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商人貴族~僻地で始める国家改革~  作者: ふぃん
第4章 ハバロフ招集
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マリーと祭り(1)

トラブルに巻き込まれてしまい、少し後味が悪い前夜祭になってしまったが、翌日からいよいよ会議が始まった。


会議といっても儀礼的なものばかりで、功績があった貴族の表彰や、新しく貴族になる者たちの集団叙任式などが淡々と進んでいく。


その中で一つどよめきが起こる発表があった。

国王の次女マリーの婚約が発表されたのだ。


相手はここ最近急成長しているライハ侯爵家。マリーの顔は見たことがないが、とても可憐な方だという。ライハ侯爵家は地位も名誉もある美女を迎えてとんだ幸運であろう。


また、これは同時に後継者候補からマリーが脱落したことを意味していた。残るのは長男のレオ、長女のカサブランカ、次男のルイスである。きっと後継者には貴族からの支持が厚いルイスがなるだろう。そうなると貴族の中で孤立しているウォーデン家にとっては少し厳しい状況になってしまう。


このようなサプライズがあったものの、会議は他に大きな盛り上がりを見せずに淡々と1日目が終わった。


ハバロフ招集の会議はあくまで歴史的で儀礼的なもの。メインイベントは晩餐会である。

貴族たちはいったん邸宅に戻ると煌びやかな服装に着替えてやってくる。娘や息子を連れてくる貴族も多い。貴族たちのお見合いの場にもなっているのだ。


ウォーデン家は肩身狭く居なければならないのでアークだけの参加になっていた。おそらくどこかにユナが潜んでいるだろうが、、


「みんな、改めてよく来てくれた。おかげさまで1日目は無事に終わることができた。これから数日間もよろしく頼む。」


乾杯の音頭を取っている国王の後ろには国王の子供たちが控えている。光が強くて見えないが3人しかいないようだ。4人のうちの誰かが会場に来ていないらしい。


「とりあえず今は大いに楽しみ、親睦を深めてくれ。乾杯!」


晩餐会が始まると同時に貴族たちがわっと談笑に入る。アークはもちろん一人ぼっちだ。あんまり一人だと寂しいので話し相手を探す。


やはり国王の子供たちの中ではルイスが人気だ。貴族がたくさん群がっている。貴族と言っても選帝侯や侯爵など有力な貴族ばかりだ。次期国王になることは明白で、今から取り入っておこうという思惑が分かる。


そんな貴族たちを遠くから軽蔑するように見ているのが長女でルイスの姉のカサブランカだ。一応、後継者争いにおいてルイスの次に有力とされているが、周りには侍女以外誰もいないようだ。

せっかくなのでカサブランカに挨拶に行くとする。一応次期後継の有力な候補であるので、顔を覚えてもらうことにしよう。


「カサブランカ姫でありますか?」

「同情は必要ないわよ。それとも晩餐会で一人浮いている私を笑いに来たのかしら?」


挨拶しただけなのにすごい言われようだ。確かに気の毒なほど浮いていたが、、、

初手から敵対心いっぱいの対応を受ける。


「いえ、私も孤立しているので仲間を見つけたと思い、、」

「はあ?」

「男爵のアーク=ウォーデンと申します。」


ユーモアでからかったつもりが予想以上に怒気を含んだ返答をされて、慌てて自己紹介に切り替える。


「ウォーデン、、、ああなるほど。貴方が『商人貴族』ね。噂はかねがね。」

「光栄です。」

「商人貴族」という言葉は、他の貴族からの侮蔑の意味を含んでいるのだが、それを知っているのか

知らないのか。


「どおりで貴族らしくないと思ったわ。」


そう言ったカサブランカはアークの複雑な顔を見て、すぐに訂正する。


「勘違いしないで。一応褒めているのよ貴方のこと。」

「『貴族らしくない』ということがですか?」

「ええ。私は貴族が大っ嫌いなんだから。」


少し大きな声を出したカサブランカに近くにいた他の貴族が驚いたように振り向く。それでもカサブランカは止まらない。


「だいたい貴族って何?この国を治めるのは王一人でいいじゃない。どうして王でもない人々が偉そうにふんぞり返っているの?」


一応アークも貴族であるので、仲間のように愚痴をこぼすのはやめてほしい。しかし、なおも止まらない。


「確かに先祖は功績があったかもしれないわ。でもそれだけの理由でバカ息子にも特権階級の地位を認める理由にはならないじゃない。貴族が全員ダメだって言っているわけじゃないの。この国には貴族があまりにも多すぎるのよ!王家がただの飾りになっているじゃない!」


特権階級の世襲が気に入らないのだろうか。まったく同じことは王家に対しても言えると思うのだが、、、

アークは頭ではそんなことを考えながらも表面上は神妙な顔でカサブランカの文句を聞いている。さすがに皇族を論破するほどの度胸は持っていない。


「だから、貴方たちウォーデン家のように実力で貴族の位をもぎ取った者には敬意を表するわ。」

「はあ。ありがとうございます。」

「ねえ、貴方。アークといったっけ?一緒に貴族を潰さない?」


アークのことを気に入ったのか、カサブランカは満面な笑顔で恐ろしい冗談を言ってきた。

ずっとしかめっ面だったけど笑うと結構な美人だ。


「だいたいねえ。あいつらは、、」

「カサブランカ様、公的な場ですよ。これ以上はいけません。」


調子が上がってきたカサブランカについに侍女が止めに入る。


「ちょっと!まだ話し足りないのよ。離しなさい!」

「いいえ。これ以上はダメです。」


侍女は気が強く、主人の命令にも歯向かってカサブランカを止めようとする。侍女ともみ合っている隙にアークは逃げ出した。

貴族たちはカサブランカを冷めた目で見ていた。ただでさえ浮いているのに、カサブランカと接近したことでさらに孤立してしまったではないか。


ベランダに逃げるように出ると、夜風に当たっている先客がいた。


「またお会いしましたね。」


声の主は暗くてよく見えない。

だが、声は聴いたことがある。それもつい最近。


暗さに目が慣れてだんだんと顔が見えてくる。


「あら、マリーお姉ちゃん。」


とっさに名が出なかったアークは前日の少年と同じ呼び方をした。


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