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商人貴族~僻地で始める国家改革~  作者: ふぃん
第5章 軍務官テュールと反乱軍ランドル
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討伐軍:テュールら(4) 反乱軍の援軍

鎮圧軍による城攻めは予想通りに膠着状態に入った。貴族たちが毎日交代で苛烈に攻撃を仕掛けるが、頑丈な城はびくともしない。通常、城攻めは攻撃側が防御側の3倍の人数が必要であると習ったことがあるが、これほど頑丈な城では3倍では無理だ。5倍は必要であろう。


早くも厭戦気分が漂っている鎮圧軍の貴族の陣営を見ながらテュールがのんびりと丘の上でコーヒーを飲んでいると、物資を届けに行っていたミーアがあくびをしながら帰ってくるのが見えた。


ミーアは丘の上にテュールの姿を認めると、慌てて姿勢を正し、後ろからだらだらとついて来ている冒険者たちに発破をかけながら小走りで戻ってくる。


ミーアは陣営で冒険者たちを解散させると、テュールのところへと駆け寄ってきた。


「冒険者大隊ミーア、鎮圧軍への兵器及び食料の補給を完了させました!」

「よし、ご苦労。退屈そうだな。ミーア」


ミーアは自分の怠慢が見られていたことに反省しながら頷いた。相変わらず声は人一倍に元気そうではあるが、やはり全体から退屈な雰囲気が出てしまっている。


「はあ。わたくし、せっかく戦いに参加することができると喜ぼ勇んでまいりましたと言うのに、仕事は3日に1度最前線に物資を届けるだけ。これでは冒険者ではなくそこいら辺の配達人でもできるではありませんか。」

「まあ、退屈に思う気持ちも仕方がない。だが、おそらくもうそろそろ敵に援軍が来るはずだぞ。」

「援軍ですか?」


テュールの言葉にミーアは曖昧に返事をした。テュールの言っていることがよく理解できないようだ。


現在、城攻めは戦線膠着状態にあるが、相手の支配領域にずっととどまっているのは非常に危険である。相手から援軍が来れば、援軍と城の軍に挟み撃ちになってしまうからだ。戦いの素人である相手方もそれは分かっているはずで、必ず援軍を送ってくる。


「そうなると城を攻めながら、援軍を迎え撃つという難しい戦いを強いられることになる。それに合わせて、物資の供給も難しくなるし、なにより補給部隊が襲われる可能性が格段に高まってしまう。」


「テュール様、コーヒーのお代わりはいかがっすか?」


不意に背後で声がしてテュールが振り向くと、いつの間に帰ってきたのかウルトが水筒を持って立っていた。気配を消して移動するのは諜報士として感心なことだが、戦場でそれをやられるのは心臓に悪いのでやめて欲しいものだ。


「いや、結構だ。何か分かったか?」

「南方に敵の軍勢約1万人を確認しました。あと2日ほどで前線に到着しそうっす。」


ウルトの言葉に真っ先に反応したのはミーアだった。


「おおっ。言っていたそばから早速援軍が来ましたか!さすがはテュール様。貴方の千里眼にわたくし感服いたしました。まさに、、」


ミーアが言論でテュールをわっしょいわっしょい持ち上げる。テュールはミーアの話がいつも通りにまた長くなりそうなので慌てて遮った。


「これで少しは戦線が動きそうだ。ミーア。冒険者たちも意外と何も起こらない任務にそろそろ舐めてきたことだろう。敵の援軍が来ることを全員に伝えてもう一度気を引き締めてくれ。」

「かしこまりました!冒険者の中で日頃から命の危険がある任務に就いている者は少数です。多くの者はただの肉体労働者。今回の任務のようにいつ敵に襲われるかわからないような恐怖にはなかなか慣れず、身体的以上に精神的な疲労が蓄積しております。わたくし、敵の援軍は逆に嬉しい思いで一杯であります。なぜなら、今までは見えない敵に対する見えない不安であったものが、今からは見える敵に対する現実的な不安に変わるのですから。では失礼いたします!」


ミーアは一方的にべらべらと言いたいことをたっぷりと言ったかと思えば満足してそのまま駆け足で戻って行った。


残ったウルトがテュールに尋ねる。


「いま城攻めを行っているミシガン子爵家らの貴族たちには伝えたほうがよろしいですか?」


テュールはしばらく考えた。


もし、鎮圧軍が援軍の存在に気づかないほどに素人の集まりであったならば、援軍と城の軍に挟み撃ちにあって壊滅してしまうだろう。かといって、首脳部の貴族たちとはあまり関わりを持ちたくないし、テュールがなぜ援軍に気づいたのか疑われてしまう。責任転嫁が上手な貴族家の人間たちのことだ、下手をすれば反乱軍と繋がっていたという濡れ衣を着せられるかもしれない。


「そうだな。一般の兵士たちにあくまで噂としてばらまいてくれ。」


テュールは基本的に貴族家の人間を信用しない。

散々迷った挙句、自分に影響が及ばない程度に伝えてあげることにしたのだった。



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