討伐軍:テュールら(5) 反乱軍の援軍2
反乱軍のリーダーであるランドルは6千の援軍を率いて包囲されている城の救援に向かっていた。攻撃される城の予想はついていたものの、万が一のことを備えて全軍を集結させることができなかったのだ。
偵察に行っていた反乱軍が報告に帰ってくる。
「やっぱりあの城が狙われたか。正攻法だったな。」
「敵兵はおよそ3万、城を守っているのは約8千人です。」
「かなり頑丈な城だから、最低限の人数しか割いていない。今は戦線が膠着しているそうだが、城の農民たちの疲れも溜まってきていることだろう。できるだけ早く救援に行くぞ!」
とはいっても、ほとんどが徒歩の兵士である反乱軍はそんなに早く動くことができない。それにずっと走らせても、たいして訓練を受けていない反乱軍では体力が持たず、到着したときにはへとへとになってしまい戦いにならないだろう。
そこでランドルは先遣隊を派遣することにした。
機動力に優れる者たちを先に派遣することで、一刻も早く戦場にたどり着くことができ、先遣隊が戦っている間にランドルが主力を率いて到着することができるのだ。
「ライカ!」
ランドルは早速妹のライカを呼んだ。
次々と貴族家を破り、この間はロンドン男爵家を敗走させたライカは、鎮圧軍の間では”戦場の稲妻”と呼ばれているらしい。たいした二つ名でうらやましいものだ。
やって来たライカに早速先遣隊の話をする。
「この6千の中から好きな奴らを選べ。できるだけ早く鎮圧軍を叩くんだ。」
「あ~い。」
ライカはのんびりと返事をすると、しばらく考えた後言った。
「じゃあ馬に乗っている兵士を全員呼んで。」
農民が主体の反乱軍において騎兵はあまりいない。元冒険者が主体で5百人程度だ。
「それくらいでいいのか?」
先遣隊と言っても直接鎮圧軍とやり合うわけであるから、結構な人数が必要であると思っていたランドルは意外そうに言った。確かに騎兵だけだと機動力が段違いであるが、あまりにも少なすぎるのではないか。
しかし、ライカは兄の心配を知ってか知らずか気にせずに言った。
「いいっていいって。こうでもしないと早く着くことはできないし。兄ちゃんは残りの歩兵を連れてなるべく早くお願いね~」
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一方の鎮圧軍。
鎮圧軍では動かない戦線に早くも士気が下がり、今では毎日交代で事務的に攻撃することになっていた。
今日も、貴族家から派遣された司令官たちが集まっている豪華なテントでは、戦場とは思えないような優雅な朝食を食べながら会議が行われていた。
「今日の担当は、、ミシガン子爵家のルノー様か。ではルノー様。お願いいたします。」
「うん。それより噂を聞いたか?」
「噂ですか?」
「我が軍の兵士たちがよく言っておるのだ。反乱軍の援軍がこちらに向かっていると。誰が言いだしたかはわからないが、兵士たちがみんな怯えている。」
心配そうに言うルノーに対して、別の司令官がおかしそうに笑う。
「はっはっは。きっと臆病な兵士が作り話でもしたのでしょう。所詮、相手は農民たちの反乱軍。援軍が来ようと壁に石を投げるが如し。対して影響はありません。」
「それならよいのだが、、、念のため援軍対策のためにもう一軍を展開しておいてくれ。」
一応、ミシガン子爵家から派遣されたルノーが一番偉いことになっている。農民たちを舐めている他の司令官たちは面倒くさがったが、ルノーの一声で一応援軍対策をすることが決まった。
もちろん援軍対策をどの軍がするかで貴族家同士の押し付け合いが始まり、貧乏くじを引かされた司令官は文句を言いながら出発する。
「やれやれ、ルノー様は心配性な人だな。わざわざ軍を展開する必要なんかないというのに。そもそも、こんなに天気が悪い中で外に出たくはないね。おい!」
あいにく天気は雨であった。地面はぬかるみ、視界が悪い。
貧乏くじを引かされた司令官はずっと愚痴をこぼしながら移動していたものの、濡れていく体に苛立ったのか部下呼ぶ。
「俺は陣営に帰っておくから、適当に見張りをやっていろ。」
「かしこまりました。」
こうして、さっさと司令官は一人でテントに戻ってしまった。
その結果、ただでされやる気がなかった軍隊であったが、指揮官がいなくなったことにより、秩序はめちゃくちゃになってしまった。
どこから持ってきたのか酒を飲む。
鎧が水を吸って重いからと言って全裸になる。
中には勝手に隊列を離れて雨宿りし始める兵士まで出る始末だった。
こうしてダラダラと移動中だった軍隊であるが、突然誰かがかすかな音に気付いた。
「おい、なんか音がしないか?」
「雨の音だろう。」
「いや、何かがこっちに向かってくる。それも大勢だ。」
「ん?」
始めはかすかな音であったが、次第にみんな聞こえるくらい音が大きくなり、地鳴りも聞こえるようになった。
「ま、まさか、、、」
先頭を行っていた兵士たちは恐る恐る一本道の向こうを見た。
雨で視界が悪い中に影が見える。
一人の騎兵。すぐに影は3つに増えた。かとおもうと5つに、7つに9つに増えて行く。
同時に兵士の鬨の声や馬のいななきも聞こえてきた。
「て、敵襲ーーー!」
兵士の一人が仲間に知らせようと必死に叫んだが、恐怖で声がかすれてしまった。




