿者ッ!!まだそんなことを言っているのか!反乱軍に負けたらミシガン子爵家の面目がぶっ潰れるんだぞ!他の貴族に頭を下げる方がまだましだ。早く行ってこい!!」
こんな状況に陥っても貴族としての対面を気にしている部下を怒鳴りつけて援軍を要請する使者を行かせた後、ルノーは全軍に命令を出す。
「一旦城の包囲を解け。援軍を食い止めて断じて城に入れてはならん!」
そして北門から南門へと向かう。途中で東門を攻撃している部隊にも命令を伝えて合流させた後、現場へ向かった。
南門は大混乱だった。
分厚い討伐軍の陣形に馬が突入している。馬に弾き飛ばされた鎮圧軍の兵士や、馬から放り出された反乱軍の兵士が宙を舞っていた。
反乱軍の援軍は騎馬隊だった。
援軍が予想より少なかったことでルノーの頭の中に迷いが出てしまった。
敵の援軍が5百程度だとこちらの兵力で十分に抑え込めるのではないか。他の貴族に援軍を要請するのは尚早だったか?
しかし不幸なことに彼の迷いはあっさりと覆された。
金髪の少女ライカが縦横無尽に戦場を駆け巡っている。
まるで踊っているようだった。そして彼女が通った後には血が噴水のように湧き出ている。群がる兵士を片っ端から斬り捨て、まるでそこに障害がないかのように悠々と馬を走らせていた。
「あれが噂の、、」
まるで見惚れているかのようにライカを見ていたルノーはふっと視線に気づいた彼女と目が合う。
ライカはルノーと目を合わせたまま懐に手をやる。
そして何かを取り出した。
次の瞬間、短刀がルノーの頬をかすめる。
頬から血が噴き出るのを感じ、少し遅れて焼けるような痛みが走る。
ルノーは自分が何をされたのか少し遅れて理解した。
「あの距離から投剣をしたのか、、、」
お互いの表情がやっと見える距離。しかも視界が良くない悪天候。
にもかかわらず、ライカは反応できないほど早くて正確な投剣をしてきた。
あと少しズレていたら確実に額に突き刺さっていた。
「た、たかが少数だ!数の力で何とかして止めろ!!」
我に返ったルノーは部下たちに怒鳴る。大声をあげないと声が震えてしまいそうだった。無意識のうちにライカから距離をとる。先ほどの衝撃にようやく恐怖が追いついて呼吸がうまくできなかった。




