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商人貴族~僻地で始める国家改革~  作者: ふぃん
第3章 領地改革
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第3都市(4)

第3都市を工業都市にすることが決定して1週間、アークの仕事は大詰めに差し掛かっていた。残る仕事は、領主として第2都市と連絡を取ること、ウォーデン家として協会と連絡を取ることである。


まずは第2都市だ。

「ユリア。」

「ここの町にいる冒険者を何名か護衛についてもらうから、第2都市に行って丸々と太った農作物を大量に買ってきてくれ。」

「わかりました。」


ラゴンヌや地区の代表たちは、その日から住民に対してこれからの生活が一変することを説明していた。アークは彼らの説明の助けになるためにアークが彼らにやった食べ比べを各地で行っている。そのためにも第2都市から大量の穀物を買ってくる必要があった。


もともとこの地域の寿命が短かったことは、この土に原因があることも一緒に説明することで、人々の不安を上手に煽り、農業から工業へと変革させることに対して住民の理解を得る活動は順調にいっている。


そしてユナを使って協会との連絡を図る。

「ユナ」

「教団に連絡を取ってウォーデン協会の本部につないでくれ。覚えているか?クライツ男爵領のハング=ウォーデン、俺の従弟だ。」

「、、、覚えてる。」

「よし。」

「鉄器の技術者が大量に必要だ。武器商人たちの情報網から腕のいい職人を見つけるなり、鉄器コンテストを開催するなり手段と金は気にしない。腕のいい技術者たちを大量に連れてきてくれ。」

「、、、分かった。教団と連絡を取るためには第1都市まで戻らないといけないから往復で1週間かかる。」

「逆に1週間でいけるのかよ、、よろしく頼む。」


ミネルヴァやテュールがいる第1都市にはユナの他にも教団の団員が何人か待機している。そこにいる団員からバトンタッチ方式でクライツ男爵領にいるハングと連絡を取る形になる。


これでアークの仕事はひとまず終了した。アークの仕事は部下に指示を出すこと。指示を出した後は部下が結果を持って帰ってくることを待つだけの仕事になる。町の正確な地図を製作しているタドント夫妻のように毎日毎日歩き回って夜になるとフラフラの状態で帰ってくる必要もない。



「さて、何をしようか。」


忙しそうな周囲とは対照的に、指示を出し終えたアークは退屈していた。一プレイヤーとして周囲の仕事を手伝うのもいいかもしれないけれど、やはり領主としてなにかいい時間の使い方はないだろうか。


そこまで考えた時、今回の視察のそもそもの目的を思い出し、アークは領主としてこのミカンダ地方をもっと知るべきだと思った。


早速役場で仕事をしているイアンナの所へ行く。


「姉さん。本当にこの地方には2つの町しかなかったの?」

「そうよ。この町の人にも第2都市の人にも聞いたから間違いないわ。」

「じゃあちょっと二人で探検に行こうよ。」

「この地方を?広さは前の領地の5倍以上あるのよ。探検してたら行方不明になってしまうわ。」


書類から顔を上げてイアンナは面倒くさそうに言った。イアンナの力だとその山積みになっている書類は一瞬で片づけることができるに違いないけれど、本人は探検にあまり興味がないらしい。


「でも領主として、都市だけではなくこの地方を全体的に見てみる必要があると思うんだ。」


なんとか姉を説得しようとアークが奮闘していると、バーンと扉が勢いよく開かれた。あまりの音の大きさにイアンナが小さく悲鳴を上げる。躍り込んできたのは大きな丸メガネをかけた少女だった。


「むむっ今探検という言葉が聞こえましたぞ!」

「わあっびっくりした。急に脅かさないでちょうだい。」

「君は、、誰かな?」


アークが尋ねると少女はメガネをくいっと持ち上げてハキハキと答える。


「はいっ。3級冒険者のミーアと申しまする。わたくし、第2都市へ向かうユリア様の護衛で冒険者が呼ばれましたので久しぶりにこの町を出られるとワクワクしておりましたが、抽選に外れみじめにもお供することができなかったのであります。」


ここまで一息で言い切ると、ミーアは思いっきり空気を吸って続ける。


「何かほかに仕事がないのかと役場前をうろついておりましたところ、少女が出てきたかと思うと馬に乗って風のように消えていったではありませんか!これはきっとまだ仕事があるのだと確信を致しましたわたくしは、こうやって参上したわけでありまする。」


予想以上に長く癖のある自己紹介である。しかし、あちこちを探索しているであろう冒険者ならばちょうどよい。アークはこの地方について少し聞いてみることにした。


「なるほど。えーっとミーア、この地方には3つしか町がないのは本当かい?」

「はい、本当であります!わたくし、暇さえあればこの地方のあちこちを見て回っているのです。だってそうでしょう!わたくしは『冒険者』なのですから。」


そしてミーアは再び続ける。


「しかし、他の冒険者はどうでしょう。毎日毎日毎日!薬草採取に獣狩り、半年に一度やってくる商人の護衛の仕事を取り合い、夜は酒場で大盛り上がり。これのどこが『冒険者』なのでありましょうか!ただの日雇い労働者なのであります。」


聞かれたことだけに答えてほしいのに、長々と自分語りを続ける人間をアークはあまり好きではない。延々と話し続けるミーアを見ながらアークは内心でため息をついた。しかし、購入もしないでずっと世間話をしてくるような客であっても、商人としてはきちんと対応しなければならない。アークもイアンナもそういった人間の対応については存外得意であった。


「あなたが冒険者という職業にとても誇りを持っていることはよく分かったわ。」

「ええ!おっしゃる通り!!わたくし、冒険をしたくて『冒険者』になった生粋の冒険者なのです。」


イアンナに褒められてうれしかったのだろう、ミーアは大喜びで胸を張った。そして窓のところまで行くとメガネを取ってレンズの汚れを拭きとる。領主の部屋なのになかなか肝の座ったことをするもんだとアークは苦笑いをした。

ミーアは再びメガネをかけながらアークに向き直る。


「話は戻りますが、領主様は探検をなさるとか?」

「ん?ああ、このミカンダ地方のことを良く知りたくてね。」


パーンとミーアが手を叩き、イアンナが再びビクッとなる。


「けっこうです!ではわたくしが案内人に名乗りを上げましょう。わたくしほどの適任者がこの地方にはたしているでしょうか?いいえ!おりませぬ。」


キラキラした目でアークに迫ってくる。メガネの奥は思った以上につぶらな瞳であったが、その目を見ているとどうしても断れなかった。それに性格は合わないかもしれないが、確かに彼女が適任なのかもしれない。


「じゃあ時間もあるしお願いしようかな。」

「すすすすばらしい!わたくし、早速家に帰って準備をしてまいります。」


ミーアは大喜びで万歳をしながら部屋を飛び出していった。


「じゃあ俺が探検に出るから、姉さんは領主代理として何か問題が起こったら対処しておいてよ。ユリアやユナが帰ってきてないし、ラゴンヌたちが住民を説得しているから。」


領主としての仕事が出てきたらイアンナに任せることにして、アークは早速準備をする。食料や寝袋なんかを用意していると建物の外が騒がしくなった。声だけでわかる。ミーアが大声でアークを呼んでいるのだ。


「領主様!では参りましょうぞ!!」


あまりに声が大きいので近所迷惑になってしまう。アークは慌てて外に出た。


「もう来たのか。早いな。それから俺の名前はアーク=ウォーデンだ。」

「アーク=ウォーデン。いいお名前です。ではアーク様!参りましょう!」


ミーアはご機嫌に言うと、馬にまたがり町の外に広がる広範な土地を指さして叫んだ。

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