第3都市(6)
アークとミーアはその後も海岸線沿いに移動を続け、出発してから2週間たった後にようやく第3都市に帰還した。
工業都市に生まれ変わるということで、一時は町がひっくり返るほどの大騒ぎになっていた第3都市も、ようやく落ち着いた雰囲気を取り戻したようだった。ラゴンヌ達による説得が順調にいっているようだ。
「あらお帰り。もうユリアもユナも帰ってきてるわよ。」
冒険者ギルドの前でミーアと別れて、長い長いおしゃべりからようやく解放されたアークが役場に戻ってくるとイアンナがいた。出発前には山積みになっていた書類がきれいさっぱりなくなっていることから、こちらの仕事も順調に終わっているらしい。
「どこまで行ってきたの?」
「この町からひたすら東に。領地の境界の山脈にぶつかった後は北まで行った。」
「ふーん。何か面白いことはあった?」
「海に出会ってしまった。」
「は?海?」
「そう!あの海だよ!」
アークは自分で発した「海」という単語によってあの興奮と感動を思い出したらしく、唾が飛びそうなくらい勢いよくまくし立てた。
「商人からの話でしか聞いたことがなかった。大陸の果てまで行くと水が世界を覆っているっていう噂。あれは本当だったんだ!美しい水が大地を飲み込んでいたんだよ。」
「そうなの?それはすごいわね。」
イアンナはアークの予想とは異なり淡々としている。
「姉さん、あまり感動してくれないね。」
「私は修業時代に海を見たことあるわよ。商人に船に乗せてもらって海の上を移動したの。」
「なんだ。もう経験済みだったのか。」
あんなに興奮して海について語ろうとしていたのに、姉は既に海を見たことがあったなんて知らなかった。さっきまでの興奮状態から少し冷静になって恥ずかしくなる。
しかし、アークはあの美しい海を見た時から一つの施策を頭の中で練り続けていた。確かに海に恋をしたような状態ではあったもののそれだけではない。海をしたたかに利用する商人魂があった。
「これからは海だ。」
「えっ?」
「このミカンダ地方は海とともに発展していく。」
アークは地図を持ってきて広げた。タドント夫妻の作成する物には精度でとても及ばないが、ある程度の距離感や方向感は把握することができる。アークはその地図の上に第1第2第3の都市を書き込んでいく。
「第2都市は農業都市、第3都市は工業都市にする。じゃあそのできた大量の農作物や工業製品はどうやって売るか。ミカンダ地方は南と東を巨大な山脈に囲まれている。この山脈を通って売りに行くのは大変な労力を使ってしまうし、多くの量を運ぶことができない。」
「だから!」
アークは第2都市と第3都市からそれぞれ海に向かって線を引く。
「第2都市と第3都市からちょうど等距離にあるこの海岸。ここで港に適した場所を中心に新しい都市をつくる。ミカンダ第4都市は港湾都市だ!」




