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商人貴族~僻地で始める国家改革~  作者: ふぃん
第2章 人材官アーク
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クライツ男爵領(2)

そして、山脈走破競争当日。大会委員長として元気に挨拶しているハングの後ろに座りながら、アークは優秀そうな参加者をピックアップしていた。


「では、これより山脈走破競争ウォーデン杯の開催を宣言します。」


パチパチパチパチ


予想をはるかに超える大勢の参加者が準備をしていた。百名はゆうに超えているだろう。体力自慢達がこんなに集まったならば、優秀な者もたくさん集まるだろう。


山脈走破競争とはクライツ男爵領にある連山を一日でぐるっと回って帰ってくる速さを競う大会である。連山は普通に歩くと3日はかかってしまう長さと高さを持っているが、速い人だと昼過ぎには帰ってくるという。


「位置について、よーい」


ハングが耳を塞ぎながら爆竹を構える。

バンという音で参加者たちはいっせいに走り出していった。このまま一位の人でも帰ってくるのは昼過ぎになってしまうので、退屈を凌ぐために組織委員会の人々は朝から宴会を始める。


主賓としてクライツ男爵が招かれていた。どうやら毎年この大会に招待されているらしい。

ここまで来て無視するのはさすがに失礼であるので、アークはクライツ男爵に挨拶に向かった。男爵は意外にもアークを歓迎してくれ、父の葬儀に出られなかったことを詫び、アークとの再会を喜んでくれた。ウォーデン家がミカンダ地方に移ったことを報告すると、いつか訪問したいとニコニコしながら言った。親子ほど年が離れているアークに対しても低姿勢で、さすがは領民にもウォーデン協会の商人たちにも尊敬されている名君である。


「名前だけしか知らなかったけどかなり参加者が多いな」


男爵への挨拶から帰ってきたアークが大会委員長席に座っているハングと乾杯しながら感想を言う。山を登る速さを競うような地味な大会なのに百人以上の参加者がいるのだ。


「これでも3年前から抽選制にして削っているんだぜ?ウォーデン領だけでなく全国各地から参加してくるからな。」

「私も都でこの大会の話を聞いたことがあります。まあ、剣闘士奴隷の私は参加できなかったんですけど。」


ユリアが二人に酒を注ぎながら言う。二人に注ぐついでにちゃっかり自分にも酒を注いでいる。まあ、ここでは護衛の任務は必要ないのだが。

ハングは手をOKの形にして笑いながら言った。


「やっぱり金だよ金。この大会の優勝賞金はなんと金貨20枚!数年間は遊んで暮らすことができるし、この大会の優勝者ということで有名にもなれる。参加費の銅貨10枚だけで一発逆転のチャンスがあるんだからみんな参加したいんだよ。」

「どんな人が優勝するんだ?」

「やっぱり山を歩きなれている冒険者が多いな。あとは軍人もたまに優勝するね。だから能力が高くて優秀な人材が見つかると思うよ。」

「それは楽しみだ」


冒険者や軍人で優秀な人材を集めるため、今回の大会の結果に注目しよう。



時間が進み宴会も盛り上がっていたところであったが、係の一人が報告を受けた。


「そろそろ一位が帰ってくるそうです!」


その一言でみんな慌てて酒や肉を片付け、水を飲んだり顔を洗ったりしてゴール付近に戻った。

たくさんの見物人が待っている中、ついに向こうからこちらに走ってくる影が見えた。


「来たぞ来たぞ!!」


観客たちが興奮して騒ぐ。

しかし、影は一つではなかった。後ろから一位の人に食らいつくように何人も走って来た。


「どんどんくる」


観客やハング達は大興奮だった。熾烈な争いの結果順位が確定した。


陽が落ちるころ、ほとんどの参加者が戻ってきたのを確認して表彰式が始まる。


「1位はザイール地方の2級冒険者、ホプキンズだ!」

「これで、、1級冒険者になれる、、」


表彰式までかなりの時間があったのに、よほど疲れがたまっているのか息が絶え絶えだ。

ユリアが後ろで「あの若さで1級になるなんてすごい、、」と呟いていたが、アークはあまり冒険者の事情には詳しくないのでよくわからない。


「2位は都の近衛隊所属、ルドヴィカ!」

「3位はクライツ男爵領の3級冒険者、タイマーだ!」


ノリノリでインタビューをしているハングをよそに、アークは一人の人物に目を付けた。それは1位でも2位でも3位でもない。


「ユリア、すごい人材を見つけたかもしれない。」

「はい」


ユリアを引き寄せて一人の人物に指を差す。


「あそこの木の下で弁当を食べているおっさんを連れてきてくれ。」

「、、はい?」


ユリアは思わず二度見した。

一日体力自慢達の大会に付き合って有望な人材を見つけたと思った。しかし、アークが指を差したのは、木陰の下でぐったりしながら休んでいる全然冴えないおじさんだったのだ。


「あのおっさんだよ、わかるか?」

「あ、あのおじさんですね。わかりました、、」


やはりアークはあの人に目を付けている。

しかし、あの人物のどこがいいのだろうか。

ユリアは首をかしげながら駆け出していった。

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