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商人貴族~僻地で始める国家改革~  作者: ふぃん
第3章 領地改革
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帰還

移動も合わせて2週間程度でアークはミカンダ地方に帰ってきた。行きとは違いユリアとタドント夫妻が一緒だ。ユナは教団の体制が立ち直り次第やってくることになっていた。


ミカンダに帰ってくるとミネルヴァが待っていた。屋敷には壁紙が貼られ、絨毯が敷かれている。アークが出発する前は文字通り廃墟の館で埃を被っていたが、今ではかなり整えられていた。都のウォーデン邸から派遣されたメイドや執事が既に到着していたみたいで忙しく動き回っている。


出発する前は寂しい館だったのが、人のぬくもりが入ったことで、しっかりとした「家」になっているようだった。


「おかえりなさいお兄様。ご無事で何よりでした。」

「ああ、ただいまミネルヴァ」

「調査に出かけているイアンナお姉様もテュールお兄様も数日後には戻ってくると思います。それまでお休みください。」

「ありがとう。」


アークはふかふかのソファーに座った。長旅で疲れているユリアにも隣に座るように促した。タドント夫妻は年のせいでもあるがかなり疲労がたまっているようだったので、彼らの部屋を用意して休ませている。

ミネルヴァはメイドが持ってきたアークとユリアの二人の飲み物を受け取り机に置く。ゴトリと少し大きな音がした。


「立派な護衛の方も雇ったようで」

「ん?ああ。女剣闘士だったユリアだ。ユリア、こっちは妹のミネルヴァ」

「ユリアです。よろしくお願いします。」


ミネルヴァは頭を下げるユリアから視線を外し、少し怒ったようにアークを睨みつける。


「可愛いからですか?」

「は?」

「可愛いからこの女性を選んだんですの?」

「どういうことだ?」


なぜ妹が怒り出したのか見当もつかないアークが少し戸惑っていると、ミネルヴァはアークに出した飲み物を引き寄せてぐびぐびと飲み干した。


「確かに常に一緒に居る護衛なら、むさくるしい男なんかよりかわいい女性の方がいいですよね。」

「ミネルヴァ、、怒ってる?」


ミネルヴァは満面の笑みになった。すごくいい笑顔だ。だがこんな顔になる時、ミネルヴァはたいてい怒っている。


「いいえ。姉妹たちが必死にこの領地を改革しようとしているのに、一人だけ都に遊びに行って女を買うお兄様には感服すらしています。」


ミネルヴァは何事にも優れており、穏やかな性格に才能も豊かであるが、アークのことになると思い込みが激しくなることがある。


「ミネルヴァ、、そんなんじゃないよ。俺はユリアの才能を買ったんだ。」


少し呆れながらアークが言うと、ミネルヴァはユリアを見て微笑んだ。


「ではユリアさん、、でしたっけ。私と手合わせをお願いしたいです。」

「私は構いませんが。」


ユリアは疲れているんだからとアークが釘を刺そうとしたが、ユリアは意外にも即答した。


本人がやる気ならば仕方がない。

アークはミネルヴァに頷いた。


ミネルヴァは鼻歌を歌いながら木剣を取りに行く。顔はニコニコしているが、ただならぬオーラを感じてすれ違う女中が怯えたように目をそらした。


そして、庭に出てお互い木剣を構える。ミネルヴァの顔から笑顔が消えた。ユリアはミネルヴァを傷つけないように手加減することを考えていたが、ミネルヴァの真顔を見るとそんな考えは吹き飛んでしまった。


これ、下手したら私の方が負けるんじゃない?


「では行きますね。」

「はい」


ユリアが頷くと同時にミネルヴァが飛びかかってきた。予想以上に速い剣を何とかかわし、カウンターを取ろうとしたがすでにそこには彼女はいない。


「私はここですよ。ユリアさん」


背中から声がした瞬間、ユリアは振り返らずに前に飛び込んだ。その頭上をシュッと剣が通っていく。それからしばらく、ユリアはミネルヴァの攻撃を何とか躱しながら反撃の機会をうかがう。


「その程度ですか?さっきから逃げてばっかり」

「ここからです」


ユリアは少し笑いながら言う。


確かにミネルヴァはうまい。それに華麗だ。きっと毎日剣の鍛錬をしているのだろう。

だがそれだけだ。彼女の剣はうまいだけ。彼女の剣は軽いのだ。


人を切ったことがない。


「らあああああああああ」


ユリアは本気になって反撃に出る。

豹変したユリアにミネルヴァは一瞬ビクッと体を硬直させる。その隙を見逃さなかった。

ユリアはミネルヴァの頭にめがけて剣を払う。それを受けようと剣を立てたミネルヴァにそのままタックルした。

ミネルヴァは剣を離して吹っ飛び、地面に体を打ち付ける。


「ま、、参りました。」

「ミネルヴァ、大丈夫か?」


アークが近づいて倒れた体を起こす。


「はい。」


起き上がったミネルヴァはさっきまでの威勢が嘘のように落ち込んでいた。そしてアークの腕を掴み、か弱い声で謝る。


「お兄様。私の思い込みで責めてしまってごめんなさい。」

「お前はときどき勘違いで暴走してしまうことがあるからな。気を付けろよ」


自分が悪いと思ったらすぐに謝ることができるのがミネルヴァの長所である。アークは軽く説教するだけに留めた。


「それとユリアさん。貴方の実力を疑ってしまってすみませんでした。」

「いえ!いえいえ、そんなことは全然、、」


まさか貴族に頭を下げられることは予想していなかったので、ユリアは慌てて手を振った。


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